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色づく絆と結びの手  作者: 琴深矢 余暇
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第6話「ノーブル」

【冒険者・魔獣の等級】


基本的に冒険者と魔獣は『DからS』までの等級に分けられる


事実上の『最高ランクS』の上にハイエストクラスが用意され、ここに部類される冒険者は各支部の専属として高待遇と高ランクの依頼の受注が許される


魔獣にも例外として上の派生ランクが数個用意されている




第6話「ノーブル」




今歩く場所、間違いなく森であるのだが……


いや、確かに森であるのだが


「おいおい、これは流石におかしいだろ!?」


森林の街道を全力で走る。


「魔獣、追いかけてきてる」


「知ってる!さっきから、現在進行形で追いかけられてるよ!!」


背後から猛スピードで追いかけて来るのは、先程倒した狼型の魔獣達数十匹。


「ナハト、私は一人で走れる。離して」


「無茶言うな!それではぐれたら、今度こそ終わりだぞ!というより、そんな暇ねえよ」


片腕に抱えられて無表情なまま揺られる少女。

数分前、出現した魔獣を撃破後、森の中を歩いていると背後から猛スピードで走ってくる魔獣達、即座に少女を抱えて走り出して今に至る。


「逃げずに倒したらいいじゃん」


まあ、相手すればどうとでもなるが……


「さっきも言っただろ、事情があるんだ。そういう訳にはいかないんだよ」


とにかく、今は逃げることに集中だ。

町まで到着すれば結界もある。



走り始めて十分くらいたったが、狼共が執拗い!!


「というより、どれだけ執拗いんだ!!絶対に追いつけないんだから、いい加減に諦めろよ!!」


魔獣から逃げるためだけに魔力を使うのは癪だし、目的地までもう少しのはずなのだが……


「ナハト、前見て」


「は?前がどうし──」


視線を目に向けると、少し先から道が開けているのが分かる。


「おお、見えてきたッ!」


更に走るスピードを上げる。

すぐに道は開けて、目の前には町に入るための大きな門と、石造りで背の高い壁が左右に延びて広がっている。


ノーブルの外壁と門だ。


武装した門番が魔獣の群れに驚愕する。


「さっさと閉めろ!」


門番はすぐに大門を閉め始める。

間に合わないか。このままでは、締め出される。

仕方がない。


足に魔力を集中させて脚力を重点強化!


「っ!」


一気に足に力を込めて、姿が残像となって霞む程の程の速度で、締まりかけの門に駆け込む。

オレたちが抜けたと同時に、門は固く閉ざされた。


「ふぅ……」


門が魔獣たちに破られる様子がないことがないことから、結界も問題なく作動したみたいだ。なんとか逃れられたか。


「大丈夫でしたか!?」


門番の一人がこちらに駆け寄ってくる。


「ああ、問題ないよ。お互い無事でよかった」


少女を下ろしつつ、懐から一枚の紙きれを出す。


「ほれ、これで身分証明とかは大丈夫だろ?」


「依頼書ですか……拝見します」


門番は紙を一通り読み終えて、オレに返す。


「問題ありません。ですが、現在マスターは少々出ておりまして――」


「ああ、大丈夫だ。こっちで適当に待つから」


そう言うと、門番は納得したのか、一礼して仕事に戻っていった。


「待たせたな。とりあえず――」


向き直り少女に声をかけようとして、オレは言葉を止めてしまった。


「……」


いや、止めざる負えなかった。


白銀色の髪をなびかせて賑わいの街並みを眺める瞳は、今までに見せてきたものよりも、どこか儚げで、それでいてそれは、澄み切っているどころか色づいている。


普段から無表情で、感情を全く表に出さない少女

その面影はない。普通の女の子がそこにいる。


『ノーブル』、ここは国内でも有数の魔術研究都市だ。そして、それと共に人の行き交いも多い。人の集まる所にはそれ相応の物が必要とされ需要が高まる。比例して物品の流通、やりとりも活発になる。商業の町としても一目置かれているくらいなのだから、それは相当な物だと評価できよう。その実たる光景が、少女の心を少しでも動かした事に、一体そこになんの不条理がある?


