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どうやら、現実はバッドエンドで終わるらしい

 宣言通り、今話で尋問編終了です。

「嘘だ! 嘘だ!! オレ達のせいじゃない!! どうせその村は、元々狼の群れに襲われる運命だったんだ! どうせ、そういうイベントなんだろう!?」

「……っ! 黙れ!!」

「言うに事欠いて、村が襲われる運命だっただと!? イベントだと!? 貴様には恥というものが無いのか! 人の命を、他人の人生を何だと思っている!!」


 セヴランの怒号に体をよろめかせるアンリ。自身に向けられた本気の殺意と怒気に身が竦む。

 ギルドで絡んで来たチンピラ――もっともこれは、アンリがそう思い込んでいるだけだが――に思い知らせてやった時には感じなかった恐怖。今さらながらに身の危険を感じていた。

 顔を青褪めさせながらセヴランを見るが、セヴランからの威圧は変わらない。今なおアンリを憎悪の目で睨み付けていて、もし目の前にいたら殺そうと襲い掛かって来たとしても不思議は無い。

 だが、それでもアンリの心の内に燻るのは不満ばかりだ。自身の思い通りにならない現実(シナリオ)、自身を糾弾するモブの存在、いきなり態度を変えたセリア達ハーレムメンバー。そして何より、自分を騙して犯罪に手を染めさせたフェリシーの存在が堪らなく不快だった。


「ギルドマスター殿、他の方々に障ります」

「……っ、すまない」

「口を挟んで申し訳ありません。ギルドマスター殿の心情を考えれば当然でしょう。ですが、この場において私刑は認められておりません。この罪人には必ずや然るべき刑を与えますので、どうかご辛抱下さい。……この件についてはパーティーメンバーである貴殿らの行動も確認したい。各自正直に述べよ」

「わ、私は……村人が討伐に反対する理由を考えもせずに、ガーディエイプの討伐に参加していた……していました」

「ララは魔獣討伐は好きだから、喜んで参加していたニャ……。ララもアンリエットと同じで、村の人達が討伐依頼を出さない理由なんて考えもしなかったのニャ。それと、アンリに村の人達には知らせないでこっそり倒してビックリさせてやろう、って言われたから、誰にも言わないで倒しに行ったニャ……」「余計な事を言うな!!」


 アンリの怒鳴り声にララの体がビクッと萎縮する。

 ララの発言は、アンリにとっては言われたくないものだった。無断で討伐に行ったという紛れも無い証言なのだから。

 だが、ララもアンリを妄信的に信じる事はもう無い。涙ぐみながらもキッと前を見る。


「つまり、提案者は罪人アンリで間違いは無いな?」

「……ヒック……っ、ララは嘘は言ってないニャ!」


 ララの言葉に真偽官が頷く。それを見たララがホッとしたように息を吐くが、それもアンリには気に入らなかったらしく、再びララを怒鳴りつけようと息を吸い込む。が、その瞬間アンリの体を鋭い痛みが走った。魔道具だ。


 何で俺が……!


 アンリのどす黒い感情に共感するように、再びミシェルの体が暴れ始めた。ミシェルの目はギョロギョロと動いて正気さは感じられない。その目が真偽官、セヴラン、ヴィルジール、セリア達、そして証言者達へと次々と移る。どうやら、アンリは自分以外の全てに敵意を向け始めたらしい。

 バヂ……ッ! とアンリを捕らえる拘束具に付けられた魔道具から異音がする。セヴラン達の警戒心が一気に跳ね上がった。


「どいつもこいつも……モブの癖に……オレに逆らいやがって……! ……オレが犯罪者だと? あり得ない。ありえる筈無いだろう。オレは主人公だ。神に選ばれたんだ……! この世界はオレの為に存在して、全ての人間はオレの為に動くべきだ。オレの為に動けないモブなんて必要無い。リセットだ。リセットして、また全部やり直して貰えば良い! オレの、オレだけの為に存在する世界だ!! 使えないゴミは、全部……全員消えろぉぉぉぉ!!」


 バギャッ! と形容しがたい音を立てて、アンリを捕らえていた拘束具が魔道具ごと弾け飛んだ。

 異変を感じ始めた時点で、証言者として集められた一般人達は避難が進められている。すでに殆どの人間がこの場から安全な別室へと移されていた。この場に残っているのは、セリア達とロラン達、それとヴィルジールとその護衛兵達だ。後は、不測の事態に備えていた武装兵達。

 声にならない悲鳴を上げながら離れようとするセリア達と、そんな彼女達を守る為に武装兵達がアンリと対峙していた。武装兵が対峙している隙に、別の武装兵が彼女達を遠ざける。


