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どうやら、二人目の尋問らしい

「では此れより、当初の予定を繰り上げ、次の者の尋問を始める。先の人物については現在錯乱状態の為、治癒師により治療が行われている。それでは……その方セリア。先のアンリと同村の出身にして、現在ギルド員として同パーティーを組み、共に活動をしている事に間違いは無いか?」

「はい、あた……私はアンリと共に村を出て、共にギルドに登録し、今までずっと共に過ごしてきました」


 伝令が来てから十数分後、無事に枢機卿二人とギルドマスターの姿は尋問の席に居た。後数分遅れていたら間違い無く遅刻していたので、ギリギリ危ない所だったと言える。

 何故、そんなにギリギリになったかと言うと……部屋に入った直後に二人して諍いを始めた為、せっかくの差し入れのパイを食べる事が出来ていなかったので、ギリギリまで食べていたからに他ならない。

 それでも満足する程度には食べる事が出来たので、今の二人は非常に機嫌が良い。気付けば、つねり合って出来ていた筈の頬の赤みはどこにも無い。治癒能力の無駄遣いここに極まれり。

 それにしても、二人が大食漢で無くて幸いだった。もしもサミュエルのような大食漢であった場合、まだこの場にはいないのは確定である。


 それはさておき、今、尋問の場に立たされているのはアンリと同じパーティーメンバーのセリアという少女である。

 ロラン達も少しだけ話しをした少女だ。昨日話した際には自分達の行動を反省していたが、この場に立たされた今もしっかりとその自覚はあるらしく、顔を緊張で強張らせながらもきちんと前を見て立っていた。先程のアンリのような無駄に斜に構えたような態度は無い。

 この時点でこの場にいる面々にとっては、さっきのアホ(アンリ)のような言動をしていない分、それだけでかなり好意的に見られている。

 あの短時間で、どれだけの人間を徹底的に敵に回しているのか、あの藁屑頭(アンリ)は。


「まずはこちらからの質問にいくつか答えて貰いたい。貴殿の準備が良ければ質問を開始するが……構わないかな?」

「……っ、はい。あ、あの……っ、もしも、答えられないような場合はどうしたら良いですか?」

「その場合は『答えられない』と正直に答えて貰いたい。出来ればその理由も合わせて答えて貰いたいところだが。しかし、あまりにも『答えられない』という回答が多い場合は尋問への協力の意思無しと見なす可能性もあるので注意して貰いたい。良いかな? ……それでは、尋問を開始する」


 先程の空気とは大違いの落ち着いた空気の中、セリアへの尋問が開始された。

 セリアも最初は緊張している為、所々でつっかえながらではあるものの、一つずつ記憶の中から浚い出して真偽官の問いに答えて行く。その回答は概ね真偽官の調べた通りのもので――一部にはやはり思い違いをしているものも混じっていたが――セリアへの尋問はスムーズに終了となった。


 尋問の終了を告げられた瞬間セリアがホッとしたように息を吐いていたが、それは周りで見ていた者達も同じである。無事、まともに終わった事への安堵。

 万が一にも、先程と同じような騒動が起こっては堪ったものでは無い。

 証言者の一人としてこの場に呼ばれた者もいる訳で、彼らもずっと尋問の為に拘束される訳にはいかないのだ。もちろん、その分の滞在費や日当のようなものは出るのだが、それのみを当てにする事は出来ない。彼らには本業があるのだから。


 実質セリアへの尋問に割かれた時間は一時間足らずであった。その前のアンリへの尋問が何も進まなかったのに三十分近く掛かっていたのを思えば、この順調振りが分かるだろうか。

 さらに、想定していたよりも短時間で済んだのも、セリアが協力的な態度でいたというのも大きいだろう。

 十五分程度の小休憩を取った後、次の人物への尋問が始まる。


(うおぉぉぉ! エルフ! 貧乳!!)


