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異世界最弱のニート様 敵は異世界最強の勇者様? 俺 死亡フラグ回避するために棚ぼた勇者めざします!  作者: 風まかせ三十郎


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第06話 荒野に佇立する避雷針

 ひゅ~ひゅ~、ごぉ~ごぉ~、ひゅ~ひゅ~、ごぉ~ごぉ~。


 俺は今、荒野でただ一人、吹きすさぶ風雨の中に佇立(ちょりつ)していた。

 いや、これは心理描写ではない。

 現実の出来事なのだ。

 まあ、異世界で現実なんて言うのも(はばか)られるが。

 全身びしょ濡れ。

 虚弱体質の俺のことだ。このままでは風邪を拗らせて、肺炎を併発する恐れすらある。

 いや、その前にだ、落雷で感電死する恐れすらある。

 なぜならだ、俺は右手に”ロンギヌスの槍”、いや、違った! 避雷針を握り締めているからだ!


 もちろん、通信教育で大卒予定の俺だって、そんなことすりゃ、落雷→感電することはわかっている。

 でもやらねばならぬ!

 就労一直線の泥沼のような現状を打破するために、そして一生楽して暮らせるニートライフを完遂させるために。


 俺は命を捨てて生きるだ!


 で、こうして風雨に打たれて、時が来るのを待っているわけだけど……。

 皆さん、こう思いません?

 おまえ、なにしたいのかよくわかんねえけど、そんな七面倒臭いことするくらいなら、さっさと就職しろって。

 そこのあなた、ニート王の矜持(きょうじ)ってご存じですか?

 あっちの世界で仮にも王だった男が、なんで異世界転生してまでチンカス労働しなきゃならないんです?

 それって酷い屈辱だと思いません?

 それってヤマトに敗れたデスラー総統以上の屈辱ですよ!

 あっ、あの人、あっちの世界では俺の心の友だから。

 できれば覚えといてほしいな。


 わたしは屈辱を忘れぬ男だ。倒すべき相手は労働。


 で、さっきの話に戻るんだけど。

 なんで嵐の中を、落雷の危険性を顧みずに、避雷針握り締めて立っているのかというと。それには深い訳があるんですよ。その訳とは……。


 俺は和真に心の中で”裏切者”と呟きつつ、道路工事の現場を離れたんだけど、やっぱ異世界来てホームレスっていうのもなんだし。

 その社会的弱者な立場はなろう系小説の最底辺記録更新だよな。

 あっ、作者が不気味な笑みを浮かべている。

 きっと俺をホームレスに零落させて笑い者にする気なんだ。

 やめろ、やめてけれ!

……というわけで、作者の奸計(かんけい)を打破するために、俺は嫌々職安に足を向けたんだ。


 取り敢えずバイトだ!

 そう思って求人票を眺めてたんだけど。

 いや、安いのなんの!

 一気にテンション下がったね!


 なになに、ハンバーガー屋の従業員   時給800円

 なになに、スーパーの品出し、管理   時給900円

 なになに、荷物の検査、仕分け     時給1000円


 やっぱこちらとしては時給5000円はもらわねえと。

 そうそう、月給なら百万円からね。それ以外はお断り!

(読者の皆さん、盛大に突っ込んでください!)


 つらつらつら~と求人票を眺めていると、あったんだよね。

 勇者様のお仕事が。

 なになに、火竜(サラマンダー) 小型種 報酬500万円


 いや、いけるよ。これならやる気出てくるよ。

 ええと、他には……。

 

 人食いガマガエル 大型 報酬5万円


 あいつ、この街にも出没するんだ。

 単価安いよね。その割に手強(てごわ)いし。やめた。

 ええと、他には……。


 ひとつ眼スライム(アンデッド系) 報酬一万円

 

 なるほど、スライムを治癒魔法で退治するなんて珍しいとは思っていたが。

 まさかアンデッド系のスライムだったとは。

 あのチリ紙交換のおねえさん、リヤカー引いてるよりも、こっち狩ってた方がなんぼか金になる気がするけど。


 よし、決めた! 復讐戦だ!


 俺は求人票をむしり取ると、窓口の所へ持っていった。

 窓口でぼんやり座っていた五十がらみのオヤジが、俺の差し出した求人票を見るなり、「あんた、資格はもってるの?」とぶっきら棒に尋ねた。


「資格?」


 俺はそこでようやく勇者になるには資格が必要なことを思い出した。

 なんでも国家試験パスしなきゃいけねえとか。おい、冗談だろ?


「いえ、その資格の方は……」

「最近の若い人によくいるんだよ。転生しさえすれば、すぐに勇者や魔導士になれるって勘違いしてる人が」

「……」

「君、いくつ?」

「は、二十歳ですけど」

「二十歳……。まあ、まだ夢を抱いていい年頃かもしれないけど、お金、ないんでしょ?」

「ええ、まあ」

「転生手当の申請は?」

「えっ、なんですか、それ?」

「転生したばかりの人には三か月間、月十万円が支給されるから」

「ほ、本当ですか!」

「はら、そこの書類に必要事項を記入して」

 

 俺の申請は認可されて、めでたく十万円が支給される運びとなった。

 おやじ、ありがと!

 別にこの人が金くれる訳じゃないけど、思わず感謝しちゃったね。

 俺を見守るオヤジの瞳はなんとなく優し気だった。きっと若人の旅立ちに暖かいエールを送ってるんだ。

 

 が、ここでひとつ問題発生~。

 その転生手当とやらは銀行口座に振り込まれるそうだ。

 つまり、この場ではもらえねえってわけだ。ほんと、目先の金が欲しいこの時期に、これだから行政は!

 まあ、取り敢えずだ、さっそく口座を開設してだなあ、一刻も早く当座の生活費を確保せねば……。

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