第2部
《鹿鳴館 ー壁ぎわの華ー 》 作者 Natts
この物語は、フィクションです。
鹿鳴館に着いた途端、島津武虎は、波留子を待たずに 館内に入ってしまった。波留子は、ため息をつきゆっくりと馬車から降りた。玄関先で武虎は、誰かと話しをしていたが 波留子に気づくと待っている素振りをした。波留子が、慌てて近ずくと
「波留子、私の両親だ。」
「えっ、お初にお目にかかります。三条波留子と申します。この度は、私のようなものが 良縁にあづかり誠に有難く存じております。不束者ですが、宜しくお願いし申します。」
(えー、突然、両親だって! クソ丁寧に言ったけど。マジ、遠慮したいし! 喉もカラッカラ状態何ですけど‼︎)
「いえいえ、こちらの方こそ 三条様には、ご無理を言いました。」
「本当に 良いお嬢様だ。こいつには、勿体無いぐらいだ。アッハッハ」
「父さん!」
「波留子さん、ご両親は、後から来られるの?」
「はい。少し遅れると申しておりました」
「じゃ、先に二人で入っていたら。」
「え、でも ... 」
武虎が、背中を押したので 軽く会釈をして晩餐会が模様される《大食堂》と印された所に入った。会場には、すでに何人かの招待客が座っていた。事前に知っていたのか、迷わず席に行き波留子を座らせてから武虎は、すぐ隣に座った。
席に座って直ぐに 外国人の招待客が隣に座わり 話し掛けてきた。
「'Hello.'」
「'Hello. My name is Haruko. Nice to meet you.'」
「'Nice to meet you too. My name is Cathrina. call me Cathy. This is my husband, Jimmy.'」
「'Hello.'」
「'Hello. This is my fiance, Taketora.'
武虎さん、こちらの方がキャサリンさんで キャシーと呼んで欲しそうです。あちらがご主人のジミーさんです」
「Hello, Cathy and Jimmy.'
「「'Hi, Taketora' 」」
「'How are you?'」
「'I'm fine. and you?'」
「'I'm fine, too. Thanks'」
「武虎さん、キャシーさんとお知り合いですか?」
「ああ、ご夫婦と何度か夜会で話した事があるんだ。」
(あーびっくりした! 久し振りの英会話。まじ、心臓に悪い。留学経験 有難う‼︎ でも、武虎さんもさすがだわー。外交官になる人だ‼︎ 男前度 アップしたよ)
波留子は、明治生まれの武虎が 流暢に隣や前の席の外国人達と会話楽しんでいるのを見て感心していた。そして、挨拶以外 適当にしか喋れない 自分の不甲斐なさに すでに『帰りたい』とさえ思っていた。
武虎と波留子の両親が其々の席に着く頃、晩餐会が始った。晩餐会の食事は、フランス料理だったが 三条家では、週に一度、テーブルマナーを覚える為に 知り合いのシェフに来てもらって一緒に食事をしていたので 他の慣れていない日本人の人達よりは、堂々と美味しく食事する事が出来た。
(味良し、見ため良しのフルコース! 凄過ぎる‼︎ 明治のシェフ、侮れないわー)
燕尾やイブニングドレスを着ていない人達は、談話室で着替えてから2階にあるボールルーム(舞踏会会場)に入った。波留子は、母親と待ち合わせて談話室に入った。波留子が、ドレスに合わせてイヤリングを選んでいると
「波留子さん、耳に穴を開けているの? 身体を傷つけるなんて 恐いわ」
「えっ、あっ、 この間、針で」
「変わったイヤリングね。重そうだけど痛くないの?」
「今は、痛く無いけど。イアリングは、自分で付けられるように工夫したの」
(やってしまった‼︎ ピアスってこの時代ないんだっけ! 大正時代のハイカラさんより 先にハイカラしちゃたー)
着替えを済ませて、階段の方に行くと燕尾を着た武虎が待っていてくれた。波留子が側に行くと武虎は、何も言わず腕を自分の腰に置いたので 素早く波留子は、腕を組み反対の手でドレスの裾を持ち上げて階段を上がった。
注) 波留子の英語の会話は、挨拶と自己紹介で武虎は、キャシーと親しく挨拶をしている。