表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界最弱のニート様 敵は異世界最強の勇者様? 俺 死亡フラグ回避するために棚ぼた勇者めざします!  作者: 風まかせ三十郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/59

第03話 あっ、お客さん殺っちまったよ!

 うん、なんだ? 地面がモコモコしてるぞ。

 地面が盛り上がってきた。

 モグラだよね、モグラだよね?

 いや、ちょっと待て! モグラにしては大き過ぎる。

 

 なんだ、あの化け物!

 身体が透けてるんでスライムかと思ったけど、なんと単眼、単眼なんだよねえ。

 そんなもん見るの、ザク以来だぜ!

 ザクザクザクザクザク、お宝の山がザックザクってか?

 おまけにおっきな口開けて、鋭い牙なんか見え隠れしてるから、たぶん新種のスライムじゃねえかって気がするんだけど。

 

 スライムってさあ、なんかこう、もっと優しい生き物だよね?

 なんか勇者になぶり殺しにされるだけで、自らは決して相手を傷付けない。

 読者さんの中にさ、ゲーム開始一発目でスライムに殺られたやついる?

 あっ、おまえ。言っちゃなんだけど、生きてる価値ないわ。ニートランク最下位。最低ゲーマー決定ね。

(主人公に代わり幾重にもお詫び申し上げます。--作者)

 

 て、なんだよ! なんでスライムが両脇に古新聞の束抱えてんのよ!

 

「毎度ありぃ~」


 ええっ、彼女、なに普通に受け取ってんの!?

 なに計りで計量してんの!

 絶対おかしいよ! 

 異世界だって、それなりの常識ってもんがあるでしょうが……。

 スライムが新聞読む? 

 何の記事読むのよ?

 番組表? 社会面? スポーツ面? 家庭欄? 政治欄? 経済欄?

 あっ、わかった。囲碁将棋欄だ。……なわけ、ねえだろ!


「ええと、四キロだと、トイレットペーパー四つかティッシュペーパー二箱。どっちにします?」


 スライムのやつ、トイレットペーパー受け取りやがった。

 いったい何に使うのか。いや、疑問は尽きねえ。

 

「じゃあ、またよろしく」


 おい、行くんじゃねえよ!

 スライムは相手にしても、人間様は相手にできねえっていうのかよ!

 じょ、冗談じゃねえぞ!

 異世界じゃ、ニートはスライム以下なのか?

 俺ら、そこまで差別されなきゃいけねえのか!

 お~い、彼女、行かないでくれ~!

 

 心の叫びも虚しく、彼女は振り向いてくれなかった。

 いや、振り向いてくれたやつはいたんだよ。

 そうだ、あの単眼スライムだ。

 やろ~、素直に地下に帰ればいいものを、俺の方見て、なんか大量に(よだれ)を流してやがる。


 それって、俺のこと、餌としてみている。

 そういう解釈でいいのかな?

 異世界ではニートはスライムの餌。

 それって物凄く過酷な運命だと思いません?

 あの、もう少し人権尊重してくれるとありがたいんですけど。

 いや、だからお願い。そんな嬉しそうな目で、俺を見ないで。


 ああ、スライムのやつ、なんかナメクジの粘液みたいなもん引きながら、俺の方へにじり寄ってきやがる。

 異世界では、たかがスライム一匹がこれほどの脅威になろうとは……。

 俺は今、しみじみと実感しているよ。

 異世界って厳しいなあ~。

 

 とうとうスライムのやつ、俺の側まで来やがった。

 涎がポタポタと、俺の顔面に垂れてくる。

 やべ! こいつの唾液は硫酸かあああああ~~~~~! なんて驚いたりもしたけど、どうやら小ぎたねえだけで済んだようだ。

 でも、まあ、大きな口開けちゃって。

 あっ、こいつ、俺のこと、笑ってやがる。

 スライムにバカにされたら、ゲーマー、いや、人間終わってるよね。

 ああ、なんか生きる気力がなくなってきた。

 

 とうとうやつの牙が、俺の首筋に立てられた。

 そのままズボッと牙が突き刺されば、俺は出血多量でお陀仏……、なんだろうな。

 俺のニートな魂は、また煉獄へ送り返されるんだろうか?

