砂の上
10年近く前に書いたまま放置していたものを、
掲載していますので、違和感もあるかと思います。
前もってその点はお伝えいたした上で、
少しでも読んでいただけたらと思います。
闇の砂漠。
いつからか、ここをそう呼んでいた。
目を開けても閉じても同じ。
夢から覚めたら、また夢のなか、そんな錯覚を起こす。
時間とともに目が慣れてくるかと期待したが、
目の前は真っ黒に塗りつぶされたまま変わらない。
昼か夜か時間もわからない。
いや、そもそも時間自体が存在しない。
周りに変化があって初めて時間は成り立つ。
ここじゃ無理な話だ。
意識が戻った初日、闇のなかを走り回った。
どこかになにかないかと。
どこかにだれかいないかと。
だが、どこまでも暗闇が続いた。
漆黒の闇。孤独の闇。
走るのを諦めて、宙を舞ってみた。
無重力であるかのようにどんどん高く上がっていった。
しかし、景色は変わらない。だから、本当に宙を舞っているのか実感できない。
ただ、そんな気がしただけ。
ここでは、横も上も際限はない。
ただ、下だけは少し違った。
歩くと足の感触が伝わった。
細かな砂のような粒が散りばめられているようだった。
この無限の空間に、おれひとり。
これが地獄だとしたら、想像とまったく違った。
たしかに肉体はないのだから、精神的に辛いのが何より苦痛。
よくできてるな、と感心した。
それと同時に絶望し、全てをあきらめた。
おれは砂の上で動かなくなった。