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どうやら、今日の尋問はこれで終わりらしい

 セヴランとロラン達が小声で情報のすり合わせを行っている間にも尋問は進む。

 アンリエットがパーティーに加わる以前の問題から、一部はセリアへの尋問とも内容が被ったりしつつも、一先ずは全て聞き終えたようだ。アンリエット個人への質問は。


「……なるほど。貴殿の言い分は理解した。訴えられている事の殆どは事実無根である、と?」

「当たり前だ! ……確かに、真偽官殿の言う一部の件は、私達に非がある。それは認める。……だが、それ以外のものについては私達は一切関与していない!」

「……よろしい。アンリエッタ、元の席へ。……次の人物への尋問は時間が押している為、このまま続けて行うものとする。ララ、前へ」

「ぅ、ぇ、あ……は、はい!?」


 アンリエットが元の席へ戻り、続いて獣人闘士のララが呼ばれる。

 不安そうな気配を漂わせてはいるものの、大人しく壇上に上がるララに周囲がホッと息を吐く。

 技能などは封じているとはいえ、獣人の身体ポテンシャルは侮れないものがある。万が一暴れられでもしたら、と列席者が不安に思うのも無理は無い。


「その方ララ。貴殿は先のアンリエットと共に護衛の依頼を受けていたが途中放棄。その後の経緯はすでに確認出来ているが、貴殿は依頼放棄に関して反対はしなかったのか?」

「……ん? でも、助けて貰ったら恩を返すのは当然ニャ。アンリエットはアンリと行くと決めたし、ララもそう決めたのニャ。なら、仕方無いのニャ」

「……質問を理解していないようなので言い方を変えよう。依頼放棄がギルド規約に反する行為だとは知らなかったのかね?」

「知らないニャ。そんなのあるのかニャ?」


 ……それ以前の問題であった。


「(ギルドマスター、規約知らねぇって場合でも、罪は問われるよなぁ?)」

「(当たり前だ! 知らんで済むか!!)」

「(……だよなぁ。むしろ、知らねぇって方が普通ありえねぇんだよなぁ……)」


 その後もララに質問をいくつか投げ掛けるが、それに返って来るのは『知らない』ばかりである。

 獣人は物事を深く考えるのを苦手とする種族としての性質があるが、彼女の場合は苦手どころでは無く、完全に考える事を放棄している。

 故に、自身が楽しい事が最優先であり、その為には途中経過を気にしない。時としてはそれが良い方向に働く事もあるが、今回に関しては悉く悪い方に動いてしまった例だろう。

 普通、獣人を仲間にする場合は必要に応じてフォローに入ったり、最低限必要な事を教えなければならなくなる事が多い。そうしなかった結果が、コレ(・・)である。話にならない。


 コレには流石の真偽官にもこれ以上どうにも出来ず、早々に尋問を諦めるしか無かった。

 パーティーの仲間への教育は強制ではないが、最低限の事は教えるようにするのが普通である。何も知らない人間を仲間にして、後々困るのは自分達なのだから。今回は真偽官をも困らせる事となったが。


「……これ以上は尋問の意味が無いものと判断する……。この後は小休止を挟んだ後、対象を変更して尋問を再開する。なお、後半の尋問は担当する真偽官も交代となる」


 疲労困憊な真偽官の言葉をもって尋問の前半戦が終了した。

 交代が決まっている真偽官はすでに顔が引き攣っている。

 今の所尋問が終了したのはセリア・アンリエット・ララの三人……ララの場合は終了と言って良いのか、若干の疑問は残るが、まぁ、その三人だ。つまり、残っているのはミシェル、フェリシー、アンリの三人である。問題のある人間しかいない。それも考えると、このペースではどう考えても今日中には終わらない。

 直前の尋問対象者だったララは非常に協力的な態度ではあったが、回答自体には全く意味が無い。その前のアンリエットは全くの非協力的態度とは言えないものの、それでもある程度は罪を認めていた。セリアは今までの中で最も協力的、かつまともな回答が帰って来る相手であったため真偽官に取っては癒しとも言える相手であった。一番最初のアンリ? 考えてはいけない。

 そもそも、尋問相手に癒しを感じる時点で、このパーティー本気で色々とやばい。


「……ギルドマスター。やはり、これってどう考えても今日中には終わりませんよね?」

「だろうなぁ。覚悟はしていたが……。こいつらだけにかかずらっている時間なんて無いというのに……」


 こうしている間にも、猿共による被害がどこまで広がっているのか……こんな事をしている時間にも前線に出ていれば、何匹もの猿を血祭りに上げられるのに……!

