表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/57

紙一重

おれの宿主である男の妻について、ジョーカーは語り始めた。


「奥さんは、いま、どこにいると思います?」


「自殺なら、無の世界じゃないのか?」


「普通は、そうなりますよね。でも、わたしは彼女を裁くとき、死ぬ直前の映像を見せて説明を乞いました」


「何か不自然なことがあったのか?」


「奥さんは病弱がちで、ほとんど寝たきりの生活を送っていました。なので、娘さんとあなたが交互にその世話をしていましたが、一緒に住んでいる分、あなたの負担が大きかったのは事実です」


「それが重荷になっていったのか、同情するよ」


「いえいえ、むしろそれまで妻に何もしていなかった自分を恥じて、料理やら洗濯やら、何でもやっていき、また、そうすることが仕事を辞めた彼の生きがいになっていました」


「なら、奥さんはどうして自殺を?」


「奥さんは知ってしまったんですよ。ある日、あなたが癌であるってことを。それなのに、自分の治療を行わず、看病を優先してることを。奥さんは娘に相談しました、すぐに入院させてあげて欲しいと」


「癌が見つかったことを、なんで黙ってたんだ?」


「まだ、自覚症状もなかったですし、何より心配させたくなかったんでしょうね」


「たしかに、病人が病人を看病するってのも、おかしな話だしな」


「奥さんは、それを知った数日後に薬を大量に飲んで亡くなりました」


「だとすれば、やっぱりこの男は悪くないだろ?」


「薬を飲む直前の映像のなかで、奥さんはすでに眠っていた旦那のほうを睨みつけていたんです。なぜだかわかります?」


「さあな」


「癌という事実を自分にだけ話さなかったこと、隠されたことが嫌だったんです」


「でも、それは心配させない優しさからだろ、なんで憎悪にまで変わるんだ?」


「その行動が、自分の存在を否定されているように映ってしまった」


「それは被害妄想っていうやつじゃ?」


「そうだったのかもしれません。彼女は自分なんていなくていいと思ったそうです。ずっと一緒にいたのに、一番大事なことを教えてくれなかった。そう考えると、怒りが増してきて収まらなくなって、それが突然、悲しみに変わって……結果として死を選んだと話してくれました」


「難しいところだな。愛情ってのは、紙一重だし」


「ええ、その点は、すでによく理解されてますもんね?」


おれの場合は、その憎しみが大きくなりすぎた結果、

もう一人のおれが分身となって彼女の前に現れてしまった。


奥さんも、あの時のおれと似たような気持ちだったのかもな……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