どうやら、ハーレムは敵らしい
ハーレム死すべし、慈悲はない。
これが言いたかっただけです。ごめんなさい。
「それにしても、王都は久しぶりだね。町に入る前から相変わらず賑やかだ」
「ソウデスネ」
周りのざわつきの原因を全く理解していないテオドールと、ある程度の自覚のあるロランとアンリではこの場での感想にかなりの温度差がある。
互いにアイコンタクト。
『言うなよ?』『分かってますとも』
言葉に出さずとも、意思の疎通は完璧だった。
「そこの男達っ! 大人しくして貰おうかっ!!」
二人の意思の疎通は完璧でも、それ以外の人間には知った事では無いのだ。
突然声を張り上げて乱入して来た見知らぬ男達にロランとアンリは生温い視線を向け、事情の分からぬテオドールはコトリ、と首を傾げるのであった。
この時猫は、と言うと大きなあくびをして、我関せずといった様子だ。
その様を見て三人の厳つい男達がホッコリしているのがまた、緊張しつつも勇気を出して声を上げた男達には悲劇である。周りからは喜劇にしかならないが。
「盗賊どもがっ! オレ達がいる限り王都には……っ!」
「そこの男達っ! 何を騒いでいるっ!?」
増えた。いや、違う。
新しく乱入して来た男達は皆揃いの鎧を着て、同じ剣を携えているようだ。彼らは恐らく衛兵達なのだろう。
その証拠に彼らの姿を見た途端、周囲の人間達がホッと安心した様子を見せているのだから。
「衛兵かっ!? 遅いぞ、何をしている!? 早くあの男達を……っ!」
「門前を騒がせたのは貴様らかっ! さっさと来いっ!!」
空気を読まずに、更に騒ごうとする男が衛兵達に捕縛されて行く。逆にロラン達は完全スルーだ。
猫はそれを見て首を傾げている。
(捕まえるのこっちじゃねぇの?)
明らかにロラン達に非が無い事を知っているのにも関わらず、何故そう思ったのか。やはり、人相とは大事なのかもしれない。
「お、おいっ!? 何でオレを捕まえる!? 捕まえるのは向こうの……っ!」
「ちょっと! あんた、アンリに何するのよ!?」
「うるさいっ! お前達全員、騒乱罪で詰め所で話を聞かせて貰うぞっ!!」
「離して下さいっ! アンリは何もしていないじゃないですかっ! むしろ町を守ろうとしたんですよっ!?」
「離せっ! 人間如きが私に触れるなっ!」
「アンリを離すのニャ!!」
「……っ!! …………!?」
「まだ騒ぐなら更に罪が重くなるぞ!」
……どうやら向こうは正統派ハーレムパーティーのようである。
「なぁ、あの男『アンリ』って言うんだってよ?」
「……それがどうかしましたか」
「随分と違うもんだなぁ、アン……っ!?」
「このまま、燃やしましょうか?」
突如言葉を詰まらせたロランに何が起こったのかと言うと、戯言を続けようとしたので開いた口に杖の先端を勢い良く突っ込んだだけである。ロランは涙目だ。
「燃やしますか?」
「……っ! ……っ!!」
「何ですか? 聞こえませんね」
「君達は本当に仲が良いね」
向こうの騒動をもはや気にもせずコントを繰り広げるロラン達と、ズレた感想を持つテオドールだった。
(ハーレムなんて、死に絶えれば良い)
やはり過去に何かあったのか、再び闇を背負う猫であった。
* * * * * * * * * *
「先程は騒動を事前に防げず申し訳ありませんでした!」
「気にしないで下さい。私達はまぁ、見た目が見た目ですから」
「は……はぁ……」
謝罪をする衛兵その1と、それに対し自嘲気味な返答を返すアンリ。そんな返答を返されて地味に困る衛兵その2。
まだ先程の事を引きずっているらしい。
「えーと、ですね。先程の件で、その……申し訳ないのですが、門での手続きが終わった後に詰め所までお越し頂く事は……可能、でしょうか? あぁ、いや、その! も、勿論無理にとは申しませんので……」
ヤケに腰の低い衛兵だ、と思いきや。単にビビっているだけである。ヘタレめ。所詮その2か。
「あぁ、心配はいらないよ衛兵さん。この後、どうせ詰め所には行く予定だったからね」
「予定……です、か?」
「うん。盗賊の件でちょっとね」
ヒドく怪訝そうな様子の衛兵達だ。何かあったのだろうか?
