眼差し
今日も地面にじっと横になったまま。
頭に湧いてくる記憶とやらにふけるだけ。
寝ても起きても、いや寝てるのか起きてるのか正直わからない。
そんな中を様々な思い出や事実かどうかあやふやなものまで、
浮かんではすぐに消えていく。
ただ、彼女との思い出は、いまも鮮明に浮かんだ。
おれはできる限りのことをして、彼女をあのとき守った。
彼女も無事だったし何の後悔もあるはずない。
今となれば懐かしい記憶、そう思っても胸はきりきりと痛んだ。
これじゃ見守ることもできない、おれは単なる嘘つき野郎か。
自己嫌悪と失望感が同時に湧いてくる。
未来を向いて生きろ、などと偉そうに言った現実がこれだ。
だったら、いっそ彼女の記憶も曖昧にかき消してくれ、
その気持ちに反してこの闇は彼女との思い出を鮮明にしていく。
記憶との孤独な闘いがいつまでも続いた。
どれだけ同じことを繰り返し過ごしたのかさえ、もうわからなかった。
そんな、あるとき、
シャ、シャシャーッ、かすかに砂のきしむ音がした。
目を向けると、暗黒に逆らう青白い薄明かり。
これは幻覚か?
ゆっくり近づいてみると、ぼんやりとだが人影に見える。
身体を丸めて膝を抱えながら座っている子供が、そこにいた。
「おい」「大丈夫か?」
声をかけても返事はなかった。
その身体はやせ細り、目は虚ろで、まるで餓死したような状態。
餓死したのは、こいつのせいじゃない、親のせいだろ?
そもそも、ここが地獄ならなんでこんな子供がいる?
「おい、こいつは地獄じゃないだろ」
「早く助けてやれよ!」
闇のなかで叫んでみたが、もちろん返事はない。
子供を抱きしめて、
「おれがお前を守ってやる」と呟くと、
その上半身がかすかに反応した。
顔を覗きこむと、すがるような眼差しをこちらに向けながら、
「ぁ、ぁ……」
何かを伝えようとする子供の両手は小刻みに震えていた。




