表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼と彼女と4つの季節  作者: 井上まどか
秋のストーリー
7/15

変わった外見、変わらぬ中身


「それにしても。ふたりとも全然変わってないね~」と、千晶は綺麗にネイルされた指で、香澄と一郎を代わる代わる指差した。


「そうだね~」と一郎も香澄も、千晶に返事を合わせたが、何年ぶりともなれば、さすがに変わっていないことはない。


香澄ももう“あの頃”とは違う。


あれから…

幾つもの社会の荒波に揉まれて挫折もしたし、幾つかの本気の恋や悲しい失恋も重ねてきた。


その都度、まるでターミネーターのように復活してこられたのだが、純粋に幸せな未来を夢見ていた“あの頃”とは違う。


現実的なものを重視するようにもなってきたし、歳を重ねる毎に、恋にも転職にもだんだん慎重に、そして臆病になってきた。


だけど、昔から変わりたかったところは、残念ながら何も変わっていない。


実は今。

同じ会社に少し気になる男性がいるのだが、引っ込み思案な性格が災いして、やはり告白出来ないでいるのだ。


今までの恋はすべて相手の方から告白されてスタートしてきた。


体型も肌質も、二十代前半のピチピチだった頃と比べたら、少しは絞って変わったし、年齢的にはだいぶ大人になったはずなのに…。


自分が変わっていないのは“臆病”なところなのかもしれないな…と、香澄は思わず自分の事を振り返って、クスッと笑った。



(3人の中では、千晶が一番変わったかもしれないな)


一郎に向かって夢中で話す千晶を眺めながら、香澄は思っていた。


バレエで鍛え上げられたという、しなやかで華奢な面影は一体どこへやら…。


贅沢な暮らしのせいなのか、はたまた出産や育児、不規則な仕事や接待のせいなのか…。自慢だった彼女の体はすっかり丸みを帯びていて、いかにも高級そうな有名ブランドのワンピースがきつそうに見える。


真っ黒で艶々していて自慢だったストレートなロングヘアも、今はまるで外人のような金髪に変わった。ストレートヘアはふわふわのウエービーヘアになり、おでこを全開にして無造作に束ねられていた。


髪全体にキラキラ光るラメが振り撒かれていたが、彼女のイメージからはほど遠く、どこか不釣り合いに見えるのは何故だろう…?


千晶は買ったばかりの指輪を自慢していたが、香澄は目の前の千晶に、昔の“お姫様”の面影を感じられず、少し残念に思いながら見つめていた。



しかし、彼女の“存在感”は健在だった。


洋服やバッグも立派なブランド品で、香澄にはとても買えそうにない。


靴も、洋服に合わせて何十足も持っているというご自慢のフェラガモで、彼女のリッチな生活ぶりが一目でわかる。


けれど、見た目は変わっても、内面は昔と変わっていなかった。


何よりも変わっていなかったのは、彼女の“マシンガントーク”だった。


いや、千晶の強引なほどの自己アピールぶりは、むしろ以前よりパワーアップしたようにさえ感じる。


「通ってるダンス教室で、今度大会に出られるかもしれないの」


「この間、うちの妹がハワイからやって来て…」


「ねぇ、知ってる?最近テレビによく出ているタレントの○○さん!実は、うちのダンナの友達なのよ。うちのダンナはね…」


等と、案の定自分中心の話ばかり。


宴は彼女のリードで進んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