「自首でしょうか」「黙ってろ!」
まさかの勘違いだった。
ちなみに衛兵二人の会話を聞いている『人間』はいなかった。
(聞こえちゃったけどな、俺)
「そ、それでは後ほど詰め所までお願い致します」
「はい、分かりました。また後ほど」
「お仕事ご苦労様。怪我はしないようにね」
「お気遣いありがとうございます」
「あー、手間掛けて悪いな」
「ぎなー(おつー)」
最後のセリフにその場の全員の視線が集まる。
(……何だよ?)
「猫……ですか?」
「あぁ。街に戻って来る途中でね、拾ったんだよ」
「人馴れしているようでしたので、もしかしたら飼い猫だったのではないかと思いまして。一応ギルドで確認を」
「あぁ! 成る程、そうでしたか。……本当に猫、ですよね?」
衛兵その2の彼には、果たして猫以外の何に見えているのだろうか。おっさんか? おっさんが見えているのか??
「次の方、前へどうぞ」
「あぁ、呼ばれましたのでこの辺で」
「あ、はい。ご協力ありがとうございます。それではまた」
「はい、またね」
門番に呼ばれ、最後に衛兵達と挨拶を交わしてから馬車を門番の前へ進める。大きな門だ。
左右に開く大きな扉が付いており、その一部だけが猫ドアのように別に開くようになっている。門番達が立っているのはその小さな扉の前になる。
大扉は、何かあった際の軍勢用。小扉の方が普段用となっている。
「こんにちは、よろしくね」
「あ、テオドールさん。戻って来たんですね」
「おや、覚えてくれてたのかい? 嬉しいね」
「ハハッ、テオドールさん達は忘れられませんよ」
忘れられない理由は何なのか。大体想像通りだ。
「まずは皆さんの身分証の提示をお願いします。ところで、サミュエルさんとリュシアンさんはご一緒じゃないんですか?」
「ん? ここに戻って来る途中私が……」
「あぁ、その事でしたら道中で盗賊達に襲われまして。二人にはその場で賊の見張りをお願いしているんですよ。この後、詰め所にも報告に行く事になっています」
どうやらこの門番は、ここに居ない二人の事もバッチリ名前まで覚えているらしい。
そして、テオドールが説明しようとしたのを遮るアンリ。何を危惧しているのだろうか。修羅の再臨だろうか?
「そういう事でしたか。……はい、身分証の確認致しました。ロランさんもありがとうございます。お返ししますね」
「あぁ、ありがとよ。その、なんだ……いつも騒がしちまって悪いな」
「あははっ、気にしないで下さいよ。騒ぐ方が悪いんです、ロランさん達は何もしてないでしょう」
(良い奴だなー、この門番)
密かに好意を抱く猫。
口では言ってても裏では、という人は多いがこの男の場合だと本心そうだ。もし、これが演技なのだとしたらロラン達に悟られるような真似はしないのだろう。
「あぁ、悪い……いや、ありがとな」
「いつも気に掛けて下さって、ありがとうございます」
「いえいえ、此方こそ。それではどうぞ、お通り下さい」
「うん、ありがとう。もし、困った事があれば言ってくれればすぐに来るから」
何が来るのか。
衛兵を呼んで来る、という事だろうか。それともテオドールが来るのか。
謎は謎のまま、三人と一匹を乗せた馬車は門を潜り抜け、王都の中へと入って行った。
ちなみに連行されて行ったハーレムメンバーは
剣士 男 ヒーローもどき
弓使い 女 男の幼なじみ
治癒師 女 敬語
魔法使い 女 エルフ、傲慢
闘士 女 獣人、猫耳
斥候 女 無言
と、非常に戦力と、定番のキャラ設定でバランスの取れたパーティーです。
ただしハーレム。
ハーレム死すべし、慈悲はない。




