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可能性

一瞬、理解に戸惑って、思わず聞き返してしまった。


「なに? 脱走っ?」


「はい」


ジョーカーは、言葉少なにうなづいた。


「そうすれば、ここから抜け出して地上に戻れるのか?」


おれのこの言葉を待っていたのか、彼はそこから次々と言葉を投げかけてきた。


「ただ、天国には何ら不自由ありませんから、普通は逃げだすなどありえません」


「だろうな」


「それにわたしの決めたことを拒否すれば、それは罪となります。それでも知りたいのですか?」


「もちろんだ、教えてくれ」


「脱走のあとに待ち受けるのが、さっきまでいた無、という永遠の罰でもですか?」


「ああ、かまわない」


「それに、何に生まれ変わるかもわかりませんよ、もしかして人間じゃないかもしれません」


「また、あっちに戻れるなら、彼女と同じ世界に行けるなら文句はない」


ジョーカーの声色は話が進むにつれて高くなって、語気も増していった。

いや、言葉に感情がこもっていった、の方が正しかったのかもしれない。


「かりに彼女に会える保証がなくても、同じことが言えますか?」


「ここにいたら可能性はゼロだ。それよりましだろ」


「天国にいればいずれ会えると話しましたが……待てないと」


「それじゃ、約束を果たせない。彼女を見守るとおれは誓った」


「今もまだ好きだから、それを守りたいわけですかね」


「好きとかどうとかより……逃げ出してしまった自分自身が許せないんだ」


無力な存在になった自分の姿を自業自得と嘆いた。

自分の死を受け入れたはずだったが、この心は一時も安らいでない。


後悔なんてないし、たとえ、あったとしてもどうしようもない、

となんとか納得させようとしたが無理だった。


そうやってうだうだと考えてる、女々しいやつ。


でも、それがおれだろ?

おれにはまだやり残したことがあるんだろ?


これは最後のチャンスだ。


「おれはどうなってもいい。だから、頼む!」


「そこまでおっしゃるなら……あなたの人生ですし、最終的には、ご自身が決めたら良いですよ」


「ほんとか? おれを見逃してくれるのか?」


「人を裁くものが、うそは申しません」


「ありがとう、ほんとに心から感謝するよ」


ジョーカーに対して、おれは深々と頭を下げて、


立ちあがろうとしたとき……

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