金属音
最初からずっと、おれの心をのぞき見ていたわけか。
なぜ、そのことを今まで黙っていた。
こうやって自問してるのも伝わってるよな。
おれがうそをつくかどうかチェックしていたのか?
(ギィ)
もし、これまでにおれがうそをついていたら、
おれが現世に戻るチャンスはなかったわけか?
(ギギィ)
おれにその資格、つまりは彼女を救えるかどうか、それと、
やつを捕まえるのことができるか見極めていたってことか?
(ギギィギィッ)
この鈍い金属音は、目の前の鉄仮面が揺れてきしむ音なんだが……
ジョーカーとしては、普通に頷いてるつもりなんだと思うが、
先ほどまでと違って、言葉のないあいづちは不気味すぎる。
おい、つまり、おれの推測は正しかっ……
そこまで思いかけて、思考をいったんリセットした。
よく考えると、おれはあれから一言も発していない。
だから、それに合わせて声を出していない、ってことか。
だとしたら、ジョーカーって男はあまりにマジメというか、
空気を読まないというか、そこら辺はやはりロボットだな。
「つまり、おれの推測は正しかったのか?」
「はい、バレてしまいましたか」
「というより、わざとバラした感じだったがな」
「ええ、あなたの言葉にどれもうそがないとわかりましたし、もう隠す必要もありません」
いわゆる読心術ってやつか。
現世でそれを聞いたら、
「そんなの怪しすぎだろ、ありえんって」で終わっていたが、
今はそんな話を聞いて、
「ああ、そうか。やっぱりか」とすんなり納得してしまった。
そもそもが心しか存在しない世界なんだ、ここは。
形のあるもの、つまり物質はいっさい存在しない。
ということは、肉体もないわけだし視覚とか聴覚といった感覚も本来ないはず。
なのに、それらが現世と同じように感じられるのは……
「それは、それぞれの心が持っている記憶の中からイメージを作り出してるためですよ」
「イメージ、か」
「心に蓄積された膨大なデータが、こちらの世界に適応して解析が行われて、過去に存在した肉体を模倣して作られる……などと言うとさらに混乱しますか」
ジョーカーなりに疑問に応えようと話しているのだろうが、
そういった説明をすることもないだろうし、戸惑うのも当然か。
悪いが、その説明の仕方じゃだれも理解できないぞ。
と、思わず声を上げそうになって、また気づいた。
これもぜんぶジョーカーに伝わってるんだよな……




