第14話「迫る危機ともう一つの予兆」
先に謝ります。
ごめんなさい!!
第14話「迫る危機ともう一つの予兆」
翌日の朝……
クロフィは昨日と同じく、魔術戦闘科の棟に来ていた。
時間的にはまだ授業は始まっていない。静かで音もなく、涼しい風が吹き抜ける道を歩く。
そうして散歩していると、背後から近づいてくる足音に気付く。振り返るとその人物は――
「あれ、クロフィさん?」
上下ジャージ姿のアイナ・F・ピースフルだった。
二人は適当なベンチに並んで座っていた。
「朝からトレーニング?」
「ええ、一応は毎朝かかさないようにしてるんです」
タオルで汗を拭きながら返答する。クロフィはそんなアイナの顔を一瞥してから次の問いをした。
「精が出るね。肉体的な鍛錬を、普通の魔術師はそこまで重視しない。そうまでして、やっぱり強くなりたい?」
昨日の戦いの最中でも似たような質問をした。
アイナはしばし考えてから答えた。
「なりたいですよ。そして、ここに居る誰よりもその意思は強いです」
そう言うアイナの目に宿る意思の光の強さはクロフィにもわかった。情熱、執念とはこういったものを言うのだろうか、自分にはわからない感覚だ。
しかし――
「……強くなる。その為なら、どんなキツイことでも受け入れられる?」
クロフィは一言そう聞くと、アイナは微笑した。
「はい。悪魔に魂を売るのでもないのなら、それこそどんなことでも……クロフィさん?」
アイナが気付いた時には、クロフィはすでに立ち上がっていた。
「来て、力になれると思う」
そう言って、手を差し伸べた。
■
ナハトの足取りは森林深部に差し掛かっていた。
遭遇する魔獣の強さも徐々に凶悪になってきて、昨日までのように上手く避けては進めなくなってきていた。
森に漂う魔力に気を配りながら、慎重に進んでいく。
「……解せないな」
最深部への足取りは止めずに、ふとそんなことを呟いた。
ナハトは森の深部の状況に不信感を持っていた。その理由は、魔獣の数が少ないからだ。魔獣のレベルは上がっているが、その数が圧倒的に平常時よりも少ない。
嫌な汗が頬を伝う。
「新たな変異種の出現すら超える災厄、その可能性か……」
ギルドは最悪の状況も視野に入れていると見解を示した。その意味をオレは理解しているし、考慮にも入れていた。
だが、実際に信憑性が強まってくると流石に危機感を持つものだ。
最深部まで、あと数時間で到着する。いそがなければ――
■
「アイナ、しばらく預かりたい」
「は?」
クロフィは職員室に来ると、すぐさまマリアを呼び出してそんな要求をした。マリア本人は当然困惑したが努めて思考を冷静に保つ。
「預かる。とは、つまり君が、アイナの戦闘訓練の面倒をみたいということかい?」
「そういうこと、わたしならアイナをもっと早く強くできるし、本人もそれを望んでいた」
クロフィは本気でアイナに戦闘を教えるつもりでいるし、その真意はマリアにも既に伝わっていた。だから、この意見自体はマリアも肯定する。
「まあ、確かにアイナと君は相性が良いだろうから意図は十分に察するが……教職の就く者の立場としては簡単に首を縦には振れない。それは、理解してくれるね?」
「わかってる。だから、どうすれば良いのか聞きたい」
率直な質問にマリアはすぐさま回答する。
「君に彼女を預けても問題ないと判断できればいい。具体的に、彼女に何を教えるつもりか教えてほしい」
そこから、クロフィは自分の考えも交えて、彼女に教えたいことの全てをマリアに話す。自身の未だ覚束ない語彙から懸命にひねり出される少女の言葉を、マリアもまた真剣に聞いた。
そして、しばらく説明が続き、ようやくクロフィは話し終わる。
「――ということ、ダメ?」
マリアはクロフィの言葉をしっかりと吟味した。教員らしく、客観と主観の両方を交えて、最終的に自身の矜持でもって見解を導き出した。
「満点のプレゼンとはとても言い難いが、まあ及第点だろう。よろしい、アイナのことは君に任せる。気の済むまで教授してやるといい」
クロフィはその言葉を聞いて安堵の表情を浮かべた。
その後、諸注意や訓練上の説明を受け、職員室をあとにした。
そして、現在の二人は指定された専用の訓練場にいた。
周辺が木々に囲まれた校舎の外れに位置しており。一回り小さな枠組みが用意されているその場所で二人は早速始めようとしていた。
アイナはジャージから制服に着替え、クロフィはいつも通りの服装ですでに準部万端だ。
「今日からだいたい一週間、その間に、できるだけアイナを強くする。わたしの持ち得る知識と技を無駄なく教える」
「はい、よろしくお願いします。クロフィ先生!」
アイナもやる気に満ちていた。あれよあれよという間に話が進んでしまったが、クロフィの強さは実際に戦った手応えで信用しているし、その人の技術を教えてもらえるならば願ってもないチャンスだからだ。
そして、それはクロフィも差異はあれど同じだ。この少女も、アイナのことを本気で強くするつもりでいる。地味に魔改造してやるほどの気力だ。
「時間は有限、早速はじめる。頑張っていこー」
「おー!」
掛け声しつつも真顔なクロフィとやる気満々のアイナ、二人の鍛錬が幕を開けた。
■
魔の森林、その最深部近く。
深部でも特に魔力濃度の高い区域、並の魔術師や使い手ならば、すでに意識を保つことすら困難を極めるであろう魔境。そこを遂にナハトは踏破しようとしていた。
「さすがに魔力が濃いな。もうそろそろか」
すでに何かただならぬ気配があることを彼は肌で感じていた。
魔力が濃くなる一方で視界には霧がかかってくる。一歩一歩と進む、ある位置を越えた時、周囲の雰囲気が一変する。霧は進むほどにたちどころに晴れていき、木々の隙間からは穏やかな木漏れ日が差し込む。
ナハトは魔の森最深部に到達する。
「着いた。そして、当たっていたな」
ナハトは目前にある『それ』を睨む。
周囲の雰囲気は穏やかであるはずなのに、それの放つ空気感が張り詰めた場を作っている。
樹齢何千年とも言えるかもしれない巨大な一本の樹木、その前に鎮座する三本の角が生えた巨人。大きさは小山と形容しても違和感ないほど、緑色の肌はゴツゴツとした岩のようで、その剛腕は丸太すら大きく上回る。そして巨体は甲冑や鎧に覆われている。
常軌を逸したスケール、それを確認してオレはようやく事態を把握した。
「魔の最奥に座する守り人にして、人々に課された試練の化身――」
―最悪級の魔獣・戦神―
刻一刻と解放の時、近づく。
…
とある田舎道――
大きな地図を広げて道筋を確認する人影が一つ。
「ここから先が……よし、合ってる!」
そう言って地図を畳むと、それが吸い込まれるように虚空に消えた。
桜色の髪が、花吹雪を散らすようにそよ風になびく。それを抑えるような仕草をする少女が見据える先にあるものとは……
もう一つの出会い始まる。
こんな感じであらすじから察してた方もいるとおもいますが新展開です(いったい、この物語は何処へむかうのだろう)
次回は6上旬に公開します




