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色づく絆と結びの手  作者: 琴深矢 余暇
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第24話「抜き放たれる覚悟」


全速力で遺跡内を走る。


「グオ゛ォォォォォ!!」


野太い雄叫びを上げながら、怪物が背後から迫る。

その大剣を振るわれる度に紙一重で躱し、また駆ける。ミードを抱いたこの状況で、更に明らかに格上の魔獣――勝てる相手じゃない。それうなれば、逃げに徹するしか取れる手段は存在しない。


遺跡は入り組んでいる分、翻弄することに掛けては事欠かない。外に出られれば、セレシアさんが何とか――


「いや、それは駄目だ」


脳裏によぎった考えを即座に否定する。

セレシアは今、魔獣の大群と戦っている。こんな奴を押し付けたら、どんなことになるかわからない。……という事は、このまま時間稼ぎを続けるしかない。だけど……


「ッ」


大剣が横なぎに振るわれたのを姿勢を低くして回避する。いつまでも紙一重で攻撃を回避し続けるのは現実的じゃない。それもこの速度の物を感覚だけで見極めなければならないのだから体力と集中力だって刻一刻と削られて行く。


八方塞がりの遺跡内、いったいどうすればこの場を切り抜けられる?


「うぅ……ルクス、兄ちゃん?」


そんな中、ミードが腕の中で目を覚ます。


「ミード君、目を覚ましたみたいだね――ッ!」


行き止まりに差し掛かり、壁を蹴って魔獣の上を飛び越える。


「ルクス兄ちゃん、何してるの?」


「ちょっとね。まずい状況なんだ」


そう言われてミードの視線が追ってくる魔獣を捉える。


「な、なんだよあいつ!?」


さっきよりも強くミードがしがみつく。怖いだろうな、そりゃそうだ。僕だって怖い。


「怖いよ……ルクス兄ちゃん、早くあいつを倒してよ……」


目を瞑って震える少年。励ましの言葉の一つでもかけてあげたい。でも、そんな暇もないくらい奴の攻撃は熾烈だ。このままでは、持たない。


どうすれば、ミード君を生かすことができる?

このままでは二人とも死ぬ。それならば、僕が下すべき判断は……


「……やるしかないか」


頭に浮かんだ一つの解。それが合っているのかはわからない。けれど、今はこれしかない。


「ミード君、僕が今からいうことをよく聞くんだ」


「え?」


僕はそれをミードに話した。







ルクスは遺跡の中を疾走する。だが、その足は確かに出口へと向かっていた。


『ミード君、僕が君を出口まで送り届ける。そしたら僕は君を降ろして、奴と戦う。君は全力で村まで逃げるんだ』


ミードを逃がし、巨体と相対する。それがルクスの取った最善手だった。


『俺、無理だよ。怖くて、動けっこないよ!』


少年は恐怖に竦んでいた。けれど、ルクスは強く彼を鼓舞した。


『大丈夫、僕がついてる。君は僕みたいに強くなるんだろう?なら、きっと走れるよ』


少年にとって、ルクスは英雄に等しい憧れの存在だった。ルクスに取ってそうだったように、彼にとってはルクスがそうだったのだ。だからこそ、少年は決意した。


『わかった。やってみるよ』


その時、ルクスは優しく笑い返した。もうじき目的の場所に到着する。


「よし、少しだけど距離も離れてる」


背後の怪物を一瞥して、すぐに前を向く。見え始めた外の景色、目線の先にあるのはこの遺跡の出口だ。ルクスは足にブレーキをかけてミードを降す。


「行け、ミード!」


少年は出口に向かって走り出した。


「ルクス兄ちゃん、絶対に帰ってきてよ!」


ルクスは笑って返した。


「勿論、村で待っていて」


そして、ルクスは向かってくる巨体を見据えた。遺跡そのものを揺らすほどの踏み込み、これまで戦ったどんな魔獣よりも強い怪物。けれど、ここで立ち向かわずして、剣を取らずしてどうすれば強くなんてなれるんだ。

ルクスは向かってくる怪物を見据えて、腰の剣に手をかける。


「やるしかない。――力を貸して!」


覚悟を決めて、蒼い鞘から直剣を抜き放った。

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