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自殺者

ジョーカーは、おれの死について話を始めた。


ここからが本題らしい。


「自殺と殺人の判断は難しくなってます。最近の殺人は巧妙ですからね」


「SNSとかで追い込まれて、死んだ場合はどうなる?」


「正直、裁判官によって意見は分かれます。ただ、あちらと違って、追い込んだ人間はこちらでは全て、わかっていますので、それらはもれなく確実に、地獄行きです」


「じゃあ、自殺でなく殺人扱いってことか」


「もちろん、例外もありますが、基本的にはそうです。で、調べてみたのですが、あなたも自殺ではないのですね?」


「ああ」


言葉少なに答える。


「だとすれば、こちらの手違いということでしょうか」


正直、自分で答えながら、自殺でない自信はなかった。


「ここ天界には3つの世界がありまして、それぞれ天国、地獄、無と呼ばれてます」


「おれがさっきまでいたのは地獄、か?」


「いえいえ、あそこは無です」


「無……ってのは?」


「無は自分の意志で現世を捨てたものが行く場所、いわゆる自殺者のための場所です」


おれは自殺はしてないはず、そう信じたかった。


でも、取り乱していたあの状況では、自分さえ信じれないのが正直なところだった。


「戸惑ってらっしゃいますね。では、改めて確認します。あなたは失恋をした、その直後に事故に遭った。これに間違いありませんか?」


「ああ」


「ほんとうに死ぬつもりはなかった、と?」


「た、たぶん」


「当時の状況を詳しく調べて見るとしましょう」


そこで部屋が突然、暗くなって壁面に何かが映し出された。


その映像には、おれのあのときの姿が映っていた。


防犯カメラの映像か、いや、それよりももっと至近距離に思える。


「こんな映像がどこに?」


「死ぬ直前の映像は、こんな風にこちらに送られてくるんです。判断材料になりますからね。これは、あなたですか?」


「あ、ああ」


「指輪を買った帰りのようですね、でも、ずいぶんと急いでる感じですが」


「早く渡したいと思ったんだ」


「普通は、誰かにプレゼントを渡そうと思っている人間が死んだりしません」


そうだな、確かに、普通はそうだ。


ただ、別れたのに今さらこんなものを渡してどうなるといった迷いも正直、あった。


「あのときは無我夢中だったんで……」


「そのようですね。この映像を見る限り、あなたは周りや信号を確認せず道路に入っています」


その直後、横から車が突っ込んできて、おれは自転車ごとその場に倒れて映像は終わった。


「この後、あなたの心は分断され、その分身とやらが彼女につきまといはじめた」


「……だと思う」


「だから、彼女を助けるために自分の分身と闘って、あなたはそれに勝ったんですね」


勝ちとか負けとかは正直よくわからなかった。

ただ、あいつはあそこで消えた。


「でも、結局は、あれもおれだった。全てはおれが弱かったせいなんだと思う」


「ふむ、弱い心が悪の心に打ち勝ったなんて、あなたは正義の味方ですか。実に素晴らしい」


何度か相槌をしたあと、しばらくの間があって、


「わかりました。分身のほうは地獄……あなたは天国行きが妥当な宣告ということでしょう」


ジョーカーはおれにそう告げた。

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