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色づく絆と結びの手  作者: 琴深矢 余暇
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第5話「魔との遭遇」

遅れてしまってすみません!!

【冒険者ギルド】

魔獣討伐や採集、要人の護衛など、数々の依頼をこなし報奨を得ることを生業とする冒険者達、その総統治を役目とする組合


依頼の受け渡し、魔獣討伐による産物の鑑定、などなどの雑務が主な仕事





第5話「魔との遭遇」




平原を歩くこと、半日と数時間、ようやく目的の町の数百メートル圏内まで来ていた。


「ナハト、これは町じゃなくて、森」


「いや、さすがに見りゃ分かるよ」


そう正面の行く手にあるのは、生い茂る森林。

町はこの森を踏破した先にあるのだ。


「町はこの先だよ。とは言っても、流石に公用の街道が敷かれてるから、突破するのにこれと言って、それらしい苦労は無いんだが……」


ひとつ危険があるとするならば……


「けど?」


「……魔獣だよ。今回、平原ではあまり見かけなかったが、深い森や標高の高い山、自然の恵みが色濃い場所ほど奴らはいる」


魔力とは自然の恵みである。

自然が濃い場所には当然、芳醇な魔力が満ち満ちているわけだ。そして、そう言った場所の濃度の高い魔力に当てられ、変質、進化した動物や獣のことを総称して魔獣という。


「平原や町はそこまで魔力濃度が高い訳じゃないからな。奴らは奴らで、わざわざそんな場所には住まないし現れない。滅多なことでも無ければ発生もしないしな」


さて、一通りの解説も終えたことだし、そろそろ行くか


「まあ、そんな強力なのは街道沿いには出てこないはずだ。気楽にいけばいい」


そう言って、森に通された街道に入っていく。

そして、少女も後に付いてくる。


「魔獣とは、戦ったことあるよ」


戦ったことがある。ねえ……


大方、研究所での実験かなにかだろう。彼女の面持ちや仕草に、どことなく戦闘慣れした様子を感じるのは、そういう背景が起因しているということか。


「そうか。それは心強いな」


思いこそすれ。

きっと、そういうことは言うべきではない。この場での追及や同情は意味をなさないに決まってるし、なにより本人がそこまで意識に置いているわけでもない。


だからこそ、少しの笑みで適当に誤魔化す。





木洩れ日が心地いい森林の街道を進むこと十数分。


「ナハト」


少女が立ち止まる。

しかし、その理由は明確だ。


「ああ、お出ましだな」


木陰から、草むらから、狼が姿を現す。

見た感じは十数匹、群れで来やがったな。

最近は季節の移り変わりで、魔獣被害も増えているとは聞いていたが


「ちょっと数が多いな。お前は――」


「さがっていろ」と、言おうとした時には、すでに疾風と共に少女は駆け抜けていた。


『ガオォオッ!!』


少女の接近を攻撃と受け取った狼たちが、一斉に飛びかかる。


「おい、何やってんだ!さがれ!」


割って入ろうと俺が動き出す前に、少女は動いていた。


「――ッ!!」


突き出された拳が、狼の胴体部分に直撃する。


「なっ……」


諸に受けた狼は血しぶきを散らして吹き飛んだ。


殴った衝撃だけで、この威力かよ……


更に襲い掛かってくる狼を次々と屠っていく。

全て一撃で……


「出会った時の一撃から、察してはいたが」


魔力を使っている様子がないことから、素の腕力と身体能力だけでやっているのは確かだ。しかし、普通の人間の能力(スペック)で出来る芸当ではないはずなのだが……


「これで、最後……」


残った一体を手早く片付けて、こちらに戻ってきた。


「終わったよ」


全くの無表情。返り血で一部赤く染まってしまった、白銀の髪が揺れる。


「おう、見てたよ。けど、一人で魔獣の群れに突っ込むのは褒められたことじゃない。次からは気を付けるようにな?」


彼女の実力からするに、相当な事でもない限り負けることなどないだろう。しかし、それこれとはまた別の話なので、ちゃんと言っておく必要がある。


「……ごめんなさい」


一瞬の間に言いたいことを飲み込んで、素直に言う事を聞く。

しょんぼりしているのを見ると、少しばかり心がチクリと痛む。

純粋で素直な子だが、やはり年相応か。


「いいんだよ。それに、戦い方自体に指摘するところはなかった。よく頑張ったな」


労って、頭をなでてやると、くすぐったそうに目を細める。


「血を落としてやるから、少しじっとしててくれ」


少女から少し離れて、指をパチンと鳴らす。

白銀の髪がふわりと揺らぎ、次の時には返り血は全て消える。


「……魔術?じゃない」


不思議そうな顔をして、自身の体を見回す。


「応用だよ。服や髪についた血を魔力に逆変換した。基礎の術式も単調だから、覚えればすぐにできる」


血というのは生命活動の上で必要不可欠のものだ。泥などの自然由来の汚れを落とす際は普通に魔術を使用するが、血などの内包魔力の多い物質はそのまま、空間魔力に還す事が出来る。

この方法なら、術式だけで返り血などを落とせるので、魔力の節約にもなる。


「ふぅん……」


聞いて納得したのか、はたまた興味の対象から外れたのか、血色の薄い無表情に戻る。


「さてと、思わぬ邪魔が入ったけど行くか」


互いに目立った怪我も無い事だ。

魔獣は出たが、このまま進んでも大丈夫だろう。


「ナハト、討伐の証、取らなくてもいいの?」


少女が無表情のまま魔獣の死体を指さす。


「ああ、オレにも少し事情があってな。にしても、討伐の証なんて物をよく知ってるな?」


討伐の証とは、主に魔獣を倒した場合、それを証明するために提示する物の事だ。基本はこれがないと討伐扱いにはならないから、依頼を達成できない仕組みになっている。

魔獣の『核』と呼ばれるものがそれにあたるのだが、これに関しては話すと長くなるのでまたに機会にしよう。


幸い、魔獣は解体しなくても腐敗する前に空間魔力に還る。だから、放置しても問題ない。


「研究所に居た時に教えられた。これから、必要になるかもしれないことだからって」


なるほど。

確かに、理にかなった知識だ。


「そうだな。確かにお前の腕を考えれば、冒険者になるのも悪くはないかもな」







少女と共に、目的地に向かって歩を進める。


「町には大きな魔術学院もある。どうせなら、見学させてもらうのもいいか」


聞こえないくらいの声で呟く。

この森もそうだが、自然の濃い場所は魔力が集まる分、魔術の研究に置いては大いに重要な拠点となる。

そして、そういう直近の場所ほど、若き魔術師を育てるのに有効かつ効果的な場所もない。


「学院に通う『この子』か、きっと、あいつは喜ぶだろうな」


約束は果たす。

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