表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界最弱のニート様 敵は異世界最強の勇者様? 俺 死亡フラグ回避するために棚ぼた勇者めざします!  作者: 風まかせ三十郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/59

第54話 女神様の失敗 勇者はS級犯罪者!?

 ひと目、勇者の母親の姿を見た俺は、驚愕の余り一言も声を発することが出来なかった。

 あんぐりと開け放たれた口端から、大量の涎が垂れ流されるのもお構いなし。

 だって勇者のお母さん、すんげえ美人なんだもん。

 それも金髪碧眼の肌の白い外人さんだよ!

 まあ、あの超イケメン息子の母親だから、間違いなく元美人さんだとは思ってたけど。それにしても若い、若すぎる!

 白人の女性ってさ、往々にして同い歳の日本人女性より歳喰ってみえるんだけど、その法則を完全に打ち破ってるよ。

 勇者の放つ必殺技なんかよりも、ずっと凄まじい破壊力だぜ。

 どちらかというとロリコンの気がある俺だけど、一瞬、勇者の父親になるのも悪くはねえかなんて思っちまったから。そういや、勇者のやつ、母子家庭だとか言ってたよな。あのお母さん、独身(フリー)だよね?

 傍らには、いつしか背広姿で呆然と佇む田中さんの姿があった。

 俺の質疑は至って純朴だった。


「あの、田中さん。あの女性、何歳くらいに見えます?」


 田中さんが腕を組んで考え込んだ。


「う~ん、二十歳」


 やっぱり……。


 そうは思ったものの、仮にも十八歳の息子の母親が二十歳っていうのは、いくらなんでもあり得ねえから。

 俺は田中さんに軽蔑の眼差しを投げかけた。

 

 この、スケベ社畜が!


 田中さんが同類相哀れむ目で俺を見た。


「そういう君は、彼女が何歳くらいに見えるのかな?」

「う~ん、そうですねえ」


 俺も腕を組んで考え込んだ。


「十八歳!」


 田中さんが俺に軽蔑の眼差しを投げかけた。


 この、スケベニートが!


「いや、君ねえ。勇者って十七、八の若者でしょ? その母親が十八歳なんてあり得ないでしょ」

「でもさっき、田中さんだって二十歳とか言ってたくせに」

「いや、だからさ、あれはまだ衝撃波の余韻冷めやらぬ時だったから」

「衝撃波って、アロンダイトの?」

「いや、勇者の母親の……」


 俺は妥協案を思い付いた。

 これなら二十歳と十八歳という見解の相違を、うまく解消してくれるはずだ。

 

「あの、田中さん。俺、思うんですよ。あれ、女神様の勘違いじゃないかって。彼女、けっこうドジっ子で、俺の時も資格(スキル)授け忘れたりしたんですけど、あの勇者の母親って、もしかしたら勇者のお姉さんじゃないかなって。それなら二十歳にせよ十八歳にせよ、年齢的に矛盾がなくなるわけでしょ」

「う~ん、なるほど。バイト君、君、相変わらず鋭いこと言うね」

「では意見の一致をみたところで、勇者さん本人に訊いてみましょう。勇者さん、お取込み中申し訳ありませんが、あれ、お母さんじゃありませんよね? 間違いなくお姉さんですよね?」


 天空を仰ぎ見ながら滂沱の涙を流す勇者。

 突然、母親が遺影の前で泣き崩れた。

 勇者が慟哭に震えながら両手を広げて膝を折った。

 その唇から、真珠のごとき一粒の呟きが零れ落ちた。


「……か、母さん」


 し、信じられねえええええ~~~~~!


 俺、思わず田中さんと顔を見合わせちゃったよ。

 そんな俺らの驚愕をガン無視して、女神様が勇者に言い放った。


「勇一、あなたはお金さえ稼いでしまえば、現世への送金など、後からどうとでもなる。そう考えたのでしょうが。現実には送金する術がないままに、貯金通帳の残高だけが増えてゆく。それはそれで堅実な生活を目指す上では好ましいのでしょうが、もしあなたがスマホを選択していれば……、異世界で元気に生活していることを伝えていれば、母親はああして毎日嘆き悲しむことはなかったでしょう」

「……母さん」

「可哀そうな人。あなたは母親を思慕する余り、他者への愛情を見失ってしまったのです。そんなあなたを母親は決して赦さないでしょう。もちろんわたくしも赦しません!」


 うおおおおお~~~~~!


 勇者が頭を抱えて絶叫した。そしてガクッと地面に両手をついた。

 滴り落ちた涙が乾いた地面に浸み込んでゆく。

 なんかもう、最終決戦を前にして決着がついたような感じだ。

 俺がエクスカリバーの返却を考えたその時、女神様が叫んだ。


「秀一、さあ、今の内です。勇者を滅するのです! 今なら赤子だって勝てます。さあ、早く!」


 一瞬、俺は我が耳を疑った。冗談かと思った。

 でも女神様の目は真剣だった。

 俺は彼女の真意を測り兼ねて尋ねた。


「女神様、あなたはどうしてそんなに勇者を憎むのです? 俺ですら、もう赦してあげようかなって感じなんですけど」

「そ、それは……」


 女神様が言い淀んだ。

 この場合、さては裏になにかある。そう思うのが普通だよね。

 俺はエクスカリバーを投げ捨てた。


「本当のことを教えてください。でなければ俺、勇者と闘いませんよ」

「わかりました、秀一。事実をお話ししましょう」


 女神様が困惑顔で語ったところによると、現世の陰に異世界あり、人類史と同等の長い歴史を持つ異世界だが、その歴史上一万人以上のS級資格者が存在したにも拘わらず、彼らは誰一人として、犯罪に手を染めることはなかったそうだ。

 社会正義の王道を地道に突き進む心正しき人々。それこそがS級資格者の素顔なのだ。


「それがですよ。選りに選って、わたくしの担当したS級資格者から異世界初の犯罪者が出てしまうなんて。当然のごとく、神の世界、すなわち天上界では大問題となりました」


 やはり神様は見逃さなかった。勇者の犯罪を!

 俺の脳裏に牝牛ちゃん一頭一頭の笑顔が蘇る。

 そしてパトラの笑顔が!

 萎えかけた俺の闘志に再び火が点いた。

 

「最上級神であらせられる熾天使(してんし)様方が協議した結果、わたくしに指示が下りました。勇者を抹殺せよ。犯罪者としてではなく、決闘に敗れた敗北者として抹殺せよと。もし勇者を歴史の闇に葬ることが出来たら、おまえを天上界から追放せずに、始末書一枚で赦してやると。わたくしはその指示に従う以外に選択肢はありませんでした」

「つまりこの決闘は、女神様により仕組まれたというわけですか?」

「ええ、わたくしがミスを犯さなければ……、勇一をS級勇者に認定しなければ、こんなことにはならかったのですが」


 女神様が勇者を申し訳なさそうにチラ見した。

 もし自分が彼の悪しき資質を見抜いて、S級資格者の力を与えなければ、勇者ハーケン・クロイツァーは、いや、小市民(パンピー)佐藤勇一は犯罪を犯すことなく、人生を全う出来たかもしれない。

 彼女はそんな負い目を感じているのだ。

 まっ、俺の想像だけどね。

 女神様が押し殺した声で呟いた。


「秀一、さあ、今こそ勇者ハーケン・クロイツァーを滅する時です!」

「滅するの滅って、それって鬼滅の……」

「もう、それはいいですから!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