第2話「始・第二章」
※冒頭に世界観の説明部分を追加しました
一応、読まなくても大丈夫なようには作ってあるので、気付いた方は補足程度にどうぞ
この世界は三つの大きな国を基盤に出来ていた。
宗教により栄えた国、豊富な資源などにより栄えた国、類まれな技術力により栄えた国。
そして、その大国のどれも、全世界において重要視される無限の探究【魔術】、空間に漂う万能の自然エネルギー、魔力を用い、特殊な技法で構築された術式に流すことによってあらゆる万象を織り成す。それは、生活の場から職の場に至るまであらゆる分野で広く活用されている。
動物の変異体である魔獣、冒険者、そして魔術の権威の頂点たる【賢者】、そんな存在が世に知れ渡るこの世界で、物語は始まった。
■
目の前の男。青年だ。
私よりも年上だと思う。紺色の髪、まるで黒魔導士のような印象を受ける漆黒のコート、そしてズボン。所々に赤色のアクセントがあるので、一色ではないけれど、そのいでたちからどういう人間なのかも判別できた。
男は、私の拳をいとも簡単に受け止めて、ずっと余裕な感じを崩さない。
普通の人は、私には絶対にかなわないはずなのに、一体何者なのだろうか……
第2話「始・第二章」
建物を出て、暗闇から日の下に出る。
「ああ、その、連れ出しておいて悪いんだが」
オレは傍らに居る無表情な少女に、申し訳なさそうに言う。
「その格好、どうにかしたほうがいいよな?」
少女は首をかしげる。
相変わらずの無表情で、疑問符を浮かべている。
「……私、ずっと、この格好だった」
なるほど、他のかっこうなどしたことが無いから、わからないと
「わかった。じゃあ、まずは服を買わないとな?」
身体の至る所にあった傷は、粗方治した。だが、この非常によろしくない格好まではどうにもできていない。
ぼろ衣は至る所が破れている。大事な部分は何とか隠れているものの、素肌がかなり露出しているこの状態のままでは、あまりにもかわいそうだ。
「私は、気にしない」
物を買う。という単語に気を遣ったのだろうか、そんな事を言う。
「気にしてくれ。女の子がそういう格好をしているのは、良くない事なんだ」
念を押す。こういうことは、まず感覚として持ってもらわないとだめだ。
そう言えば傷を治す時に、服を脱いで裸体を男であるオレに見せる時も、この子は全く恥じらいが無かった。
年齢的にはすでに、そういう羞恥的な感情は持っていて自然のはずだ。
確かに、その時点では気にも留めなかったが、恐らくそういうことを意識できるような環境にはいなかったのだろう。
「ナハトが、そういうなら、そうする」
開講早々、殴りかかってきた少女だが、心を開けばかなり純粋でいい子だというのがわかる。
名前を出して事情を説明しただけでこれなのだから、この子の保護を依頼した主であるミサ・ハート、彼女は、相当になつかれていたのだろう。
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近くの服屋に少女を連れていき、適当な服を誂える。
まあ、流石に下着などは店員に見繕って貰ったが……
オレのコートを貸したとは言っても、こんな姿の少女を街頭のもとに連れまわすのは非常に心が痛むからな。これで、少しはマシな格好になるだろう。
「……これからも、大変そうだな」
この貞操観念の低さだ。一から一般常識を教えるのは、相当に骨だろう。
そんな事を思いながら、試着室の前で着替え終わりを待つ。
「な、なはと……」
すると、か細い声が聞こえてきた。
視線を移すと、試着室のカーテンの隙間から、少女が小さく顔を出している。
「おう、どうかしたのか?」
「お願い。助けて。入って、来て」
「ん?」
何事かと思い、周りを確認してからカーテンの隙間から覗く。
「ああ、なるほど……」
そうだ、この子は一般常識を知識程度にしか知らない。
とうぜん、女性用の服の着方ひとつとっても同じことだろう。
有り体いうと、服が着方がわからず結局オレを呼ぶしかなくなった。ほぼ裸体の少女が助けを求めている。こんな感じだ。
「でも、なあ」
助けてやりたいのはやまやまだが、さすがに男のオレが女の子の試着を手伝う訳には……
別に年下の少女相手に欲情する事などないが、周りの視線が痛すぎる。
「店員を呼んでくるから、ちょっと待って――」
なんとか打開案をひねり出す。
近くの店員を探しに行こうとすると、服の袖をつかまれる。
「どこに、行くの?」
「いや、だから店員を呼びに」
「どこかに、行くの?」
上目遣いで、そう問われる。
心がぎしりと痛む。
「いや、どこにも行かない」
そうして、オレは決意した。
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「はぁ、疲れた」
あの後、何とか声を上げて店の人を呼び、服を着させる事が出来た。
まあ、そんな苦労も一興というものか。
まるで、幼い娘でも持った気分だが
「ナハト、ごめん」
「いや、お前は悪くない。それより、似合ってるぜ。その服」
オレは女の子に着せる服の知識など皆無なので、動きやすさを重視した。わりと無難なものを選んだつもりだったのだが、これが彼女にはかなり相性が良かった。
まずは基本となるワイシャツに、白を基調とした上着と薄めの生地を使用した外套、そして紺色のショートパンツ。
サイズが少し大き目かもしれないが、これからも成長するだろうから、このくらいが妥当だ。
全体的に白というのが、彼女の肌や髪の色にもマッチしている。
まあ、少し幼いが元々かなりの美人さんだ。何を着せても似合うことだろう。
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「さてと、服も買った事だし、そろそろ行かなきゃな」
町にある適当な酒場に入って、テーブルに地図を広げる。
「これ、この国の地図、だよね?」
少女が顔をのぞかせる。
「ああ、オレたちが今いるのはここだ」
広大な土地を誇る国家エレム。その全体図を大まかに書き記した地図、その一角を指さす。
街道の拠点、オフ・ホロル。
この町はそこまで大きくはないものの、国境までの道中にあるため、よく旅人などが拠点として使用する。
中央都市には及ばないが、それでも国が認定した町にあたるため、街道の整備もしっかりしている。
「これから向かうのは、この町だ」
更に目的地の町を指差す。
この町は比較的に南東に位置するのだが、目的地は北西に向かう。森に囲まれた一角に位置する場所。
中央都市とこの町を点として、線でつないだ中間点、そこに深い森林に囲まれながら商業都市に指定された町がある。
魔術研究の拠点、ノーブル。
詳しい概要は着いたらわかるので省くが、そこに今回の依頼主が居る。
「何日くらい、かかるの?」
「オレが来るときは全力で走って半日だったから、ぶっ通しで歩けば、大体二日程度だな」
「馬車とか、魔力車は使わないの?」
確かに、魔力を利用して走る四輪や、馬車は確かに歩きよりも楽だが、今回ばかりはそれができない。
「途中で橋が崩れてて、いま、その二つは走ってすらない状況なんだ」
全く、タイミングが悪いたらありはしない。
「とにかく、悠長なことも言ってられないからな。すぐにでも出発する必要がある」
地図をたたんでしまう。
「ほら、行くぞ」
わがごとながら不愛想な言い方だ。
でも、少女はオレの手を握ってうなずく。
「うん、わかった」
そうして、酒場を出た。
ほそぼそとやっていきたいとおもいます。
次回投稿は7月13日です!




