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第四話 参謀は罪重ねがち


「え」


 混乱が混乱を呼ぶ、まさに大混乱の真っ最中。

 そこに加わる混乱界の大型新人に、俺はもはや意味のある言葉を出せない。


 魔王のチ〇ポが大回転したことから始まり、閃光、分離。

 そして現れたチ〇ポと名乗る武人。壁の破壊。


 次々と未知の体験が襲い掛かり、もうてんやわんやの大困惑だ。

 夢なら早く覚めてほしいと目を逸らしたいし、投げ出しちゃえよと全身が囁く。


 しかし、今夜は俺にとことん困ってほしいようで、次はチ〇ポが取れた魔王の方に手が加えられた。


―――魔王がいない。


 壊された壁から落ちちゃった?

 それともチ〇ポ探しにお出かけ中かな?


 違う。あんな図体のデカい魔王が動くのを見逃せるはずがない。


 じゃあ何だ? この部屋にいるってのか? 丸々太った魔国牛よりもデケえあの魔王がよお!


 俺は周囲をゴキゲンな感じで指差し確認するが、魔王の姿はない。


「ははーん。さてはアレだな。魔王はチ〇ポ取れたショックで更にデッカくなって、魔王のケツの穴に城ごとすっぽり埋まっちまってんだ!だから魔王様が見えねえんだ!そうに違いねえや! はは! はははは!」


………


「違うぅ!!」


 俺は膝から崩れ落ち、床に拳を叩きつける。


 遮音結界も無くなり、壁を破壊した音は既に城中の兵士が聞き及んでいることだろう。

 数分もすればたちまち兵士が集まり、俺は捕まえられてしまうんだ。


 そんな逼迫した状況にいるのだ。

 そろそろ現実を見て、考えねば。


 とっくに疲弊しきって動きの悪い脳みそに鞭を打ち、俺は目の前に転がる謎の少女に目を向ける。


 ちょうど部屋の中心、チンポと分離した魔王が倒れているはずの場所。


 そこにいたのは、筋肉ダルマの魔王とは似ても似つかない小柄な少女であった。


 種族はおそらく亜人―――見た目はほぼ人間だが、耳の上あたりに可愛らしいサイズの赤いツノが生えている。

 人間であれば歳は十ほどか? 最近は魔人とばかり会っている為その辺の感覚が鈍くなってしまったな。

 服は着ておらず、華奢な身体が露になってしまっている。

 腰まである金髪は少しクセがあり、幼くも整った顔立ちと相まって、ツノがなければ正に妖精、といったところだ。


 とりあえず肌を晒したままは良くない、と俺が引き裂いた虎柄のパンツを取りに立とうとしたら、小さな呻き声が聞こえる。


 少女が目を覚ましたのだ。


「う~ん。なんじゃ。なんでオレは床で寝て………ってなんじゃこの身体はァ!?」


 少女は不機嫌そうに身体を起こすと、自身の身体に驚愕する。


 口調になんだか覚えがあるが、騒がれても面倒だし、とりあえず大人しくさせたほうが良いだろう。


 俺は快眠魔法を使おうと少女に近づくが―――


「あっ!」


 ―――少女がコチラに気付く方が早かった。


「貴様ブレイン!! なんでここにおる!! コレは貴様の仕業かァ!? 魔王であるオレに」


「ブレイン・インパクトォ!!!!」


「みぎゃ!!!」


………。


……。


…。


 やってしまった。


 この子が魔王がどうとか言うもんだから、咄嗟に魔導書を召喚し、オリジナル魔法「ブレイン・インパクト」を使ってしまった。


 ブレイン・インパクト―――魔導書の角に魔力を込め、渾身の力で対象の頭部を殴打する魔法だ。

 これにより対象の脳細胞ははちゃめちゃになり、大半の記憶を失う。


 とりあえず生存確認。

 呼吸もしているし、脈もある。生きてはいるようだ。


 とにかく人が来る。俺は逃げるにしても、この子を床に寝かせておくのは気が引ける。


 俺は少女を抱えてベッドまで運び、鬼のパンツをかけてあげる。

 優しいね。


 よし。

 あとは転移魔法を使って執務室に逃げるだけだ。

 それで、血相変えて執務室から飛び出して、魔王様を心配している感じを出す。


 少女については記憶を失っているはずだが、もし俺を覚えていた場合は、なんか適当に魔王がこっそり連れ込んでいた女で、会ったことがある、とでも言おう。


 そして、俺はこう推理してみせるのだ。


 痴情のもつれで大揉め、魔王はカッとなって少女を殴り、それでも気が収まらない魔王は壁を破壊して外に出た、のではないでしょうか!


 うん! これで完璧なはずだ。


 衝動的に少女の頭をブっ叩いてしまったことで、逆に冷静さを取り戻していた俺は、さっさと退散しようと転移の魔札へ向かう。


 が、そこへ聞こえてくる、かなりの速度で近づいてくる声と足音。

 その音に妙に胸騒ぎを覚え、俺はある重大な見落としに気付く。


 警備兵長:フェンリル―――狼魔人の彼の嗅覚はあらゆる臭いを嗅ぎ分け、追跡することが可能な男。

 冷静で高い分析力を備え、彼にかかれば城内で起きたどんな事件でも現場に残された臭いを嗅ぎ分け、犯人に辿り着く。

 彼の現場検証は、まるで事件の一部始終を見るかのように正確。


 彼を警備兵長に推薦したのは紛れもない俺であり、その能力を一番買っているのも俺だ。


 マズイ!なんで今まで忘れていた!? この部屋に入れば、あいつはきっと俺に辿り着く!

 逃げても無駄!隠れても無駄!どうする!?


「魔王様! 魔王様ァ!!!」


 付近からフェンリルの声がする。

 もう時間はない。何か無いか!? この窮地を脱する方法は!?


 いっそのことフェンリルを始末するか? いや、近づいているのがフェンリルだけとは限らない。

 始末に手間取ると他の者に目撃される可能性が高いだろう。


 となれば、臭いを消す………ダメだ。消臭魔法なんて覚えていない。


 部屋に火を放つか?それなら臭いも紛れ、追跡が難しくなるだろう。

 いやそれもダメだ!俺に燃えた臭いがつくかもしれない!フェンリルならその微かな臭いすら追えるはず!


 どうしようと、俺がこの部屋にいた事実は遅かれ早かれバレてしまう、ってことか………!

 

 ならば、捜査を難航させ、その間に少しでも遠くへ逃げる!

 その為には、これしかない!



―――フェンリルの鼻を破壊する!


 これは時間との勝負だ。


 まず部屋の扉前で鼻を破壊する魔法を使う。

 直後、俺は転移の魔札まで走り、執務室に戻る。

 その後、入室したフェンリルは俺が残した魔法に鼻を破壊され、捜査能力を失う。

 その間に俺は荷物を纏めて逃亡。コレだ!


 クソっ!時間がない!間に合ってくれえ!!


 俺は扉前へ全力でダッシュ。到着次第ズボンとパンツを脱ぎ捨てる。

 扉側へお尻を向けて、しゃがみ込み、魔法を発動する。


 これは、俺が便秘に悩まされた時に編み出したオリジナルの魔法。

 身体中の老廃物を集約し、肛門から一気に放出する―――



「―――脱糞魔法『クソデルフィア』!」


 詠唱し、魔法が放たれたと同時、後方からドアを引く音。

 俺は振り返り、開かれる扉をただ見つめる。


 この魔法の欠点は二つ。


 膨大な魔力を必要とすることと、出し終えるまで動けなくなることだ。



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