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彼と彼女と4つの季節  作者: 井上まどか
秋のストーリー
2/15

引き立て役

なぜなら、大学時代。

香澄は一郎に片思いしていたから。


香澄はふと足を止め、

(あ~あ、なんで早く言ってくれないのよ…。

もっといい服を着てくれば良かったなぁ~)


と、ショーウインドウに映った自分の姿をみて後悔した。


そんな大事な事なら

前もって教えておいてくれればいいのに…。


昨日わかっていたんでしょう?

どうして千晶は教えてくれないの…。


香澄は悲しい気持ちで、

何度も千晶のメールに目を通した。


だけど仕方ない。

それが千晶なのだ。



一郎とは卒業以来全然会っていない。


どうせならもっといい服に身を包み、

「綺麗になったね」と思われたかった…。

それが女心だ。


(もしも魔法が使えたら、もっと素敵な服に着替えたいな…)


叶わぬ願い。

店に飾られていた女らしいサーモンピンクのワンピースを見て、香澄はまたまた溜息をついてしまった。



一郎と香澄はただの友達。


香澄はずっと好きだったけれど、今まで一度も告白はしたことはない。千晶のようなキラキラしたお姫様的存在がいつもそばにいて、香澄は告白する勇気がでなかったのだ。いや、正確に言うと、そのチャンスさえなかったのだ。


香澄はいつも

千晶のそばで彼を見て、


(あ…今、目が合った!)


(話せた…)


(私に笑った…?…かな?)


等と、ドキドキ恋心を楽しんでいた。


そんな一方的な片思いだった。


本当はずっと

両想いになりたかったのだけれど…。



3人の出会いは大学時代。

同級生だった。


かつて昔。

一郎のそばには、いつも千晶がいた。


千晶にはちゃんと別の彼氏がいたけれど、彼女は一郎のことが大のお気に入りで“彼のこと”もボーイフレンドのひとりとして“確保”していたのだ。


当然、香澄が入り込める余地はまったくない。


香澄はいつも微妙な立場。

お姫様な千晶の引き立て役だった。


そして、

それから数年後。


千晶は今、CMディレクターと結婚をして、自分も仕事で出世街道を歩み続けて、裕福で幸せな生活を送っている。可愛い女児のママでもあり、まさに幸せ絶好調なのだ。


現在、一郎は某企業の営業マン。多忙な日々を送っているが、素敵な奥さんと2人の子宝に恵まれているという。

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