 今度、女神様に出会ったら、少しはしおらしい態度をとって、資格(スキル)のひとつも頂きゃなきゃ……。


 運命が決まったあああああ~~~~~! と思ったその瞬間。

 眩い光が俺の目を射た。

 青白い聖なる光が単眼スライムの後頭部を直撃した。

 見事に砕け散ったスライムの上半身。

 やつの下半身だけが、透明な液体を四散させて前のめりに倒れた。

 

 俺は見た。

 100メートルほど先で、右手を突き出して颯爽(さっそう)と佇む、あのチリ紙交換のおねえさんの姿を。

 彼女は黒いマントを風に(なび)かせながら、俺の方へ近づいてくる。

 思わず見惚れてしまったね。

 なんか先ほどとはまったくの別人って感じだ。

 

「どうやら間に合ったようだな。もう少し助けるのが遅かったら、おまえ、食い殺されてたぞ」


 ほ、本当ですか?


 彼女、俺の傍らに屈み込むと、丈の短いスカートからパンツが見えるのもお構いなし。

 いやあ、いい()だなあ~。

 あっ、やべ、彼女に睨まれた。


「……」


 お礼が言いたいんだけど、口が利けないから……。

 彼女もそれを察したらしく、


「そうか、待ってな。今、治してやるから」


 右手を俺の咽喉の上にかざして、青白い光を照射した。

 とたんに潰れた咽喉が整復されて、俺は言葉を取り戻した。


「あの~、すみませんけど、その拡声器貸してもらえます? 咽喉の調子を確かめたいんで」

「ほいよ」

「ありがとうございます。では、あ~、あ~、マイクのテスト中テスト中。本日は晴天なり。咽喉の調子は最高だあ~。最高だあ~。あの、おねえさん」

「……はい?」

「一曲、歌ってもいいですか?」

「なにを?」

「残酷な天使のガーゼ。俺の持ち歌なんです」

「ああ、それはな、カラオケ屋に行ってからにしろ」

「あっ、はい。そうします」

「じゃあ、残りの部分も治癒するぞ」

「はい、お願いします!」

 

 彼女の(てのひら)から、再び青白い光が放たれた。


「あ~、ありがとう、おねえさん。あなたは命の恩人です」

「な~に、気にするな! これも商売だから」

「商売?」

「それでよ。肝心のブツはどこにある?」

「ブツって。あっ、もしかして、おねえさん、麻薬の売人なんじゃ」

「バカ野郎! あたしゃ、正規の古紙回収業者だ。ブツってのはなあ、古新聞、古雑誌の類を言うんだ。わかったか!」


……とは言われても、俺、その類の物はひとつも持ち合わせちゃいねえから。

 あっちの世界の俺の部屋には、マンガ雑誌、エロ本の類が山積みになってるんだけど。


「あの、今、持ち合わせがないんで。いずれあっちの世界に里帰りしたとき、必ず持ってきますから。それまでちょっと」

「なに? おまえ、治療代払わねえっていうのか?」

「いえ、そんなことは。いずれ必ず……」

「そんな口約束、信用できるかよ。ブツで払えねえなら、おまえの身体で払ってもらおうか」

「ええっ! ソープに身を沈めろと?」

「バカだろ? おまえ」

「……はい」

「よーし、いい子だ。わかったら、さっさとリヤカーを引きな!」

「あれ引くんですか? で、重量はいかほどで?」

「まあ、二百キロくらいかな」

「二百キロ!」

「なーに、すぐに慣れるさ。なんせ女のあたしにも引けるんだから」

「はあ」


 俺は言われるままに梶棒(かじぼう)に手をかけた。

 瞬間、リヤカーが尻餅をついて、俺を空中へ跳ね上げた。

 梶棒を離さなかったので、空中へダイブせずに済んだけど。

 思わず足をバタつかせたよ。

 彼女が梶棒に手をかけて、俺を地面へ引き下ろしてくれた。


「もっと重心を前へ、もっと前屈みに、そうだ。ほれ、引いてみろ」


 あっ、やった! リヤカーがスムーズに前へ進み出た。

 

「よし、その調子。町までしっかり引くんだぞ」

「へい、合点承知!」

「ちっ、お調子もんが」


 こうして俺は異世界における最初の危機を脱したわけだが……。

 はてさて、次はどうなることやら。先が思いやられるぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