表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/19

第15話 ワシスカウトされる

昼下がり。

ワシは屋敷の庭のベンチにどっかり腰を下ろし、

心地よい陽射しにまぶたを落としておった。


「ふあぁ……ええ天気じゃ……」

鼻ちょうちんでも出そうな勢いで欠伸をかます。


(まさか追放されたおっさんが、

こんな立派な貴族屋敷の庭先で昼寝することになろうとはのぅ……。

これも人生、何が起こるかわからんもんじゃ)


――カツン、カツン。

石畳を踏む靴音が近づいてくる。


「失礼いたします!」

凛とした声にぱちりと目を開ければ、

門の前には制服姿の青年が立っていた。

胸には王国の紋章、立ち姿はやけにキリッとしている。

どう見ても、役人か学園の人間じゃ。


すかさずセベスがスッと現れ、妙に優雅な所作で応対した。

「チョリーっす! オレシー、執事のセベスっす! ご用件は? 」


「私は王立魔法学園の使者、サイラスと申します!」

青年は胸を張り、声を張り上げる。

「こちらに滞在されている“聖女様”……

いえ、“古代魔法師”様に、ぜひお伝えしたきことがあり参りました!」


ワシ、心臓がドクンと跳ねる。

(せ、聖女様!? 

いやいや待て、誰がそんなことを言いふらしたんじゃ!? 

リリアぁぁぁ!! 絶対おぬしじゃろぉぉぉ!!)


セベスがニヤリと口角を上げ、わざとらしくこちらに振り返った。

「師匠ー、いやいや、“アサリーヌ様”ー、出番っすよー」


「ぐぬぬ……!」

慌てて立ち上がったワシは、

喉をコホンと鳴らし、妙に重々しく口を開いた。


「コホン……ワシがその……

アサリーヌとやらじゃが? い、いかにも、何用かな?」

(あああ、なんで疑問形になっとるんじゃワシぃ! 

自信なさげすぎる聖女がどこにおるかぁ!)


しかしサイラスは、感動したように目を見開き、深々と頭を下げる。

「つい先日、市中で料理を美味に変えられたとリリア君から伺いました!

すでに学園や役人の間でも、その奇跡の力は大きな話題となっております!

聞けばアーヴル卿のところに滞在なさっているとか。

どうか学園にお越しいただき、学生たちに“古代魔法の真髄”をお示しいただきたく!」


「ええっ!? が、学園に!? ワシが!?」

思わず声が裏返り、庭に響き渡る。小鳥すら飛び立った。


後ろでセベスが、したり顔でうんうんとうなずいておる。

「師匠なら当然っすよ。

学生たちに夢と希望とおいしいランチを与える存在っすから」


「ランチまで含めるなや!!」

ワシは頭を抱え、ベンチにずるずると崩れ落ちる。


(いやいやいや! ワシはただの追放おっさん詩人じゃぞ!? 

なんで学園の講師に担ぎ上げられそうになっとるんじゃぁぁぁ!!)


――こうして、ワシの「学園講師(仮)」騒動が幕を開けることになるのであった。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