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どうやら、人の夢と書いて『儚』いというものらしい

 下ネタ方面ですので、苦手な方はブラウザバックでお願いします。

 執念は実ります。時として、本人の意図せぬ方向へ……。

「ぎっなぁ~~~ん!!(喜んでぇ~~~!!)」


 必死に捕まえようとするリュシアンを脅威の身体能力で振り切り、ル○ンダイブをかますブサ。オレリアの体に触れる瞬間には、爪をキッチリ引っ込めているという気の遣いようである。もちろん、女性限定なのであしからず。


 モニ、モニ


「ばっ!! てめっ!?」


 オレリアの膝に着地した後、さり気無い振りをして二つの山に手を掛けるブサ。

 当然、中身を知っているセヴランやロラン達は焦る。見た目は猫でも、中身はれっきとしたおっさんなのだ。それが枢機卿の胸を揉んだなどとうっかりばれれば、どんな目に遭うか分かったものでは無い。

 せめて、自分達は止めようとしていた……というの事実だけでも印象付けねば!! その場にいた男達の思考は一致していた。とはいえ、現時点で枢機卿の膝の上にいるブサをどうしたら良いのか。下手に動かしてさらに悪い状況になってもいけない為、中途半端に立ち上がったまま硬直する羽目となった。

 唯一、両方の事情を知るヴィルジールを除いて。


 モニモニ、モニモニ

 モニモニ、モニ……?


 両の肉球に触れる感触を楽しみながらも、次第に違和感を感じ始めるブサ。

 前世において、女性の胸を揉んだ事などは無い。うっかり電車の中で触れてしまった事はあるが。直後に痴漢だと叫ばれて酷い目に遭った事が……これ以上、思い出してはいけない。

 ウッカリ開けてはいけない記憶の扉を開きかけて体が震え出しそうになったブサだが、自身の手の中にある感触に正気を取り戻す。柔らかい。


 モニュ??


 ……だがやはり、何かが違うと本能が訴えている。

 女性の胸など揉んだ事が無い自分にも訴え掛けてくる、強烈な謎の違和感。目の前にあるモノは間違い無く、自身にとっては目の保養であり、世界におけるこの世の宝であり、同志達にとっては五体投地してでも拝み奉るべき存在なのだが……。


「……意外ですね。まさか、彼が一番最初に気付くとは思わなかったのですが」

「……どういう意味よ?「あなたが一番分かってるのでは?」……チッ!」


 自分達の目の前で起こっている考えられない出来事に、オーバーヒートしかけるセヴランとロランを救ったのは二人の枢機卿の会話であった。この時点でブサを止められなかったリュシアンは思考を止めている。アンリは頭を抱えて必死に頭痛と闘い、サミュエルはどこか変なネジが吹っ飛んでしまったのか、床に崩れ落ちたまま笑いが止まらなくなって、息も絶え絶えになりながら必死に床をタップしていた。

 ちなみに、この二人の会話の間もブサはしきりに首を左右に傾げながら、僅かな違和感を見つけ出そうとする熟練の鑑定人のように手を動かし続けている。一体何の鑑定人なのか。


「今更とはいえ改めてご紹介しますが、彼女の名はオレリア。私と同じ枢機卿の一人でして、裏では密かに『虚乳』の枢機卿と呼ばれていたりもします」

「ちょっ……やめてくれない!? その物凄く不名誉な呼び名!! そんなの考え付いたの誰よ!?」

「さぁ……? 私も私自身の呼び名も含めて言い出した人を探しているんですが、未だに不明なんですよね。ちなみに、私ではありませんからね?」

「……物凄く疑わしいけど、この件に関しては嘘は無さそうなのよね。チッ! 言い出した奴見つけたらえぐってやるわ!!」

「男性だったら?」

「もぐに決まってるでしょう!!」


 ……本当に、一体何の話なのだろうか? この場に居合わせてしまった男性陣がヒュンッとしてしまったのは無理も無い話である。それは未だに胸を揉んでいたブサも同じ。

 今更ながらに自身の行動の無謀さを自覚したのか、ソーッとオレリアから離れようとするが、ガッ! と頭を片手で掴まれて逃亡を阻止される。


「逃げられると、思ってるのかしら……?」

「……ひにゃぅ(……思っておりません、マム)」

「何で私のこの完璧な偽装を見破ったのかしらね? ひょっとして、真偽官みたいに偽りを見抜く能力でも持っているのかしら……?」


(そんなとんでも能力持っていません! 俺はただの猫です! 猫!!)


 オレリアの眼力に負けて必死に首を横に振るブサ。その様子を見てさらに頭を抱えるロラン達。


「……ひょっとして、私の言葉を理解してるのかしら?」


(バレタ!?)


