七対三
私は中途半端なことが嫌いだ。五対五。これが私の中の黄金比率。カフェオレの割合も五対五。髪の分け目も五対五。夫婦のお金も五対五?
「あれ?今日髪型違う?」
「うーん、まあねー。」まあね、ではないこれは緊急事態である。何度髪の毛をセットしても七三分け、七対三にしかならないのである。
昼休み。気分を変えにいつもの行きつけの喫茶店でカフェオレを頼む。に、苦い。明らかにコーヒーの割合が多い気がする。もしやこれも七対三か?
がっかりしながらオフィスに戻る。
今日はインターンで学生が企業に見学にくる。同僚は三人に付き、私は七人。七人?五対五でよくないかそこは?
一人漢字が読めない方がいる。しちふと、ななた、「すみません、お名前は?」「ななたいです!」「七太さんですね。」ななたいさん、七対三だ!
ナナタイサン、ナナタイサン、ナナタイサン。何なんだこの数字は!
家に帰ってテレビを付けるとサッカー日本代表戦がやっていた。ゴール!七対三で日本が勝っている。気味が悪くてテレビを消した。
明日にはこの髪型は治っているのだろうか。五対五。それは夫が褒めてくれた髪型だった。
それはもう十数年も前になる。五対五の合コンで私たちは出会った。合コンの席であれ、私は自分を崩さない。分け目はしっかり五対五だった。周りの人間たちはそれを、面接に来たのかなどと笑ったが、夫だけは違った。「きっちりしてていいね」そこから私たちは言いたいことを言い合える、対等な仲へとなっていき、気が付けば結婚までしていた。しかし、いつの間にか言いたいことも言えなくなってしまっている。
「ただいま。」夫が帰ってきた。私の髪型には気付かない。特に会話もなく、すぐにテレビを付けた。ニュースが流れる。夫婦別姓が議会で七対三で可決されたらしい。そうか。これだ。きっとこれなんだ。
「ねえ、私たちも夫婦別姓にしない?」
「なんでわざわざ。」
「私たちどっちの苗字にするかって喧嘩したよね。」
「そうだったっけ?」
「私、戻りたいんだあの頃に。二人で何でも言い合えるさ。」
「…。」
結局、私たちは夫婦別姓を名乗ることになった。あれ以降、髪が戻らないことはなくなった。
昨日は夫が言いたいことをぶつけてきた。朝からあまりいい気分ではない。気分転換に髪型でも変えてみるか。
たまには七対三もいいかな。