 武装兵達がアンリの気を惹いている内に、セヴランが真上から飛び降り、一気にミシェルの両腕と両足を踏み砕いて意識を落とす。治癒ならば後からても可能だ。

 すでにアンリの忠実な手駒となっている可能性の高いミシェルを放置するのは、危険度が高いというセヴランの判断だった。


「ギルドマスター!」

「お前達は猊下の護衛だ!!」

「私の護衛には彼らがいます。どうか皆さんはギルドマスター殿の援護に」

「感謝します!」


 慌ててセヴランに声を掛けるロラン達だが、セヴランからは拒絶の意思が返された。だが、当のヴィルジールがロラン達に許可を出す。それをありがたく受け取り、ロラン達も一斉に下のフロアに飛び降りた。


「ぎにゃぁぁぁぁぁ!?(何で俺までぇぇぇぇぇぇ!?)」


 うっかり引っ掛けてしまったブサを連れて。



 * * * * * * * * * *



 そうして下に飛び降りたロラン達だが、下に着地した時には全てが終わっていた。

 無傷のセヴランと、ミシェルと同様に抵抗すら出来ないよう、両腕と両足の骨をバッキバキに砕かれて地に伏すアンリを目にしたロラン達の口がパカッと開く。


「「「「えぇぇぇぇぇ(ェ)……」」」」

「……いや、何というか……すまん」

「ぎなぁ(そして俺の連れて来られた意味が不明である)」

「ん? ブサ殿も連れて来たのか?」

「あん? ……あ、くっ付いてたみてぇだなぁ」

「……そ、そうか、偶然か。だが、何事も無く済んで幸いだった」

「ですね」


 一般人の避難を担当した武装兵達が戻って来て、武器を構えて辺りを見回す。

 だが、戦闘の形跡が全く無い事に気付き、不審がりながら近付いて来て……床に転がるアンリに気付いて、これまたパカリと口が開いた。無言でセヴランを見つめる。

 その反応に、やはりセヴランが申し訳無さそうに頭を掻くが、被害が出ずに制圧出来たのなら最善だろう。

 幸いにして、アンリは治癒能力は持っていない。だからこそ両手足を砕かれた今、アンリには他者を害する術は無いという事になる。唯一可能な方法は魔法を使う事だが、魔法を使うには集中する事が必要だ。痛みに弱いアンリには不可能である。

 ロラン達の仲間のアンリであれば、腹が掻っ捌けていようと魔法を使う事は可能だ。その後ぶっ倒れる事になるだろうが……。


「くそ……がぁ……っ! てめぇ、ら……よくも、モブの、存在、で……!!」

「口だけが一人前だったようだな」

「神から授かったとか、大法螺も良いところだったみてぇだなぁ?」

「実際、護衛兵達でもさほど苦労はしなかっただろうな。『神に授かった』という言葉を真に受けて、警戒しすぎたようだ。貴殿らには迷惑を掛けた」

「いえ、過小評価して被害を出すよりは余程よろしいかと。

「ふざけるなぁっ!! あの、くそ神が……!! 何が、神だ……っ! 俺が、俺の……!!」

「……神から能力を与えられた後、自身で努力する事など、貴様は思い付きもしなかったのだろうな。他人から与えられただけの能力だろう。貴様本人の実力では無い。そこそこの相手なら楽に勝てるだろうが、技術が伴わなければそこまでだ。心から努力し、至った者には決して勝てん。……『お情け』で貰った能力で、身勝手に振舞った『勇者ごっこ』は楽しかったか? さぞや優越感に浸っていたんだろう? 周りが貴様をどう見ていたかなど、気付きもせず……。……残念だが、貴様の冒険はここまでだ。残りの人生、貴様が台無しにした罪も無い人々の恨みと、怨念と、数え切れない人間からの蔑みを受けながら生きると良い。貴様だけは、ワシが何としてでも、決して楽には死なせんよ。苦しんで苦しんで、苦しみ抜いて……絶望を抱えて、惨めに、孤独に、死ね」

 長々と引っ張ってしまい申し訳ありませんでした。


~補足説明~

 

 そして、『神から力を得た!』と豪語していたアンリは、セヴランからしたら雑魚でした。きっと、正規に訓練を受けている人間には敵わない程度には雑魚。

 自己流で、なおかつ相手が油断してれば勝てる。ギルドで勝てたのは、相手が油断とまでは行かずとも、別の者に気を取られていた為。真正面からの決闘なら瞬殺アンリが

 

 この通り、アンリは与えられた力を妄信し過ぎて、努力するという事を一切していませんでした。それでも、ある程度までは戦えていたので余計に『神の力を与えられた俺最強』と勘違い。実際はスキルレベル1位。もっとも、技能を持っていない人間の方が多いので、実力差が際立って『見えていた』だけ。


 そして出会った仲間達のチョロインっぷりに、『ハーレム』結成。ただし、仲間達はそうとは知らない。個人個人に愛を囁く。下衆の極み。


 ちなみに、拘束具や魔道具を破壊出来たのは神から与えられた力。ある意味では自分の力。『強い思いが結果を引き寄せる』的な能力。漠然としてるので、技能としては現れていません。

 ちなみに、本来ならミシェルを完全に制約から解く事が出来ていた。が、『ハーレム築くなら奴隷美少女は必須』という下衆い考えが頭を過ぎる。制約の解除から、制約の改変へと結果が変わった。

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