四つん這い卵むしゃり?
パキリと音が聞こえ、割れた壁の隙間から視界に光が広がる。無意識のうちに壁を押し破り、目の前に深い森が広がることを知る。
ふと振り返るとそこには白い球体があった。本能でそれが自分の出てきた卵であることを知り、そのまま口にし始める。
………なにこれ?なんかほぼ無意識で食べてたけど、なにこれ?
……卵、だよね?なんで?なんで私卵から出てきてそれ食べてる?
すべてが理解できない。自分がさっきまで何してたか覚えてないけど、少なくとも学校にいたか家でアニメ見てたかのどっちかだと思う。日本社会に生きてたと思う。
それが、爆誕からの卵むしゃりin Forest?
………Why?
何もかもがわからなさすぎてアメリカ人になってしまった。でもほんとにわからない。
とりあえず現状把握から始めないと。とにかく目に見えるものは森。森。森森森。あと卵。もう半分ないけど。
………ここ、どこ?日本かどうかすらわからん………ていうか、私今どんな姿してる?卵から出てくるホモサピエンスっていないよね?ていうか、視界が低い。地面が近い。嫌な予感……
そう思って恐る恐る手を見ると、鱗に覆われた腕と鋭い爪。当然動かそうと思ったとおりに動く。間違いなく"自分"の手。
生物に詳しいわけではないけど、自分の知る限りこれはトカゲとかそういう…爬虫類の手だと思う。なるほど、うん。爬虫類ね、把握。理解はしてない。
トカゲ???
私今卵から孵化したてのトカゲってこと?四つん這い卵むしゃり?
そっかぁ…………………………
もはや諦め。というより現実逃避。というより思考停止。頭がパンクするって前よく使ってたけど、今がほんとにパンクしてる状態なんだと思う。
そんな私の思考停止を妨げたのは、地震と勘違いするほどに地面を震わす咆哮だった。
咄嗟に茂みの中に隠れた。そうしなければ死ぬという確信があった。少しして現れた"そいつ"を見て、その確信は間違ってなかったことを知った。
見上げても足りない対抗。黒い毛の中に赤の混じった"危険"を表しているかのような体色。自分なんか数十匹貫いてもまだ長さが余りそうな牙。
怖っわぁ………なにあれ?恐竜?いや、自分が小さいだけでただの犬?全く判別つかん。とにかく今は茂みに溶け込むべき………
ただでさえ小さい体をもっと小さくしてやり過ごす。幸いそのデカブツはこっちに気づくことなくただ通り過ぎていった。
はあ……安心したらお腹空いちゃった。卵食べよ。むしゃり。