消えない想い
「…あのね。私、昔からずっと一郎の事が好きだったの。今の主人よりもずっと…好きで、今でも大好きでどうしようもないの」
「…え?」
千晶からの唐突な告白に思わず息を呑んだ。
だけど、これは女の勘なのだろう。
学生時代から何となくそうなのではないかと思っていたので(やっぱりそうだったんだ…)と、妙に納得した。
「ふふふ。驚いたでしょう?」
千晶は照れを隠すかのように目の前のグラスのお水を一口飲んだ。
「う…うん。それで?」
香澄はそれだけ言うと、千晶の次の言葉を待った。
「呆れちゃうわよね。もう学生時代の私たちじゃないし、私も一郎もお互いに別の人とつきあって結婚しているし、そもそも一郎は私のことなんて何とも思っていないのに。今も一郎の事が大好きだなんてね」
「一郎は… 千晶の気持ち、知ってるの?」
「うん。知ってるわよ。もう何度も告白したし、実は…一郎の誕生日の時も告白したもの。不倫でもいいから男と女として付き合いたいって…」
「…え?
…そうだったんだ…」
香澄は小さなため息をついた。
不倫でもいいから付き合いたいと、素直に言える千晶の事が少し羨ましいとさえ思った。
もしも、香澄に千晶のような勇気があったなら、今頃自分と一郎の仲はどうなっていたんだろうと思いを巡らした。




