歴史が閉じる時 5
「こちらBチーム。 敵部隊の陽動を開始します! ですが、12機程がレーザー兵器のそばから離れません!」
千葉県庁を迂回しながら先行するBチームから通信が来た。
「残ったのに構うな! こっちで片付ける!」
「敵レーザー兵器の照射危険域に入りました」
兵士達とAIが言葉を交わしている最中、アラームが鳴り出した。
照射危険域でヘタに頭を出せば、一瞬で黒コゲにされてしまうだろう。
「ツグミ。 AIによる乱数回避を過信するなよ。 あれは運任せの回避運動なんだからな」
「わかってる」
NPDやUAV、最新の戦闘機や戦闘車両には、レーザー兵器から捕捉用低出力レーザーの照射を受けた際、ランダムで回避運動をしたり、最も近い遮蔽物に移動したりする。
これを乱数回避という。
ただし、このシステムが作動しても、レーザー照射を確実に回避できるわけじゃない。
それに、パイロット側の操縦を勝手にキャンセルして、回避を強制的に実行してしまうデメリットもある。
「対空レーザー砲台、1機目を捕捉」
小隊間で共有される近接データリンクに、ディフュージョンが対空レーザー砲台の座標を表示する。
「新宿公園に1基か。 残りはどこだ……」
「ディエゴ大尉。 少し話があります」
都川を飛び越え、250m程先にある高層マンション群前の大通りで、ボク達は一旦停止した。
「おそらく、対空レーザー砲台は分散して配置されている可能性が高いです。
たぶん、Bチームのルート上にも砲台が居るかもしれない」
ボクはキーボードを叩き、データを仲間達に送る。
「そこで、Aチーム・Bチーム共に二手に分け、各個に対空レーザー砲台を叩くんです。
ただし、椿森や松波側に配置された砲台は、バロール破壊まで無視します」
「君の作戦は理解できたが、残りの砲台は位置がわからないんだぞ?」
隠れた砲台を見つける方法も、ちゃんと考えてある。
「ディフュージョンには、ロケットランチャーを搭載していますよね?」
「レーザー兵器の囮に使えると思ってな」
「じゃあ、ロケット1発を新宿公園の砲台に。 もう1発は照準を定めず、新千葉駅に向けて撃ってください。
Bチームは広小路交差点に1発、栄町駅に1発撃ってください」
「どうしてそんなことを……」
言いかけたところで、ディエゴの表情が変わる。
ボクの作戦を理解したらしい。
「レーザー照射の迎撃角で、砲台の位置を割り出すのか」
「レーザー砲台は、1基でひとつのターゲットを狙う。 4発撃てば、4基の位置にアタリがつけられるな」
兄ちゃんとディエゴが、感心した様子で呟く。
「新宿公園以外、ロケットを撃つ方向は適当だけど、照射はするはず。 5基目の位置は、4基がカバーしていない地域に絞れる」
ボクが最後に付け足すと、2人は「偉いな」と言って褒めてくれた。
だけど、この状況じゃ喜べない。
「Bチーム、作戦は聞いてたな?」
「いつでも行けますよ!」
Bチームから返信が来たタイミングで、ディフュージョンがロケットランチャーを起動させた。
あの6連装ロケットランチャーには、攻撃ヘリコプターなどが搭載するのと同じ、ハイドラ70ロケット弾が内蔵されている。
弾種は、対人・対資材用で殺傷範囲50mを誇る高爆発威力弾頭だった。
「フォックス2!」
ディエゴがロケット弾やミサイルを示す符丁を叫び、ディフュージョンの右肩に装備されたロケットランチャーから、2発のハイドラが発射された。
音を立てて飛翔した2発のハイドラは、発射から10秒も立たずにレーザー照射を受け、あっという間に破壊される。
「ディフュージョン! 位置はわかったか!?」
「新宿公園に1基、千葉街道のマンション付近に1基です。 Bチームは大和橋からハイドラを発射し、広小路交差点に1基、栄町東通に1基と割り出しました」
データリンク上に、新たに点が表示される。
「K小隊は千葉街道の砲台を潰せ! こっちは新宿公園の砲台とバロールを潰す!」
「千葉街道に向かうなら、国道357号線を通ってください。 新宿公園から照射を受けないし、千葉街道に向かうまでの間、盾にできる高層建築物もあります」
K小隊の隊長は「わかった」と言って通信を切り、K小隊のスプレッド6機は国道357号線に向かって走り出した。
「こっちはマンションの間を突っ切って新宿公園に向かうぞ! 通りには出るな、照射される可能性がある!」
ドンッという音を立てながら、ディフュージョンが加速する。
スラスターとローラーによる走行を組み合わせた高速滑走をしたんだ。
「ここからが本番だぞ、ツグミ!」
兄ちゃんのスプレッドも、ディフュージョンのように高速滑走をはじめる。
L小隊のスプレッドも、ディフュージョンに続いていた。
「わかってる!」
ボクも兄ちゃん達に続き、フューネラルを高速滑走させた。