 特にストレスの溜まっている現状では、後者が本音により近い。


「今日はあと一人が限界だと思いますよ。ですが、次の尋問も恐らくは中断される事になると思います」

「何故そう思われるので?」

「ミシェルと言う女性、彼女はほぼ傀儡同然でしょう。魂への制約が掛けられていると報告が上がっております」

「「「「(ハ)は(ぁ)!?」」」」


 ヴィルジールの言葉に驚くのはロラン達だけで、セヴランはすでに知っていたらしく苦い顔だ。


「何だってそんな事になっている? いや、制約は解除されていたんじゃなかった……の、ではないですか? 確か、セリアという嬢ちゃんの話ではそう聞いていましたが……」

「制約の魔道具は特殊な術式が使用されておりまして、対となる術式では無いと完全に解除する事は出来ません。さらに、強引に外そうとすると二段構えの術式が発動します。万が一それでも解除されたとしても、制約は中途半端に掛かった状態が維持されますので……それを力尽くで何とかしようとした結果、内容の書き換えという方法に至ったんでしょうね。ですが、その制約の媒体となる魔道具はすでに解除されてしまっていますので……魂へ直接制約を掛ける事になったのだと思います。もっとも、その事は制約を掛けられている本人に自覚はありませんし、仲間の女性達からの証言からも制約は解除されたと聞かされているようです。さらに彼女にとって不幸なのは、魂への制約は……二度と解除する事が不可能ということですね」

「本人にも仲間にも、制約は解除したって言ってんのかぁ? 完全に喜び損だなぁ……むしろ詐欺師に近くねぇ?」

「本人は英雄のつもりらしいがナ」


 驚きのあまりうっかり口調が普段通りになってしまったが、途中で気付いて自己修正。

 だがヴィルジールは咎める事無く説明を続ける。そして知った事実。

 セリアから聞かされていた事はアンリの話した出鱈目で、実際には制約は掛けられたままだと言う事。しかもそれは魂へ直接掛けられるという、非道な行いで。当然本人もその事は気付いていない。


(……つまり、あのミシェルっつー美少女ちゃんはあの野郎の奴隷だって事か!? くそっ! 美少女奴隷……俺も欲しい!!)


 人道的意味で憤っている……なんて事は当然無い。下種め。


「ぎなっ!(人間に戻ったら俺も奴隷を買うぞ!)」

「あン!? いきなり大声で鳴いてんじゃねぇヨ!」

「どうせろくな事は言ってねぇんだろうよぉ……」

 

 サミュエル、正解。言葉が通じなくて幸いだ。これで言葉が通じていたら、当然の如く締められる結果になっていたのは間違い無いだろう。


 そうこうしている内に真偽官が入れ替わり、次の尋問の準備が出来た。

 休憩の為に席を外していた者達も戻り、室内に緊張感が漂い始める。次の尋問は問題しか無い三人の内の誰かだからだ。何が起こってもおかしくは無い。

 だが、ヴィルジールは次の尋問対象となるのはミシェルだと確信しているらしい。恐らく枢機卿ならではの情報網があるのだろう。

 現に尋問の番となってみればヴィルジールの言う通り、尋問の対象として呼ばれたのはミシェルだった。

 うぐぐ……体調不良もあって頭が働きませぬ。

 喉の痛みも無く、咳が出るでも無く、関節が痛むでも無く……発熱ドーン! って何でしょうね。わりと良くあるんですが。今回は頭痛がセットで来ました。


 とりあえず成分の半分が優しさで出来ている薬でも飲もう……と思ったらありませんでした。寝ます。

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