表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界最弱のニート様 敵は異世界最強の勇者様? 俺 死亡フラグ回避するために棚ぼた勇者めざします!  作者: 風まかせ三十郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/59

第45話 打倒勇者! 新たなる誓い!

 それは俺を断罪するための夢だったに違いない。

 

 ある小春日和の一日。

 俺は牧場で牝牛ちゃんたちと戯れていた。

 牝牛ちゃんたち、自分でロンバースのファスナーを下げると、巨乳を露にして、俺に--搾乳して、搾乳して、と迫ってくるのだ。


 おおっ、なんてナイスな光景なんだ!


 俺は迫り来る数多(あまた)の巨乳にぷにぷにされながら、手近にいる一頭を抱き寄せた。


 おおっ、おまえは優子ちゃん!


 なぜか、死んだはずの優子ちゃんが目の前でほほ笑んでいた。


 なんだ、おまえ、生きてたのか。

 

 俺は嬉しくなって優子ちゃんを笑顔で抱きしめた。

 優子ちゃんがエヘッと小首を傾げた。

 そして……、その可愛らしいピンク色の乳首を、俺のお口に含ませたではないかぁ~!

 その瞬間、大量のミルクが俺の咽喉に注ぎ込まれた。


 うおっ、止めて、お願い、苦しい!


 上目遣いに見上げれば、いつしか優子ちゃんの顔は、春子ちゃんに変わっていた。


 は、春子!


 勇者に斬られて死んだはずの春子が、俺の目の前にいた。

 その顔が、夏子、秋子、冬子へと、次々に変わっていく。

 その間にも、大量のミルクが容赦なく咽喉の奥まで注がれてゆく。

 佳子、阿子、良子、蘭子、京子、桜子……。

 俺の目の前に現れては消える美少女たち、いや、違った。牝牛ちゃんたち。

 もう、俺のお腹は一杯だった。


 いい加減、やめてくれ! 俺が、俺が悪かったぁ~!


「おい、起きろ。目を覚ませ!」

「う~ん、助けて。もう牛乳飲めません」

「おい、なに寝ぼけてるんだ! 早く目を覚ませ!」


 彼方から、目覚めよと呼ぶ声が聞こえてきた。

 その蓮っ葉な口調は、目覚めればそこが楽園(ハーレム)であることを絶対に否定しているのだが、まあ、それが麗しのおねえさんの声であれば、喜んで目を覚ますのも物の道理。

 目を見開くと、そこには不安げに俺を見つめるおねえさんの顔が。


「お、おねえさん……」


 そこには久し振りに眺める美しきおねえさん、フェイさんの姿があった。

 おねえさんが安堵のため息を漏らした。


「やっと目を覚ましたか。それにしても勇者のやつ、とんでもねえことしやがったな」


 おねえさんの視線を追って、俺もそこへ視線を向けた。

 するとカンテラの薄ぼんやりした光の中に、地面に横たわる桜子と京子の遺体が浮かび上がった。

 

「桜子、京子!」


 駈け寄ろうとして、俺は激痛に片腹を押さてうずくまった。

 おねえさんが俺を抱え込んだ。


「おい、まだ動くな。肋骨にひびが入ってやがる。今、治してやるから」

「桜子、涼子!」


 俺は構わず桜子ににじり寄った。

 

「桜子、桜子……」


 俺は彼女の肩を揺さぶり続けた。

 桜子は目を覚まさなかった。そして京子も。

 全身から力が抜けた。


 痛て!


 緊張と恐怖が弛緩した瞬間、再び脇腹に激痛が走った。

 

「だから動くなって言ってんだろ。ほら、横になれ。いま治してやるから」


 おねえさん、俺の身体を横たえると、右手から淡い光を照射した。

 患部の痛みが和らいでいく。

 でも心の痛みは治まらなかった。


 クソッ、クソッ、クソッ、俺が弱いばかりに。


 牝牛ちゃんを救えなかった悔悟の念が、俺を苛む。

 傷が治癒してゆく間にも、俺は滔々と涙を流し続けた。


「おねえさん、ゴブリンの洞窟は……、あいつら、無事でしたか?」


 おねえさんが力なく首を振った。


「あの野郎、あたしの大切なお得意さんを片っ端から潰しやがった。とんでもねえ野郎だぜ。まったく!」


 おねえさんの治癒魔法(ヒール)が途絶えた。

 俯いたまま両肩を震わせていた。


「パトラの墓見てきたぜ。生き残ったオークたちが、仲間の遺体を後回しにして、最初に埋めてくれたんだ。子供を助けてくれたからって。あの子、長老さんのお孫さんだそうだ」