「何処にいるの」


「え?」


急に聞かれて間の抜けた声を出してしまう。

依頼主の事だろう。彼女からすれば、確かに大切な事だ。


「ああ、あいつなら、ちょっと出払ってるみたいでな」


すぐに会えると本人は思っていたのだろう。しょんぼりとしてしまう。


伝えてなかったオレにも責任はあるか……


思案して、暇つぶしの案を検討する。

数個あるうちの中から、何個かピックアップして決定。


「暇なまま手持ち無沙汰もなんだし、少し町でも巡ってみるか」


幸いオレは何度もこの町に来たことがあるので、すぐにでも案内できる。


「……」


じっと、澄み切った瞳がオレを見つめる。


「ダメか?」


その問いに彼女は首を横に振る。


「……そうする」


相変わらず無表情だ。

なにを考えているのかは、わからないが、嫌というわけではないらしい。


「そ、そうか。じゃあ、行くか」


全く少女一人相手に何してんだか。


自らの滑稽さに苦笑しつつ、町の案内を開始した。





ある建物の前で立ち止まり、口を開く。


「ここがギルドだ。知っての通り、冒険者の証を持つ人間が、自分のランクに応じた依頼を受けて仕事をこなす。ここには、その上で欠かせない寄り合い所の役割がある」


簡単に説明を終わらせて、建物内に入る。

中は石造りが基本のレイアウトで、酒場がメインになっている。その奥に受付と掲示板があり、頻繁に冒険者や職員が出入りしている。


「街中よりも賑やか」


彼女の素直な感想だが、そういうのも納得だ。

酒場は仕事をこなした冒険者、更には負傷しながらも高額の報奨を手に入れたハイエストランカーなどが奮って酒を酌み交わす。

賑やかなのは当たり前、酒は通過儀礼だし、バカ騒ぎするのは酒場における標準ルールだ。


「この町は、芳醇な魔力を含む森のただ中に位置するからな。必然と討伐依頼の数は多くなるし、手練れの冒険者も多く集う。それに、今日は魔獣の発生も多かっただろ?そういう日はこうして、いつも以上に賑やかになるものさ」


彼女はその言葉を聞いて、改めてギルドの中を見渡した。

少女には人並みの価値観、倫理観、感情が欠如している可能性がある。……という風に聞いていたのだが、どうやらその心配はなさそうだ。


話し声を聞こえたのか、近くの席で酒を飲んでいた冒険者の一人がこちらに歩いてきた。

男は屈強な大男で、頑強な装備を身につけ強面で睨みをきかせてくる。


「……」


黙ってこちらを見ている男はやがて、口を開く。


「あんた……ナハトさんじゃないですか!?お久しぶりです!!」


男は腰を低くして頭を下げた。

この男はレイガ・ハーヴェスト、ギルド協会ノーブル支部の専属冒険者にして、高ランクの討伐依頼の受注が許された。ハイエストランカーに数えられる冒険者の一人だ。

事実、実力は支部内でも指折りクラスのもので、豪快で大らかな性格は後輩冒険者からも人気が厚い。


「おう、レイガ。今日は随分と羽振りがいいみたいだな?」


レイガとは少し前にこの町に来た時に知り合って、仲良くなった。

まあ、立場上の関係で顔が広かったというのもあるのだが……

一番の理由は、魔獣に殺されかけてたこいつを助けたことだろう。敬語もその頃からだ。


「そうなんですよ!今朝から魔獣共がわんさか狩れまして、良ければ一杯飲みませんか?」


いつの間にか少女は後ろに隠れてしまっている。てか、意外と可愛い反応するな。


「いや、今日は先約があるんだ。また今度な」


男がオレの後ろにいる少女に目を向けた。


「先約ですか。へえ、可愛い娘さんじゃないですか?まさか彼女さん、ですかい?」


また、この男は余計なことを……


「おい、言っとくがこいつはお前よりも強いぜ?」


レイガは面白冗談でも聞いたように「がはは」と豪快に笑う。

だが、事実この少女の身体能力は明らかに人の範疇に超えている。


「そりゃ、流石に冗談だぜ!ナハトさん!」


「むかっ……」


明らかに馬鹿にするような物言いに、少女はいつの間にか前に出てレイガをにらみつける。

とは言っても、基本は無表情なのでじっと見ているようにしか見えないのだが……


「おう、やんのか嬢ちゃん?」


また面白がりやがって


「おい、レイガ」


「ナハトは黙ってて」


止めに入ろうとしたら、彼女に逆に制される。


「そこまで言うのなら……一発、良いんだよね?」


いや、口調変わり過ぎじゃないか!?

普通に怖いんだけど……


「おう、いいぜ。一発受けてやるよ」


そう言って、自身の頬を指さし挑発。


「オレはもう知らないぞ」


もう止められないと判断して、見物に回る。


「後悔するよ?」


「がはは、やれるもんならな?」


レイガの度重なる挑発に、少女は遂に堪忍袋の緒が切れたのか、拳を固く握りしめた。

そして――


「ふぅッ!」


短く息を吐いて跳躍し、大男の顔面に拳をめり込ませ。


「とべ」


一言の下にレイガをぶっ飛ばし、まるで釘でも刺すように、頭から天井にめり込ませた。……魔力での強化無しで。


「相変わらず……」


とんでもない怪力と瞬発力だな。

ほれ見て見ろ。酒場が騒然としてるぞ?


「いこ、ナハト」


「あ、ああ、そうだな」


酒場を出ていく少女の後に続くようにして、オレはギルドを後にした。

最近、調子があがってきたのでちょっとずつ書いて行こうともいます!!

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