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どうやら、思っていたよりも簡単に人は死ぬらしい

「とりあえず、手紙の件は後回しにさせて貰う。そっちの方が面倒そうなんでな。しっかり対策を練る時間が欲しい」

「うん、私もその方が良いと思うよ」

「ぶに(任せる)」


 まずはロラン達の討伐の報告からだ。

 テオドールは今回の討伐において、物資調達にも関わっていたので聞く権利があるし、セヴランからも話をする許可は出ているとの事なので問題は無い。


「まず、マーダーウルフ率いるキラーウルフの群れの討伐は無事完了。内訳はマーダーウルフ一にキラーウルフが六十三」

「……結構な数の群れになったね」

「親玉が近場から集めに集めた結果ですよ。その癖、当のマーダーウルフ自体は上手く隠れてまして……サミュエルとリュシアンが上手く位置を割り出してくれなかったら、まだ掛かってたかもしれません」

「おかげで俺ぁ、少ない食料持たされて森ん中駆け回らなきゃいけなかったんだぜぇ? もちろん、狼共に見つからねぇようになぁ……。おかげで腹ぁ減ったのなんの……」

「そこカ」「ぎなっ(そっちかよ)」


 サミュエルにとっては、森の中で魔獣を探す事よりも、食料が少ない事の方が重大である。それの反動が先程の暴食っぷりなのだが、まだまだいけそうな雰囲気を残している。

 多分、今目の前に食べ物を出したら、普通に手を出す事だろう。

 そんなサミュエルを連れて、森の中を駆け回る事になったリュシアンの苦労は如何に。サミュエルの言葉にげっそりと疲れた顔で俯く様子が、当時の苦労を思い起こさせる。


 余計な人間に話をさせると進まない為、ロランが強引に二人程黙らせて話を続ける。

 ちなみに、ブサは『魔獣退治』という如何にも異世界っぽいフレーズに、ワクワクしながら話の続きを大人しく待っていた。


(魔獣討伐隊ってな、如何にも異世界っぽいよなぁ……。俺も人間だったら……って、ギルド登録しないとダメだっけか)


 ブサは勘違いというか、覚え間違いをしている。魔獣退治だけなら別にギルドに登録する必要は無い。ただし、討伐報酬が貰えないというデメリットはあるが。手に入れた素材を売るのは可能だ。

 その辺りもテオドールから説明されていた筈なのだが、熱を出して寝込んでいた間にいくつか教えられた内容が吹っ飛んだらしい。相変わらずの残念っぷりだ。


「被害は村二つ。村人総数百三人。残念だが、全ての遺体を発見する事は不可能だった。発見出来た分の遺体に関しては埋葬は完了している」


(……被害、百……って……死んだって事……だよな……?)


「それと、討伐隊側の被害は死者二名。治癒師のおかげで被害は少なく出来たが、ゼロにはならなかった」

「それは仕方無いんじゃないかな? ギルド員として登録した以上は、依頼中の死は自分の責任だし。ロラン君達が気にする事じゃない。それとも……誰かに何か言われたのかい?」

「……俺らが討伐隊に遅れて参加した事について、死者を出したチームのメンバーから少し。気持ちは分からないでも無いが……俺らの責任にされても困る、としか言いようが無いですね」


(合計死者百五人。……この世界じゃ多いのか少ないのか分からないけど、あっちだったら大事件だよな……)


 魔獣に襲われて村が壊滅したり、隊商が全滅したりという事はそう珍しくも無い。盗賊に襲われる事も。

 だが、人為的に魔獣の襲撃が引き起こされて、村が全滅するというのはかなりの大事件になる。


 ロラン達から聞かされた魔獣討伐の様子に、ますます異世界に抱いていた幻想が破壊されていく。

 ゲームじゃないのだから生き物を殺せば死体は残るし、血は飛び散り、匂いもしっかりとある。場合によっては、内臓と共にその中身も飛び散るのだ。

 自分に掛かれば大惨事である。猫の嗅覚を持つブサであれば、普通に悶絶する事になるだろう。

 もちろん、レベルアップという分かりやすい概念は無いから劇的に強くなったりもしないし、スキル(技能)もそう簡単に得られるものでは無い。ギルドランクを上げるには地道な努力が必要だし、ブサの願望の美少女奴隷ハーレムも不可能だ。

