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どうやら、やっとまともな尋問になったらしい

 次でフェリシー編終了、と行きたいです。短くまとめるのってなかなかに難しい。

「イ、イヤァッ! 何っ!! 何で……イヤァァァッ!!」


 フェリシーの絶叫に拘束された状態のアンリが暴れようとするが、魔道具も使用した拘束具はびくともしない。同じく喉に嵌められた魔道具がアンリの声を奪う。

 昨日と同じく、他の三人とは少し離れた場所に拘束されている斥候のミシェルは、何の反応も示さずにフェリシーの狂乱ぶりを眺めている。その様が異様に映ったか、盗賊ギルド側の人間が教会関係者に話しかけている。

 そして、フェリシーの仲間の三人は一所にかたまって、唖然とした様子でフェリシーを見ていた。驚愕。その一言に尽きる。フェリシーの癇癪は昨日も見ていたが、肌が黒く変色するなど普通ならばあり得ない事が起こったからだ。

 そしてそれは、この尋問の場に同席していた者達も同じく。一部の人間……セヴランと名も知らぬ盗賊ギルドのギルドマスターや、ヴィルジールやオレリアといった教会関係者の上層部。護衛兵達は流石に驚きはしたものの、すぐにそれを押さえ込んでいた。


 全員がフェリシーの身に生じた変化を目の当たりにした所で、真偽官が口を開く。


「皆様今の変化をご覧になったかと思いますが、この通り、私達真偽官が持つ能力には『真偽を明らかにする能力』もあり、その為に魂に制約を課せられております。故に私達は嘘偽りを言う事は出来ず、真偽を判断し、真実を告げるのみ。ですが、中にはどうあっても罪を認めようとしない者もいます。その場合、一定上の地位にある方からの要請がある場合に限り、この能力を使用します。効果は見ての通りです。偽りを述べた者が『黒に染まる』というものです」


 真偽官の言葉に微かなざわめきは止まり、未だ叫び続けるフェリシーの悲鳴だけが響く。

 真偽官の言葉は、決して大きな声を出していないにも関わらず、その場にいた全員の耳にきちんと届いていた。それは恐らく、フェリシーの耳にも。


「この能力はめったな事では使用を許されません。一度染まった肌は二度と戻りませんので。ですが、今ならまだ顔や肌を隠す事で生活をする事も可能でしょう。それを踏まえた上で返答には偽り無く答えて下さい。それでは、尋問を続けます」


 真偽官が尋問を再開すると言った後もしばらくは半狂乱だったが、やがて観念したのか、声が枯れてガサガサと聞こえ辛い声ながらも真偽官からの問いに答えていく。

 自身の容姿には相当自信があったようだから、黒く染まった肌には絶望しか無かったのだろう。それまでの傲慢さの見える態度とは打って変わって、必死な様子であった。


(……異世界ってこえぇ……)


 フェリシーの狂乱振りを見て、真偽官の種明かしの後はブサも非常に大人しくなっていた。異世界の方が犯罪者に対して容赦が無いと言う事を、ロラン達から懇々と説明されたからだ。

 異世界には異世界の決められた法があり、それを破る者には厳しい罰が与えられる。一定期間の労役は軽い方だ。死罪はむしろ温情とも言える……とは言え見栄えは非常にするので、あえて死罪を申し付けられる事もあるが、執行されるまでの間は死ねないように(・・・・・・・)管理される。それこそ、治癒師に頼んででも。もちろん、執行するまでの待機期間をただ安穏と過ごす事など許されない。

 罪人を守る法は無い。罪人になれば人権などは殆ど尊重されない。普通に命の危険がある場所にも送られるし、新薬の実験台や魔法の実験台、死ねれば天国死なねば地獄といった有様だ。

 ブサは今さらながらに異世界の厳しさを理解した。安易にチート能力でヒャッハー! などは出来そうにも無い。


 こうして考えるとブサは幸福なのかもしれない。肉体こそ不自由な猫の身なれど、異世界に転生してすぐにロラン達に拾われた為に命の危機を味わう事も無く、テオドールの庇護を受け、今現在も住と食は保障されている。さらには教会の枢機卿という人脈も確保出来た。

 何より、何だかんだと手荒に扱いつつもロラン達はブサを見捨てようとはせず、知らない事へはきちんと知識を与えている。知らずにやらかしてしまった事を忠告してくれる人物(ヴィルジール)も居た。

 ブサもブサで、斜に構えたり聞き流す事もあるが、本当に必要な事はきちんと聞くという事が出来ている。その為、致命的な失敗は今のところは犯していない。オレリアにばれたのはブサの失態だったが、オレリアの性格上ブサの事を無下にはしないだろうと思われる。


 結局は、周りの人間の対応と、それを本人がどう受け止めるか、というのが重要なのだとも言える。

 

 こっそりとロラン達への感謝を……してやらなくもない、かもしれないと捻くれた事を考えつつ、少し位は歩み寄ってやっても……と考えたところで、昨夜から今朝にかけての悪夢が思い出され、次いでアンリの暴走の数々が連鎖的に思い出され、ロラン達への感謝の念はあっさりと消え去って行った。アンリは自業自得であるが、ロラン達は巻き添えであった。(けしか)けた事実があるのは否定しない。



