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色づく絆と結びの手  作者: 琴深矢 余暇
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第15話「もう一つの始まり」

ブラウザバックおすすめです

今回から暴走します


エレム国 辺境【海辺の村 イル・マリー】


海のさざめきと潮風が流れる村、イル・マリー村。

エレムの辺境に位置し、大きな町からも遠い。だからこそ、この村の人々はある一部を除いて自給自足を余儀なくされて生きている。




第15話「もう一つ」




そんな人々が助け合って生きる村、その中の一つの家。そこに住む一人の少年、ルクス・S・ファンタズムは現在朝食の準備をしていた。

混じり気無い黒髪を揺らして味を確認する。


「うん、悪くないかな」


とは言っても、この家に彼以外の住人は居ない。

父親は物心ついてすぐ、母親も二年ほど前に急病を患い帰らぬ人となっていた。そんな彼は今、村の何でも屋を買って出ることで生計を立てている。


朝早くに起床、朝食を軽く済ませてから準備をして、周りの家からも生活音が聞こえ始める時間帯には家を出る。


そんな生活を母が死んでからの二年間は続けていた。



そして今日も玄関口に立ち、扉を開ける。


「行ってきます」


帰ってくる言葉はないけれど、確かな面影を感じる家をボクはあとにする。




村を歩いて目的地を目指す。

今日の仕事は薬屋のクーリエおばさんからの薬草採取の依頼だった。これから、薬屋によって依頼の内容を確認しようというところだ。


「クーリエおばさん、いますかー!」


二階建ての古屋の戸をノックして声をあげると、間もなくして家の中から足音が聞こえてから戸が開いた。


「おお、朝早くから誰かと思えば、ルクス坊やじゃないかい?」


見知った老婆は柔らかい笑みを浮かべて、迎えてくれた。


「おはようございます。今日の薬草採取依頼の確認をしにきました」


「そういえば今日だったねぇ。本当なら自分で取りに行きたいんだが、こうも年を取ると体がどうもいう事を聞かない」


腰を叩きながらそう言うが、ボクが幼かった頃から何かとよくしてもらっていたらしいので、これくらいはお安い御用だ。


「いえ、本当なら無償で請け負いたいくらいなんですけど……」


「若いもんにただ働きさせるほど歳は取っちゃいないよ。――確認だったねぇ?ほれ、控えだよ」


クーリエおばさんは数種の薬草とその分量が書かれた紙を手渡す。


「ありがとうございます。それでは、夕方までには戻りますので」


「気を付けて行っておいでねぇ」


クーリエおばさんがそう言ったのを聞いて、ボクは薬屋をあとにした。







村を出て外れにある森。

その浅い辺りに薬草は生えている。何度も来ているから手慣れたもので、昼過ぎにはだいたい集め終わる。


「さてと、はじめよう」


森の中を散策しながら、見つけた薬草を取って鞄の中に入れていく。


そうして、数時間が経過した時の出来事だった。


「……空が曇ってきた」


見上げるとまだ本格的な雨雲ではないものの、白く薄いベールが空を覆い始めていた。更に空気の湿気も強い。振り出す可能性が高い証拠だ。


「集まった数は半分くらい。すぐには帰れそうにはないかな」


森の中なので多少の雨なら木々が傘になってくれる。なので、別段採取を続行できないわけでもない。

風は比較的に落ち着いているので、大事に至るような雨足でもないだろうし依頼を後日に持ちこせば雨後の森の状態がどう変化するかもわからない。


「急ごう」


足取りを早めて薬草を探す。



■更に数時間後……



「マジですか」


ボクは途方に暮れていた。

他と比べて少し大きめの木に寄りかかって、降りしきる雨で霧がかった森の情景を見つめている。


雨はボクの予想とは反して、大雨に類されるものであった。


当然、薬草集めの続行なんて無理だし、帰ろうにも雨脚が強すぎて危険で動けない。効率を上げる為にいつもよりも深い部分まで潜って来たのが仇になった。


「野宿もあり得ますね。これは……」


空の様子からしてもすぐに弱まるような雨でもなさそうだ。

ため息をつく。一応、非常用に一晩分の食料など野宿の用意などは持参しているが憂鬱な気分なのは間違いない。


魔獣が出ると面倒なので、遭遇がほとんどない辺りまでは移動してきたがそれだけでビショビショになったから体温も下がり始める。


「これからは、横着せずに帰るべきですね」


予兆など所詮は予想にすぎないということがよく分かった。

枝にかけて乾くのを待つ上着も、この湿度では無理がある。


手持ち無沙汰になって、ボクは目を閉じた。


眠るわけではない。周囲の様子を音の反響と空気感で探っているのだ。

雨の日は水音で色んなことがわかる。周囲の動物、枝葉の間隔、地面のぬかるみ具合、こういった周囲の状況を読み取って当てる遊びを小さいころによく母としていた。


だから、ボクは小さいころ雨が好きな少年だった。


この遊びも結局は母の全戦全勝だった。しかし、今となっては競う相手もいないのでこうして暇つぶしに行う程度になってしまった。