 美少女メイドを雇うなら可能だが、手を出せば犯罪者である。世知辛い。というよりも、過去の異世界人の倫理観などが大いに影響しているのだが。


 時折無駄な突っ込みを挟んだり、真面目に質問したりながら、討伐に関する報告は終了した。

 報告を終えて疲れきって溜め息を吐くロランと、無駄口を挟んだ為に頭にコブを複数こしらえたサミュエル。それを見守る三人が苦笑いを零し、幻想をメッコメコ打ち砕かれたブサが凹む。カオス。


「とりあえずは四人ともお疲れ様。ブサ君もいる事だし、良ければ今日はこのまま泊まって行くと良いよ。この後も話を詰めておきたいからね。もちろん予定があるなら無理にとは言わないけど……そういえば、今日の夕食は先日のパイの店に宅配を頼んでいて……」

「「「「遠慮無くお邪魔します(ス)」」」」


 分かりやすく餌で釣ろうとするテオドール。そんな餌に俺らがクマ――っ! とあっさり釣られた四人。躊躇いは無かった。

 四人の息の揃ったコメントにつられてブサの腹が鳴る。そう言えば自分は5日間程寝込んでいたのでは無かったか?

 キュルキュルと鳴る腹を見下ろし、テオドールを見つめる。


 自分にも、ご飯を、下さい。具体的には美味なるパイを。


「そういえば預かってる間に、ブサ君が知恵熱を出してしまったようでね……「はぁっ!?」あぁ、一応食事は寝ながら食べてたし、今も元気そうだからもう大丈夫だと思うけど……」

「パイなんて食わせて大丈夫なのカ?」

「ぶにゃ(腹減った)」

「……無理そうだな」

「ぎなぁっ!(腹減ったっつってんだろ!?)

「大変でしたね、ブサ。本当にもう大丈夫か私が診て「ふしゃぁっ!(断る!)」……ロラン、触れ合いの約束は?」

「本人の許可が出たら、な」


 見事にアンリはロランに釣られた事となる。二重の釣りか。ブサがアンリとの触れ合いを許可する事は、恐らく無いだろう。

 意気消沈するアンリを見て、フンッ! と鼻息を荒げながらリュシアンの影に隠れるブサ。


「だから、俺を盾にすんじゃねえヨ」

「ぶにゃぅ(てめぇが一番安全なんだよ)」


 どうやら、一応はリュシアンの事は信用しているらしい。ただし、『盾』としてだが。



 * * * * * * * * * *



 サミュエルの限界はどこにあるのか。あの後、テオドールに誘われるままに夕食を共にして――もちろんブサもパイを食べさせて貰えた。もっとも、病み上がりという事で酒は出されなかったが――少し前に大量に食べていたとは思えない程の量を平らげていた。パイだけでは当然足らず、使用人におかわりを頼む度にまだ食べるのかと、何度も確認されていたのは蛇足である。

 最終的には、食欲の止まらないサミュエルをロラン達が物理的に止める事になった。


「いっ、てぇ……」

「「「食い過ぎ(です)(ダ)だ」」」

「ぶに(どんだけ食ってんだよ)」

「いやぁ、良く食べたねぇ!」


 殴られた事を愚痴るサミュエルに突っ込みを入れる三人+一匹。テオドールは愉快そうに笑っているが、明らかに食べ過ぎだろう。何度使用人がおかわりを運んで来た事か。

 ロラン達が食事を終えた後も、一人だけがおかわりを求め、延々と食べ続けていたのだから積み上げられた皿の数も相当な量となる。今も必死になって裏で皿を洗っている事だろう。


 食事を終えた彼らは部屋を移動し、次の件について話を始める事となった。

 村人口少ないですかね……? 


 実際臭いは凄いと思います。人間とかバッサバッサ切るのとか、実際に考えたら胃から下だと明らかに臭いがキツイんじゃないかな、と。腸の内容物的な意味で。

 うん、生臭いの苦手な人間なので、バッサバッサの俺TUEEEE! は出来ないです。

 魚捌くのも終わってから必死に手を洗ってますよ。生臭いんですよ。


 ちなみに、魚捌いた後のその手で猫に近付いたらガプッ、と穴が開きました。私の手は、餌じゃない。『えぇぇぇぇぇ……』みたいな目で見られたけど、それ、私の手だから。

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