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目の前

「現世編」 begins.


「なんで……なの……」


「……しぬ……すぎる」


途切れ途切れの声が聞こえてくる。


「うぅぅ、ぅぅ……」


すすり泣く声も響いている。

おれの周りにどうにも陰鬱な空気を感じた。


ここはほんとに現世なのか……

いきなりこんな状況があるか?


何か大きな災害でも遭ったならわかるが……

普通は、ありえない。


そこで、ある考えが頭に浮かんだ。

もしかしてこのすすり泣きは……

地獄に行った人間たちのものじゃないのか?


そういえば、ジョーカーは最後、おれを見て笑っていた。

もしかして、おれはやつに騙されて、はめられたのか。


「ぁああ……ぁあ……」


明らかに苦しそうな声がまた、聞こえてくる。


たとえ、そうだったとしてもおれに怒る資格はない。

結果的に彼女を殺そうとしたのは、おれ自身だ。

すべてはおれのせいで、これを受け入れるしかない。


あいつの代わりに、おれがここ、地獄に運ばれた。

つまり、あの子供が地獄への使者だったなら……

二人で組んでおれをここに連れてきたって辻褄も合うし、

部下が間違えたというミスもこれできれいに揉み消される。


目を開いて、周りを確認すればすぐに答えは出るが、

目の前に現れる地獄とやらを想像すると、ためらってしまう。

できたら、ひとが苦しむ姿なんて、もう見たくない。


しばらくの間、おれは寝たふりを貫いた。

上向けに寝ていて、背中には柔らかな弾力を感じる。


落ちるときに、どこかで打ったのか身体がきしむように痛む。

いや、この痛みは身体の外ではない、内部から来る痛み。

頭の中もがんがんと痛みが増してくる。


そう言えば、ジョーカーは話してたよな。

地獄では肉体的な苦痛を感じるのだと、

しかも、それが永遠に続くのだと。


その状態がすでに始まってるのだとしたら、

暗闇とは違うが、この苦痛もなかなかきついな。


もうこの状況から逃げようもないってことなら、

このままずっと寝たふりしてても仕方ないか。


おれは覚悟を決めて、ゆっくりと目を開いた。


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