感覚が自然に溶け込んでいく。むしろ霧がかった景色を目で確認するよりも鮮明に周りの状況がわかる。どんどん、その距離を広げていって――


「――ん、今の音」


ボクは妙な気配を感じ取る。いや、この場合はあるはずのない気配を言った方がいいだろう。


「人、こんな大雨の森に?」


それは人の気配だった。思い違いの場合もあるけど、確かな感覚だったからほぼ間違いない。距離はだいたい十分歩くていどだ。


「村の木こりの人かもしれない。それなら、合流して一緒に居た方がいいですよね」


外部の人間の可能性も考えるべきだろうが、こんな辺境で違法人が欲しくなるような資源もない場所に好んで来る者は居ない。


立ち上がり、上着を回収して歩き始める。


ぬかるみに足を取られないように慎重に進んで、着々と人のいる場所に近付いて行く。

十数分ほど歩いて、少し草木が濃い場所に差し掛かってその先に人がいるのをようやく確信する。


「く、枝が刺さるな」


上着は鞄の中にいれてあるので必然的に肌を守るものが少なく、鋭い枝などが時々ささって痛い。しかし、この程度は慣れっこなので気にせず進み、やっと草むらの終わりが見えると同時に人影がちらついた。


姿が見えて安心したのか足取りが軽くなり、一気に草むらを突き抜ける。


「あの――」


そして、遂に草むらを抜けてその人の姿を捉え、そして勢い余って声までかけてしまう。


「え?」


声に気がついてその人がこちらを見た。

そして、顔や外見を正しく認識した瞬間にボクは固まった。



それはボクと同じか、すこし年上くらいの少女だった。

桜色の髪は背中に届くくらいの長さで、肌は健康的な乳白色、整った顔立ちは創作物のソレと言われても疑いないくらい理想的な美しさを誇っている。シャツやスカートなどは雨で濡れて肌に張り付き、体のラインをより鮮明にする。

更には深く蒼い碧眼、これだけの特徴を見れば一発で村の人じゃないのはわかる。


そして、その事実にボクは戸惑う。


「あ、いや、えっとその……」


まさか、外の人だとは思わなかった。それに情けない事に自分は女の人に免疫はなく、今の水も滴る煽情的な彼女の立ち姿にどうしたら良いものかと分からない始末だ。

挙動不審すぎて警戒されてもおかしくない。はやく事情を説明しなければ――


しかし、その場に訪れた何とも言えない空気を断ち切ったのは慌てふためく自分ではなく、相手の少女だった。


「君、この辺りに住んでる人だよね?私は旅をしている者なんだけど、森を進んでいたらすっかり大雨に降られちゃって」


柔らかな物腰でボクにそう話しかける。


「災難だね。そこまでの風向きじゃなかったのに」


空を見上げてそう言う少女はどことなく、達観した様子があって見た目に反して以外にも自分より何倍も年上なのではないかと思う。


「……あなたは、どうしてこんな辺境に来たんですか?」


自然とボクはそんな問いをしていた。彼女がこちらを向いた事で自分自身もそれに気付く。


「あてもなく旅をしていた。ただ、それだけだよ。所々で短期的な計画は立てるけど、それ以外は特に気にしたことは無いかな」


満足のいく答えかどうかは置いておいて、彼女はそう語る。

旅など遠出すらあまりしたことがない自分にとっては縁遠い話だが、父さんや母さんはボクくらいの歳の時は二人で各地を旅していたそうだ。

如何せん時間があまりなかったので、そこまで思い出話は聞けなかったが、ちょうど今ボクの目の前にいる少女の様だと思った。


「……雨、いつ頃やむと思いますか」


ボクも空を見上げてそう言った。


「どうだろうね。明日には止んでくれたら、この先にある村までいけそうなんだけど」


どうやらというより、彼女はやはりイル・マリー村が目的地らしい。


「ねえ君、こうして雨の森の中あったのも何かの縁だし、少し話そうよ」


木を背もたれにして、腰をおろすとそのすぐ隣を彼女は示唆する。

本来なら声をかけた方が申し出るべきことを彼女は言ってくれたのだ。


「良いんですか?いきなり現れたボクの方が先にいうべき事でしょう。それって」


「良いの良いの、そんなの結局はそこまで重要な事じゃないから。ほら、私は少し君に興味がわいてるんだよね」


ここまで言われれば、応じざる得ない。元々、誰か人と合流することが目的だったから少し予想外ではあったけど達成できたのは素直に喜ぶべきことだ。

そう考えて、ボクは彼女の傍に腰を下ろした。


何故だろう?最初は彼女がきれいな女性というだけで慌てていたのに、気付けば自然体になっていた。

何処か不思議な人だ。


「よし、それじゃあ自己紹介からだね。私は、セレシア・ウィンクルム。君は?」


そう聞かれてボクも名前を答える。


「ルクス・エス・ファンタズムです。少しの間かもしれませんが、よろしくお願いします」


少し間、その言葉で済むような関係だったなら、物語はこれにて終了だっただろう。しかし――

セレシア・ウィンクルム、彼女との出会いがまさか物語の始まりだったなんてその時は知る由もない。

よし、今回から好き勝手やっていきます

基本的に両方を交互でやっていって何処かで合流します


次回は7月あたりになりそうです

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