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1ヶ月

看護師はおれの顔を覗き込みながら、話を続けた。


「声が違うだけでこれですか。元々は魂なんですし、気配で感じることできません? あのー、やつのことを知ってるのは誰でしたっけ?」


「おれと……ジェイ、と、ケイ」


「じゃあ、わたしは、そのどちらか、おわかりで?」


この見た目は女性で、ケイはまだ子供、しかも男の子だった。

となると……


「ジョーカー、だよな?」


「見た目が女性だからというのは安易ですね。わたしは男女関係なく入り込めます。ま、それは余談として、あなたに忠告があって伺いました」


「忠告?」


「ええ、こんな老人になって落ち込んでるのもわかりますが、もうやつは彼女と何度も接触しています。急がないと、あなたにはそんなに多くの時間がありませんよ」


「そうなのか? 医師も看護師もいったん回復したと話してたが……」


「所詮、人間の医学では正確な余命までわかりません」


「でも、女神さまならわかるんだろ?」


「ええ、その身体の生命力、細胞レベルの話ですが、どれもかなり動きが鈍くなってます。この感じだと……」


「あとどれくらいだ?」


「せいぜい1ヶ月といったところでしょう」


「それだけなのか。その間に、こんな身体で何ができる? なんでこんな身体にした?」


「それは前にもお話しましたが、彼女に近しい存在だったからですよ」


「でも、これじゃどうしようもないだろ」


「ほーんと情けないっ。そもそも、向こうにいたら可能性はゼロでしたよね? じゃあ、今は?」


おれは、この姿を見た時点で、全てを諦めようとしていた。

だが、いま、おれが彼女と同じ世界戻ったのは間違いのない事実だ。


「もちろん……ゼロ、ではない」


「前の身体は途中で生きることを諦めたから、痩せて弱っていった。でも、今その中身である、あなたには生きる目的がある。そうでしょう?」


「ああ、その通りだな」


ジョーカーの言葉を聞いていると、なんとかなりそうな気がしてくるから不思議だ。

やっぱり、彼女はおれにとっては女神なんだ、お前のことを改めて見直したよ。

などと、考えていると目の前にいる看護師の表情が少し崩れて紅らんでいる。


「つか、やっぱりおれの心の声が届いてるんだな?」


「な、なんでですか? いきなり」


「あ、いや、なんでもない。ありがとうな」


「生きている人間の中に入るのは、なかなかしんどいものでして……そろそろ戻りますわ」


と一瞬、頭を下げて再度、こちらを見た看護師は驚いた表情で、


「ベッドで寝てばかりじゃだめです!」


一瞬、何が起こったかわからなかった。

本来の看護師に戻ったってことだろうが、いきなり怒られるとは……


「いま、必要なのは歩いて身体を動かすことですよっ」


おいおい、ジョーカーさん、話が真逆じゃないか。


「そ、そうなんですか?」


「少ししんどくても動かないと、ますます肉体は弱って立てなくなります。リハビリのために、少しずつ歩き始めましょうねー」


女神といっても、医学の知識はやっぱり本職には叶わないんだな。


とにかく、少しでも早くこの肉体を改善しなければならない。

自分でしっかり歩けるようになるために、

そして、やつと彼女を探しだすために、

残された時間は1ヶ月。


おれは、その日から歩行訓練を開始した。

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