プロローグ・冒険者ギルドにて
初めて投稿します。
一人でも読んでくれる方が居ると嬉しいです。
『炎雷』のカナハは呼び出された冒険者ギルドの会議室で内心冷や汗をかき、頭をかかえたい気分だった。
実際にはいつもの様に飄々とした態度を崩さず、腕と脚を組冷静に話を聴いている様にしか見えないのだが・・・・・・・・。
カナハの周囲では、同じく呼び出されたA級冒険者達が話を聴いている。カナハの隣では同じチーム『炎雷』のキーラが、堪えきれず美しい顔を不機嫌に歪めている。
更にその隣で旧知のチーム『暁』のリーダーであり、同門の兄妹弟子であるハルバートが、そんなキーラを見て苦笑している。事情を知る彼は「仕方がない」と諦めつつも、「その態度はマズイからなんとかしろ」と視線でキーラを嗜める。キーラもハロルドの合図に気付いているものの、険悪な表情を更に深める有り様だ。
他にも二つのA級冒険者チームが居るが、話をしている男に集中している様子で、そんなキーラとハロルドの遣り取りに気付いていない。
話をしている男の副官であろう人物は流石に気付いている様で、キーラに視線を向けて眉をひそめているが、上官の話を遮る行為をしたくないのか言葉を発する事は無い。
会議室全体の状況を見渡しつつ、カナハは斜め前に視線を向ける。カナハ達冒険者に、依頼内容を淡々と説明している男を観察する。
金髪と翠の瞳、端整な顔立ちは美しいと言っていいだろうし、鍛えられた長身の体躯は惚れ惚れする域だ。おそらく若い娘がキャアキャア騒ぎ、お近づきになりたいと騒ぐ外見をしていると思う。
冒険者達に話をしている様子を見る限り、人格も良ければ頭も良さそうだ。その上、彼は王宮の第三師団騎士団長で伯爵家の当主なのだから、良家の御令嬢方にとって優良物件この上無い。
そこまで考えるとカナハは思わず深い溜め息をついた。
『・・・・・・・・マジで分からないのか?いや、この状況では仕方ないというか・・・・・・・・。いやはや、心配したのがアホらしい位、気付かないもんだな~~~!?』
そりゃ一回しか会ってないし、まともに口もきいていないけど・・・・。
この第三師団騎士団長であるルーク・サザランドはA級冒険者『炎雷』のカナハの、『夫』であった・・・・・・・・。