3ヶ月
おれ以上のストーカーなんて、やつしかいない。
元は同じひとりの人間、考え方や行動が一緒なのも当然か、
だが、
「おい、やつは地獄行きだったんじゃ……?」
「わたしの部下があなたのプロフィールを見て天国行きと判断したようです、申し訳ありません」
「おれと勘違いしたってことか」
「はい、人間の心が別れてこちらに来ることなど、そもそもありません。なので、部下を責めないでほしい。かばうわけではありませんが、これは事実です」
「ま、普通はそうだよな」
「正直、わたしも実際にお会いして話をするまでは疑っていました」
「ああ、別に責めるつもりはない。で、やつは、いつごろ向こうに戻ったんだ?」
「あなたが無、に行ったときですから、現世の時間だと3ヶ月ほど前でしょうか」
「そんなに経ってるのか? 彼女は大丈夫なんだよな?」
「もちろん、その点はしっかりと確認が取れています。ただ、彼女が危険なことに変わりありません」
あれから3ヶ月が過ぎたとなると、向こうは3月か4月ってことか。
どちらにせよ、彼女はすでに高校を卒業してる。
卒業して、その後、何をしてるんだろうか?
当時、大学の話をしたことはなかった、
となると就職する選択肢しかないんだが……
そもそも、卒業したら結婚の約束をしてたからな。
仮に別れることなく、死ぬこともなく、
その話が現実になっていたとしたら、
おれはどうするつもりだった?
あの暗闇のなかで、過ごしているとき何度も、
彼女との記憶や思い出を映像として見てきたが、
その中に、ひとつでもそう言った現実的な話があったか?
そんなもん、ゼロだ。
頭の中は彼女でいっぱいで、他のことは、まぁ、何とかなるさ、
てな感じで後回し、いや単に現実逃避してただけか……
これじゃ、彼女のその後を見守れなかったのも当然だ。
おれと同じように、やつも無の世界に行っていたら、
彼女への憎しみだけでなく、自分の甘さにも気づけたのかもな。
「あいつの執念深さはおれが一番わかってる。何に生まれ変わったかわかるのか?」
「それは難しいですね。向こうで肉体と心が離れたタイミングと同時に、入れ替わりは行われます」
「ランダムってわけだな」
「ええ、リアルタイムなら、そのときこちらに飛ばされてきたものを調べれば、ある程度、推測できます。ただ、過去の話となりますと……」
「厳しいってことか」
「はい、それでも脱走したい気持ちは変わらないのですか?」
「当然だ。放っておいたら、彼女は間違いなく殺される。それを止められるのは、おれしかいない、よな?」
「ええ、思っていた通りのお答えで安心しました。できれば、その分身の処分もお願いできますか?」
「なるほど、おれの処分はおれ自身がすべきってわけか」
言いたいことは理解できるし、おれとしてもそうしたい、ただ……
やつに関して何の情報もないのに、どうやって探すんだよ、おい、
と悩んでいた、まさにそのタイミングで、ジョーカーは言った。
「わたしが、彼女に会えるようにしておきます。そうすれば、探さなくても向こうから必ずやって来ますよ」
ジョーカーと話しながら感じ続けていた違和感。
会話の誘導や話術に長けているエリート裁判官、
そんな風に彼のことを思っていたが、とんだ勘違いだった。
「……おれの心が読めるのか」