「オークが」


 俺の涙が乾いた。

 おねえさんが濡れた瞳で俺を見た。


「可哀そうだよな、パトラ……。なんの罪もねえのに、勇者に斬られて死んじまうんだから」


 俺は湧き上がる怒りを抑えることが出来なかった。


「でもパトラは駆除指定外の魔生物だから、殺せば相手の罪を問えるはずです!」

「動物愛護法違反に問えるだろうが、もしそうなっても罰金刑だ。しょせん、パトラは人じゃねえから」

「そ、そんな!」

「勇者の仕事を邪魔したとなりゃ、罪に問われない可能性が大だ。なんせ請け負ったのが行政の仕事だからな。でもそうなったら、パトラは……、永遠に浮かばれねえ」


 おねえさんが悲しみを抑え切れずに俯いた。

 滴る涙が地面を濡らしてゆく。


 俺は、俺は……、拳を握り締め立ち上がった。


「おねえさん、俺、勇者が、ハーケン・クロイツァーが許せません! 行政がやつを罰しないというのなら、俺がこの手でやつを罰してやります!」


 おねえさんが驚いて顔を上げた。

 

「だって、おめえ、相手はS級勇者だぞ? 勝てる訳ねえだろ」

「じゃあ、見過ごせっていうんですか! パトラを殺した犯罪者を!」


 おねえさんが難しい顔して立ち上がった。


「おめえな、なにする気か知らねえけど、もし武器を持って立ち向かえば、あいつだって容赦はしねえぞ。最悪、殺されたらどうするって話だ!」

「俺は絶対引きません。倒せなくったっていいんだ! せめて死んだパトラのために、オークやサキュバスやスライムやゴブリンのために、俺はやつに一発入れてやりたいんだ! ニート級素人パンチなんかじゃねえ、本物の一撃を!」


 俺の脳裏に、田中さんの勇姿が蘇った。

 最後の一矢で勇者の頬を切り裂いた、B級弓使い(アーチャー)の意地の一撃を。


「おめえ、そこまで」


 おねえさんが俺の肩へ手をかけた。

 そのとき、


 モゥ~! 


 突然、牝牛ちゃんの声がした。

 二人して同時に振り返った。


「おっ、おまえは咲子ちゃん!」


 そこには咲子が、どこかへ隠れていたのか無事な姿を現した。

 

「咲子ぉ~、生きていたのかぁ! よかった、よかった」


 俺は彼女の首へ喜び勇んで抱き付いた。


 おや、これは?


 咲子がなにかを咥えている。

 カンテラの明かりに浮かび上がるそれはダガーナイフ。俺が以前、サキュバスの洞窟に侵入したとき紛失したダガーナイフだった。


「おまえ、これで仲間の仇を討てっていうのか?」


 モゥ。


 咲子ちゃんが決意を秘めた表情で頷いた。

 俺は彼女の頭をなでなですると、ダガーナイフを手に立ち上がった。


「おめえ、とうとうやる気になったか!」


 おねえさんも遅れて立ち上がった。


「あたしも協力するぜ。お得意さんを大勢殺されたんだ。それに親友のパトラも殺されたんだ。お縄にして警察に突き出さなきゃ気が済まねえ」

「おっ、おねえさん」

「だがその前にだ。彼女たちの遺体を荼毘(だび)に付さなきゃな。このままだと牝牛ちゃんたち、肉屋に降ろされちまうから。おまえだって、そんなこと望まねえだろ?」


 俺は牝牛ちゃんの遺体を、おねえさんはサキュバスさんの遺体を、洞窟の奥へと集めた。

 おねえさん、人差し指を突き立てると、


「これ、使うの初めてなんだ。上手くいくといいんだけど」


 そう呟くと、無詠唱で指先から赤い炎を迸らせた。

 初めて見る、S級魔法使いの火炎魔法だった。

 炎は山と積まれた遺体に着火して、瞬時にどす黒い煙を立ち昇らせた。


「おい、煙に巻かれる前に早く逃げるぞ」


 俺とおねえさん、それと咲子。二人と一頭は一目散に走って洞窟の外へと躍り出た。

 一息つくと、俺はおねえさんを顧みた。


「おねえさん、やっぱ治癒師(ヒーラー)じゃなくて、魔法使いだったんですね?」

「あれ、おまえ、この格好見て、あたしのこと治癒師だと思ってたのか?」


 黒い三角帽子に黒いローブ、それに黒いマント。

 まあ、どう見ても魔法使いの恰好そのものなんだけど。


「最初に出会ったとき、治癒魔法使ってましたから。だから治癒師かと」

「あたし、治癒魔法も使える魔法使いなんだ。どうだ、超便利だろ?」

「ええ、これで鬼に金棒です!」


 俺はおねえさんと堅い握手を交わした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