表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/57

看護師

生き返って数日、看護師や先生、身内の人間と話をかわしながら……

少しずつ今のおれの立場がわかってきた。


おれは67歳の初老の男性。

妻は数年前にすでに亡くなっている。

詳しくはわからないが事故だったらしい。


子供は娘ひとり、付き添い人をしていた女性。


3年ほど前、男性は健康診断で癌が見つかった。

そのときには、すでにいくつかの臓器に転移していて、

手術ができなかったため、抗がん剤で定期的に治療。

いわゆる、延命作業中の身体だった。


それが運悪く、風邪をこじらせて肺炎を併発し、

病状が急変、病院に担ぎこまれたが、何とか一命を取りとめた。


否、手遅れで亡くなってしまい、魂とやらは抜け出して天国行き。

で、残された身体に、タイミングよくおれが入りこんだわけ。


以上、今の自分の立場はおおよそ把握できた。


しかし、


やつの立場は病室にこもったこの状態でわかる術がない。

こうしている間にも、彼女に接しているかもしれない。

それなのに、おれはどうすることもできない。


せめて彼女のことが何かわかればいいのだが……

この身体の持ち主が、何らかの形で彼女と繋がっている、

ジョーカーはおれにそう話していた。


ただ、今のところ何の情報も得られない。

やはり、このまま入院していては何も始まらない。


1日も早くここから出たい、その気持ちはあっても、

肉体がおれの気持ちに応えられない今の段階では、

おとなしく、いつかわからない退院の日を待つしかない。


生死の山場は一旦、超えたらしく付き添い人はいなくなったが、

薬の副作用で、食欲がなく足腰も弱ってまともに歩きもできない。


加えて……

洗面台の前に立ち、鏡を覗く。

これが、今のおれの姿か。


抗がん剤の副作用で、髪は抜け落ちてしまい眉毛までない。

ほおは痩せこけて、シワだらけの目元はすっかり窪んでいる。

夜中にこんな顔を見たら、驚くのも当たり前か。


よりによって何でこんなじいさんに生まれ変わった?

ジョーカーは、おれのことをもて遊んでるのかい?


自分の姿を眺めながら、失望と怒りで叫びそうになったとき、


「まだ、寝てないとダメですよ」


振り返ると、ひとりの看護師が入り口に立っていた。


「ああ、すまん。ちょっと顔を洗いたくて」


「勝手に動かないで、そう言うときは、ナースコールを使ってください」


「わかりました」


といってベッドに入ろうとすると、


「はぁ、甘すぎます。もしわたしがやつだったら、どうなりましたかね」


看護師から、想定外のセリフを聞いて、


「だ、だれだっ?」


おれは思わず叫んでしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