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色づく絆と結びの手  作者: 琴深矢 余暇
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第20話「セレシアによる魔術講座」


「いやいや、無理ですから!もっと、やり方とか具体的な何かを教えてくださいよ!」


見様見真似で出来る人が居るとか、確かに言ってたけど……まさか、僕にもそれを要求するとは思わなかった。


「大丈夫だって、君は素質があるからこの程度なら感覚でやった方が速いよ。ほら、つべこべ言わないでやってみる。出来なかったらやり方を教えてあげる」


この人はおしとやかで丁寧そうに見えて実は大雑把だったりするのだろうか。しかし、やらなければ本当に教えてくれなそうだ。

仕方がない。――やろう。


僕は覚悟を決めて、さっきのセレシアの魔術を真似てみる。


「……」


目を閉じて、集中する。

セレシアの言っていた体内魔力とは、要するに生命力そのものだ。つまりは手足を動かすのと同じように、本当に感覚のみでどうにか出来るのではないだろうか。

体内を巡る血潮を起点に、その認識を魔力と置換してイメージする。


「イメージ、イメージ……」


体内を巡る命の力、それに方向性を与えて命令を送る。

身体能力をより強く。


ルクスはより高みをイメージした。



セレシアはそんなルクスを見て、面白そうに口角を上げていた。


「――へぇ、やっぱり面白いね」


セレシアの目には見えていた。ルクスの体から魔力が高まりつつあるのが……それも常人の何倍もの速度と密度で上がってきている。


本当は、ルクスに初歩の強化魔術など教える必要はなかった。

だって、彼は元からその程度のことは出来ていたのだから……私が森の中で魔獣討伐中の彼に会った時、彼はあきらかに人を越えた領域の力を引き出していた。恐らく無意識だろう。本人はそれを息をするように行っていたので、魔力操作による作用だとは気が付いていなかった。

だから、やり方を自覚させることが『これ』の目的なのだ。


「ルクス君、君はきっと凄い使い手になれる。もしかしたら、私達(・・)すら越えた……」


この時、セレシアは目の前の事に夢中になって肝心なことを失念していた。

常人を越えた魔力、それが高まり続けている。この状況が、どういうことを意味するのか――


「……あれ?」


気付くのがあと数秒、ほんの少し早ければ良かったのだろう。

セレシアはそこで、ようやく気が付いたのだ。ルクスの魔力が高まりすぎていることに……


「待って、ルクス君やりすぎ――」


ルクスの足元の地形が音を立てて歪む。身体からは黒々とした気配が立ち込めて、尚もそれは高まり続けている。

セレシアは言葉よりも先にやるべきことを実行に移した。


「――我が名において命ずる、その身に纏う力を霧散させなさい。……以下、詠唱省略『マギアデリート』発動」


即時に組み上がった魔術がルクスを囲うように展開される。そして、次の瞬間、ルクスの周囲の環境の影響を及ぼすほどの魔力は術式に吸われるように霧散していった。


「え?」


ルクスは何が起きたのかわからない様な表情でセレシアを見た。

だが、一番驚いていたのはセレシアだった。


何という体内魔力量……感覚的に発現させただけでこれなんて、あのまま解除してなかったらどうなっていたか……


「あぁ、ごめん。ちょっと君の体内魔力が予想よりも多かったから、私の魔術で止めさせてもらったよ」


「えっと、それってつまり……」


ルクスはいまいち理解しきれていないようだった。しかし、これは流石に野放しにしておくことはできない問題になった。これほどの素質の持ち主、世界中を探したって――それこそ魔法使い(・・・・)にだって匹敵する潜在能力だ。


「要するに、君の体内魔力が多過ぎて、今のままじゃ解放するのはちょっと危険ってことかな。君、本当に何者なの?」


「僕にそんな力が……ただの村人ですよ。少なくとも僕はそう思ってます」


彼が嘘をついているようには見えない。まあ、元からそんなことは疑っていないけど……


「そうだよね。――うん、良いよ。私は君の言葉を信じる。君のその力、ちゃんと使いこなせるようにしてあげる」


セレシアはそう言って、手を差し出した。


「――はい!」


ルクスはその手を取った。







森の奥深く最奥――

そこにある遺跡。暗く淀んだ空気の先に在るそれは揺れ動く。


「コノ――マリョク……」

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