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瞼の裏

そのストーカーに直接、会っておれがやつを始末する、

これが彼女を助ける唯一の方法に違いない。


「じゃあ今度、おじいちゃんに会わせてくれないか?」


「だめー、おじいちゃんは病気でしょ?」


彼女は明らかに困惑してる。


「少しくらい外出しても大丈夫と先生も言ってたしな」


「……でも」


「もしお父さんに内緒なら、おじいちゃんがお前を守らないとだめだろ?」


「ありがとう、心配してくれて。また何かあったら言うね」


と彼女は返事をしたが、おれには伝わった。

その言葉は、おれに、いや、祖父に気を遣っての社交辞令。


でも、それじゃだめなんだ。


「何かあったあとじゃ、遅いんだぞ!」


少し口調を荒げてしまい、彼女の体がビクッと反応した。


「ごめん、脅すつもりはなかった。ただ心配だったんだよ」


少しの間があったあとで、


「わかった、じゃおじいちゃんにお願いしようかな」


彼女はうっすら笑みを浮かべて話した。


「約束だぞ」


「うん。今のおじいちゃんって怖そうだし、ちょうどいいかもねー」


誉められてないのはわかったが、自分の意見を聞いてくれたこと、

頼ってくれたことが嬉しくて思わず、彼女に手を差し出した。


彼女もすんなり手を伸ばして、


「おじいちゃん、頼りにしてるよっ」


おれの手を握りながらそう言った。


「じゃあ、向こうから連絡があったら、すぐに教えるんだぞ」


彼女は「わかったー」と言ったあと、


「おじいちゃんも、病気をしっかりと治してね」


と言い残して病室を出ていった。


「あんな約束して大丈夫なんです?」


母親が、心配そうに話したので、


「まだまだ、若い奴らには負けんさ。それに、今のおれにはこの顔があるからな」


と少しふざけて軽く睨みながら言うと、


「ほんと、スキンヘッドに眉毛なしだと、別人にしか見えない。身内でも、怖いくらいだわ」


とあきれ気味に言葉を返す。


「じゃ、疲れたんで、少し横になるとするか」


「はい、しっかりと休んでください。ムリはしないようにね」


母親が優しくささやく姿を眺めながら、

彼女はきっとこの母親に似たんだな、と思った。

この二人を悲しませないためにも、おれがなんとかしなければいけない。


ベッドの上で目を閉じて、あいつのことを考えた。

何に生まれ変わったかわからないが、おれ以下じゃないはず。

彼女の話からすると、向こうの方が若く、体力も明らかに上。

おれに勝ち目はあるんだろうか……


瞼の裏に、もう一人のおれが現れる。

現世で見ていたような黒い影で、

その姿も表情もわからなかった。


その影は年老いた姿のおれの前に立ち、クスクスと笑い続けていた。

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