 言いたい事はそれだけか。


 改めてエルフのアンリエットを目の前にして、ブサのテンションが爆上がる。

 地球では物語としてしか存在しないエルフが目の前にいるのだから、多少テンションが上がるのは仕方無いと言えるだろう。だが、貧乳を口に出していたらその時点でブサの命は無かったと思われる。それが事実だとしても。

 ちなみに、手を下すのはアンリエットでは無く、この場合はオレリアである事は間違い無い。なにせ、アンリエットは今現在、魔法を封じられていて無力化されているのだから。


 そして、オレリアがアンリエットを見る目は優しかった。

 ……無い者同士の共感か。やはり、下手な事は口にしない方が身の為である。あえて地雷を踏みに行くヴィルジールは例外として。


「さて、その方アンリエット。先に尋問を終えたセリア嬢と被る質問もあるが、正直に答えて貰いたい。では準備は良いかな? ……それでは、次の尋問を開始する」


 アンリエットの登場に一頻り興奮していたブサだが、ある程度鼻息を荒くした後はアッサリと大人しくなった。ブサの好みは貧より巨なので。

 ただ、ブサとしてはアンリエットに対する好意は低い為、わりと尋問内容は聞き流している。

 セリアの時はしっかりと聞いていたし、時折共感するように頷いたり、アンリへの怒りの声を上げたりしていたのだが。あまりにもうるさかった為、コキッと捻られそうになった……という場面もあったりする。

 

「……では次の質問だ。これまでギルド員としての役割はキチンと果たしていたか?」

「……商人の依頼の途中放棄の件なら、前金は返却したし、違約金も払っている」

「それで、ギルド員としての役割を全て果たした、とでも? 護衛依頼の途中放棄についてはギルド規約でキチンと明記されている。負傷やメンバーの欠員等どうしても放棄せざるを得ない場合を除き、自己の都合による放棄の場合はその理由も合わせて報告をギルドに行い、次の護衛を迅速に斡旋出来るよう動かねばならない事は知っているな? 何故、そうしなかった?」


 ギルドにはギルドの法がある。それはギルドを守る為でもあり、ギルド員を守る為でもある。

 護衛依頼の途中放棄は依頼人からの信用を著しく失う行為である為に、それに対する規約もしっかりとある。アンリエットとララの場合、特に問題となったのは規約を無視した行動を取った為だ。それにより依頼人は被害を受け、ギルドは信用を失い、それを払拭する為に多大な労力を払う事となった。


「……アンリが、すぐに次の町へ向かうと言っていたから」

「つまり、自身に罪は無いと?」

「だが! 最終的には商人だって認めたのだ! 違約金と前金の返金で、護衛の放棄を認めると!」

「その後の義務の放棄も認めたのか?」

「……ギルドへの報告を、と何度も引き止められた……が、それを振り切ったのは私達だ」

「依頼放棄の理由というのも『アンリに助けられたから恩を返す為に同行する』とあったが……以前、貴殿はギルドに登録したばかりの頃に、別のギルド員にも盗賊に襲われた所を救われた事があったようだが、彼には恩を感じなかったのかね?」

「それは……!」


 これはすでにセヴランから聞かされた内容だ。結局、ギルドが斡旋しようとしたギルド員ではもはや信用して貰えず、ギルドの職員を直接護衛として派遣する事で何とか事を収める事になった一件である。

 だが、後半の件は初耳だ。


「(ギルドマスター、そんな事あったのか?)」

「(あぁ。ちなみにその助けたギルド員はしばらくあの女と行動を共にしていたんだが、魔獣と対峙中、自身が魔獣のすぐ傍にいてもかまわず魔法を打って来たり、その後も威力の調整の全く出来ていない魔法で打ちまくった結果、素材も討伐証明もボロボロでな。結果、男に怪我は絶えず、赤字続きでペアは解散。解散時は相当酷かったらしい)」

「(そりゃ、またどうしようも無ぇナ)」

「(その後、何度組んでも同じ事の繰り返しで孤立。余計拗らせていたが、運良くララっつう獣人の嬢ちゃんと組む事が出来て、少しずつでも改善されてはいたんだがな。あのアンリとの出会いで全部パーだ。良くなる所か悪化一直線。他人を見下す傾向は元々あったが、それも悪化したよう……ん? 何か、妙な情報も混じってないか? コレ……)」


 そう言いながらセヴランが見下ろしたのはギルドが集めたアンリエットに関する資料で、かなり事細かに調べたらしいその情報にはこうも書かれてあった。


――現在のパーティーに加入してからは、目当ての人物の周りには女性が溢れている事から自身の体型にコンプレックスを拗らせているようで、あちこちの露店で『巨乳になる薬』を買い求めている姿が目撃されている。

 だが、現時点までにその効果は一切見られず、調査したギルド員曰く推定『65のAA』である――


 調査内容に悪意しか感じない。

 明日は猫又公開日ですのでこちらはお休みです。

 次話は29日となります。


 明日は猫又をよろしくお願い致します。

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