 当たり前である。むしろ、この状況でばれない方がおかしい。こうして秘密にしたい事柄はポロポロと、知られたくない人物達にばれていくのであった。



 * * * * * * * * * * 



「ふぅ……ん? 異世界人? ねぇ?? 尋問の場にいた奴と言い、コイツと言い……異世界人って狂人ばっかりなのかしら?」

「いや、過去には立派な人物もいたらしいんで、コレ(・・)アレ(・・)が特殊なんだと考えて下さい。ついでに言うと、俺らがコイツと関わるに至った経緯は全くの偶然です」

「それに関しては疑ってはいないわ。けど、何だってそんなに国の介入を拒むのよ? 押し付けちゃえば良くない?」

「それは……」


 言えない。うっかり最初のただの猫だと思っていた期間に、これまたうっかり情が湧いてしまったなどと。言えば間違い無くブサは調子に乗る。

 ただでさえ自分達は女や子供、それどころか獣に至るまでびびられる毎日を送っている。当然ながら成人した男性からも。

 そんな毎日を送っているのだから多少ふてぶてしい態度とは言え、自分達に対しても若干の怯えは滲ませているものの、それでも逃げ出す事無く自分達をしっかりと見据えてくる猫の存在に。いつしか中身が人間なのでは無いかと疑いを持ち始め、それが事実であったと分かった時も、その時にはすでに見捨てるという選択肢を取りたくないと考えてしまう程度には仲間意識を持ってしまった。

 面倒事ばかり引き寄せる(アホ)だが、拾ってからの数日間は確かに荒んだ心を癒してくれる日もあったのだ。それを思えば昨日、今日の騒動など……。


「あれ? そういや、何でだろうな?」


 昨日、今日のてんこ盛りな災厄を思い起こせば、国に押し付けちゃっても良いんじゃないかな? とうっかり思い直してしまうロランであった。


「まぁ、それはともかくとして」


 いきなり直球をぶん投げたくせに投げっ放しで放置するオレリア。放置プレイか。


「私の偽装を見破ったのはどういうカラクリな訳?」


(いや、カラクリと言われても……)


『かん?』


「勘で見破られて堪るかってのよ! 私がどれだけ苦労してこの技能を身に付けたと思ってる訳!?」


 そんなの知らんがな。そう思うのはロラン達で。一方のブサはオレリアの胸を揉みしだく事こそやめたものの、不可解そうにオレリアの胸をガン見するのはやめなかった。


「おい、てめぇ。いい加減ガン見すんのやめろ。女性に対して失礼だろうが」

『むね いわかん』

「あん?」

「野生の勘、的なものでしょうか? 彼女の持つ技能は、初対面ならそうそう見破れる人はいないんですけどね」

「……返答に困ります、ね?」

「教会の人間には周知の事実ですので。何しろ『虚乳』ですから」


 にっこり、にこにこ。揺らぐ事の無い笑顔でのたまう言葉には、明らかにオレリアへの毒が詰まっていた。


「で、そこまで言うって事は『巨乳』じゃぁ無いのか? 雰囲気的には違うんだよな?」

「はい。彼女渾身のユニークスキル『偽乳』による視覚効果ですね。この技能の特徴は、見ての通り『巨乳に見せかける事』これに尽きます。しかも、感触まで完備しているという徹底振り。とはいえ、真偽官には見破られてしまうのが玉に瑕……と言えましょうか。ですが、完全な初対面で見破ったのはブサさんが始めてだと思いますよ? 視覚も触覚も、完全にだませる脅威の技能です」

「ってことは……」

「あの胸は完全なる紛い物、実際は男性よりも平坦な荒野の持ち主です」


 うっかり指差し確認する先は、当然ながらオレリアの胸である。

 俯いたままプルプルと震える彼女を他所に、シレッとした顔で彼女の技能を説明する。彼女の許しも無く。

 そしてにっこり、にこにこ……からの、開眼。

 お前ら二人の過去に一体何があった。

 胸の盛りを偽装する、見た目も触感も完璧です!

 もちろん、脱いでも見た目は変わりません。現実のように、脱いだらガッカリなどという事は無いのです……。無いのです……。

 自動発動に非ず。



【偽乳】

 

 とある枢機卿が失意の果てに目覚めた技能。ユニーク。

 あくまでも紛い物ではあるが、見た目と触り心地は完璧である。盛り具合は本人次第。服を脱いでも変化は無い。

 ただし、常に技能の使用を意識しないと消える。儚い。



 全力で土下座します。悪意はありません。

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