第3話 おしゃぶり代わりのスプーン
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### 第3話 おしゃぶり代わりのスプーン
明るい日差しが差し込む午前、穏やかな家庭の日常が続いていた。紅蓮誠は、柔らかな布団の中で朝の光に包まれていた。まだ小さな体ながら、彼の周囲にはいつも家族の温もりがある。そして、この日も特別な発見の予感に心が踊っていた。
「よし、今日は特製スプーンを作る!」誠の心の中で湧き上がる意欲は、料理だけでなく、道具にも向いていた。彼は新たな道具を手に入れることで、料理がさらに楽しくなることを知っていた。
母親の愛情に支えられながら、誠は様々な食材で遊ぶ日々を送る。その中でも特に、母が用意してくれる離乳食は彼のお気に入りだった。しかし、最近どうしても噛み癖が出てしまい、木製のおしゃぶりを破壊してしまった。
「困ったなあ」と思いつつ、彼はそのまま寂しい気持ちを抱えることにした。途端、誠の目の前に木の鍋とスプーンが置かれているのに気がついた。
「これなら、スプーン代わりに噛んでもいいかも!」彼は無邪気に笑って、新たなスプーンを口に運んだ。しかし、口に合ったすぐ、彼の小さな手ではそのスプーンを壊すことなく味わうのは困難だった。彼は夢中になって引きちぎろうとした結果、結局スプーンは破損してしまった。一口サイズの木製の欠片となったスプーンを見やって、誠は少しばかり悔しそうな顔をした。
ただ、何か新しいものを作りたいという気持ちは消えなかった。その瞬間、誠の心にひらめきが降り注いだ。「スプーンを自作してみよう!」
自室のインベントリーから、いくつかの素材を引き出す。目の前には、銀色の金属が広がっていた。それこそ、彼が特別な力を使って生み出せる道具だ。やはり、自分の手で作ることにこだわりたかった。
「まずは、この銀に魔力を彫刻しよう!」誠は心の中で呪文をとつぜん唱え、銀の塊に手をかざす。すると彼の目の前で、銀の表面が静かに光り始めた。柔らかくも温かい光が、彼の手の動きに合わせて流れていく。まるで、魔力が銀色のスプーンに宿るように。
「少しずつ簡単な彫刻を加えれば…」誠はその瞬間、彫刻に込める思いを伝えようとした。小さなおしゃぶりとしても使えるスプーンにするために、可愛らしいデザインが浮かんできた。彼は微笑を浮かべながら、手を動かしていった。
段々と銀スプーンが完成に近づくにつれ、光がその表面で遊び、さらなる魔力が宿っていく。その様子を兄たちが通りかかり、驚いた表情を浮かべた。
「おい、誠!何をやってるんだ?」長兄の竜二が声をかけた。驚きと興味の混じった目で、誠を見つめる。次兄の士朗もまた、その場に先立ってスプーンに寄ってきた。
「これは…すごい。まさか、誠が自分でスプーンを作っているのか?」士朗も感心し、銀スプーンの美しさに魅了される。
「いいだろう?ママのお手伝いのために作ったんだ!」誠はそのニコニコした顔で自信たっぷりに言った。
兄たちは驚き、少し戸惑いつつも心から誠の才能を認めずにはいられなかった。その光景に、家族が誠の成長に期待を抱くようになったのだ。
「面白い息子だな、誠は。」誠の父、俊久が突然笑い声をあげ、彼を褒めるように見つめていた。家族は、彼の特別な魔法の世界にいることが嬉しくなった。誠は、自らの力で作り上げたスプーンを誇らしげに見せつつ、ふんわりした幸福感に包まれていた。
父の楽しそうな笑顔、兄の驚き、そして自分の手によって楽しさを与えることができた後、誠はより一層料理や道具作りへの執着が強まった。
「次は、もっと大きなものを作るぞ!」誠の心は高まり、新たな冒険への期待に胸が膨らんでいた。これから先、料理の手助けをするだけでなく、家族の中での存在意義を見つけつつあった彼。
どんな未来が待っているのか、彼の視線は何かの可能性に向けられ、眩しい光の中でも笑みを浮かべていた。