 * * * * * * * * * *



「それでは、罪人フェリシーがそちらのアンリと言う男を唆して、治癒師見習いを襲わせたという事を認めるのだな?」

「……はい、間違いありません」

「教会の運営資金の盗難に関しても罪人フェリシーがその男を唆したのか?」

「いいえ! それは私からではありません!」

「ではどういった経緯で盗みを犯す事となったのか答えなさい」

「それは……」

「……沈黙は罪人フェリシーの罪をさらに重ねる事になりかねない、と言っておこう。立案者、及び実行犯を庇っているとも取れる故」


 一度受け入れた後は至極スムーズに尋問は進んでいた。

 すでに襲撃に関する罪は確定しているのでフェリシーに対する呼び名も変わっていたが、その事に反論する事も無かった。ただ、しばらくの間目を(みは)ってから、悔しそうに唇を噛み締めていたぐらいである。これだけでも大した進歩だ。

 そして明らかになった行為の数々。教会における自身の態度――これ自体は罪では無いが――また、アンリ達パーティーメンバーに話していた教会の実態について全くの虚偽を語っていた事、王都に到着するまでの行程で『正義の行い』と称して行っていた無意味な断罪劇の数々……。

 もっとも、断罪劇に関しては茶番も良い所だったので、まともに受け取っていた人間がいなかったのが幸いである。もちろん、勝手な思い込みで断罪された側は堪ったものでは無い。それと、こちらに関しては断罪時に相手に怪我をさせた事があったので、それに関しては罪に問われる事となった。


 そして話は再び、出奔時の襲撃、盗難、書類の焼失の件についてに戻っていた。

 この件についてもフェリシーは時折口籠もりながらではあるが、偽り無く答えているようだ。それを聞く真偽官の視線も、ほんの少しだけ柔らかくなる。

 だが、それが運営資金の盗難問題に差し掛かった時、明らかに言いたくないという態度を見せた。真偽官の『目』で見ても、盗難に関してはフェリシーが言い出した事では無いという事は分かっている。

 真実を明らかにする為にも、改めてフェリシーの立場の危うさを言葉にして、やっとフェリシーが口を開いた。


「……お金を盗むのはアンリが言い出した事です。元は私が教会を悪だと、アンリ達に話していたのが原因ですが……だからと言って教会のお金を盗んで良い訳はありません。ですが出奔した当時、私は自分の事も省みずに周りに非があるのだと、ずっとそればかり口にしていました。私が認められないのは、周りのせい(・・)だと……。だからこそ、アンリが言う『搾取された分を取り返す』と言う言葉に乗ったんです。そして盗んだお金は恵まれない相手にと、スラムの方々に寄付しました……」

「真偽官殿、再び罪人への発言をお許し願えますか?」

「……はい、猊下。発言を認めます」


 フェリシーが自供を続ける中、ずっと静かに聞いていたヴィルジールが再び発言の許可を取る。その真下では、もう一人の枢機卿であるオレリアが酷く暴れているのを、護衛兵達が必死になって取り押さえているのが見えた。胸も一緒に暴れている。思わずガン見した。

 改めてフェリシーに向き直ったヴィルジールは静かにフェリシーに尋ねる。


「スラムには犯罪者も多くいる、というのは知っていますか? 何の考えも無く、ただ金をばら撒いてそのまま立ち去った後のスラムの状況を、あなた方はご存知ですか?」

「い、いいえ……ただ、良い事をしたのだと、これで、少しでも救われるのだと……」

「奪い合いです」

「……え?」

「確かに、スラムには住む所も無く、仕事も無く、仕方が無くて住み着いた者や流れ着いた者が多く存在しています。教会はそういう方々に炊き出しを行っているのは、当然ご存知ですよね? ですが、そのお金はどこから出ているかご存知ですか? 一部は寄付金からも出していますが、多くは運営資金に含まれているんですよ。ですが、それが盗まれたせいで教会は炊き出しを行う事が一時出来なくなりました。さらに言うなら、あなた方はただお金を渡しただけだったので、そのお金の多くは犯罪者達や他の者に奪われました。中には、殺された者もいます」


 善意と無関心。ただ、金を渡せば良いだろうと安直に考えた結果起こった悲劇であった。

 どうせなら食料に換えてそれを渡し、なおかつその場で食べ終わるまで見守るべきだった。そうすれば、渡されたソレを奪われる危険性を減らす事が出来、無駄に命を奪われる事も無かったのである。

 えー、斑の状態はきっちりくっきり分かれてる、と思って下さい。グラデーションは無く、はっきりとした境目が分かる状態。

 

 ここまでしてやっと観念しました。フェリシーは真偽官について知っている筈なのですが、何故気にしなかったかというと、これまたフェリシーに都合の良い自己催眠状態。


 自分聖女=罪に問われる事など無い


と思い込んだが故。

 それと、無責任な行動は止めましょう。



 明日は猫又公開日なのでこちらはお休みです。次話は9日となります。

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