表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/152

どうやら、門前でも一騒動あるらしい

 やっと、町に……

 やっと修羅が静まった時には、盗賊達に動ける者は誰一人としていなくなっていた。いつしか、呻き声すら聞こえなくなっていた。

 (おとこ)も完全に固まっている。どうやら、最後の一撃の「な!」のインパクトが強過ぎたようだ。


 そんな事とはつゆ知らず、テオドールはトドメを刺し終えると再びニコニコと(おとこ)と相対する。


「やぁ、猫君。待たせて本当に悪かったね」

「…………」

「ん? 猫君??」


 (おとこ)の反応を見て不味いと思ったか、慌ててリュシアンがテオドールの元へ駆け寄る。


「テオドールさん、すみませン。俺ら護衛だったっつーのに、何も出来なくテ……」


 リュシアンのその言葉を皮切りに、次々と他の男達も走り寄る。


「すみませんでしたテオドールさんっ!」

「あ〜、その、本当に悪かったなぁ……全く役に立たなくてよぉ……」

「依頼人の方を危険に晒すなど、護衛として不適切な行為でした。本当に申し訳ございません」


 続々と謝罪の言葉を口にする男達。全員顔は極悪ばかりだが、仕事には基本真摯であるようだ。

 ……まぁ、時には脱線する事もあるようだが。

 口々に謝罪をするその様に、テオドールも毒気を完全に抜かれたのか心底愉快そうに笑いだした。


「ハッハッハッ! いやいや、気にする必要は全くないとも! そもそも、リュシアンが盗賊の襲撃を教えに来てくれた時に、私が自分で出る(殺る)と言ったのだからね。それを謝られてしまったんじゃ、逆に私の立場が無いよ。護衛を振り切って敵と戦おうとする依頼人なんてね」


 どうやら、自分があり得ない行動をしているという自覚はあったようである。ただし、自重をしなかったというだけで。

 ホッと護衛達全員が胸を撫で下ろす中、固まったままの(おとこ)はコッソリとサミュエルによって回収されていた。


「おい、良いかぁ。俺がこれから地面に降ろしたらぜってぇ、テオドールさんとこ行くんだぞぉ? 万が一にも行かなかったら……どうなるか、分かってんだろうなぁ」

「ゔな(了解)」


 ヒッソリお話し中(作戦中)であった。そして、猫が投下される。


「ぶなぁ?(これで良いか?)」

「おや、猫君。あのクソ盗賊達のせいでヒドイ目に遭ったね。大丈夫だったかい?」

「ぎな(お前がな)」


 大丈夫じゃないのはむしろ盗賊達の方だ。

 どうやらさっき固まっていたのは上手く誤魔化せたらしい。そして作戦通りに(おとこ)が動いたのを見て、静かにハイタッチをする男達だった。


「さて、この盗賊達はいつも通りで良いかな?」

「そうですね。ただし、今回私達は一切手を出していませんので、取り分は無しでお願いします」

「そういう訳にはいかないよ。盗賊達の見張りもして貰わないといけないんだから」


 テオドールが『見張り』と口にした瞬間、ロラン達の視線が一斉に盗賊達に向かう。恐らく全員の心境はこうだろう。


『見張り要らなくね?』


(見張り、要らなさそうだよな)


 そして、今回も同じ事を考えている(おとこ)だった。


「あ〜、んじゃぁ。俺とリュシアンが見張りして待ってますわぁ。んで、ロランとアンリは護衛でいいだろぉ」

「俺かヨ!? ん、まぁしょうがねぇナ。仕方ねーから見張りしててやるヨ」


 そして自主的に名乗りを上げたサミュエルと、強制的に決められたリュシアンであった。

 しかし、ロランは弓を得手とし、アンリは魔法を得手とする。前衛がいない気がするが……いざとなれば、喜んで前に立つ依頼人がいるのだろう。きっと。


「それじゃあ、君達悪いが見張りを頼むよ」

「警備隊が来たら交代で戻って来てくれ」

「間違っても盗賊達を逃がさないようにして下さいね」

「ぎにゃ(逃げたくても無理だろ)」


 先行して町に向かう組が口々に言う。それに苦笑いを返すと残る二人は、さっさと行けと言うように手を動かす。

 それを見て、ロランもまた馬車を町へと走らせるのだった。


 ガタガタとしばらく馬車に揺られる事、小一時間程度だろうか。少しずつ馬車の速度が遅くなって来たように感じる。何故『ように』なのか。

 それは(おとこ)が馬車から落ちたら困るという理由で、御者台ではなく荷台に乗せられているからだ。更に言うならばガッチリとテオドールに抱えられているのである。


 ちなみにこれは、修羅の心を癒すために必要な措置なのだ、とロランとアンリから力説されていた。男達に色々と弱み(ごほうび)を握られている(おとこ)としては、粛々と従うしかないのであった。


「テオドールさん、もうすぐ門ですよ。後は詰め所で盗賊どもの事を報告して、早く連行してって貰わねぇとな」

「おや、もう着いてしまうのかい? 猫君と別れなくてはならないのは、何とも名残惜しいね」

「……テオドールさん、俺らは……?」

「猫君にもし、飼い主が見つからなければ是非ウチの子になって貰いたい位だよ」


 どうやら(おとこ)の事を物凄くお気に召したらしい。何がそんなに琴線に触れたのか。それはテオドールにしか分からない。


 馴染みの男達よりも(おとこ)との別れを惜しむテオドールだった。


「……俺ら……」

「しつこいですよ、諦めなさいロラン」



 * * * * * * * * * * *



「っはー、やっとベッドで寝られるぜ……」

「詰め所と、ギルドへの報告が先でしょう。ん、やはり先に宿を取った方が良いですね。ロラン、宿は貴方に任せます。私は報告を」


 適材適所、報告を誰がするのかは、きっといつも同じなのだろう。


「おう、了解」

「あぁ、念の為に猫も連れて泊まれるか、確認しておいて下さいね。念の為です」

「お、おぉ、了解」

「もし、宿が見つからなかったら猫君は私が預かるよ」

「…………俺らは?」


 念の為とアンリは繰り返しているが、その実、猫と泊まりたい気持ちでいっぱいである。ついでとばかりに立候補するテオドールもまた相変わらずだった。

 そしてロランの言葉は安定のスルーである。


 ざわっ……ざわざわ……


(ん? 何だ?)


 何やら門の前が妙にざわついている。……何かあったのだろうか。面倒事はこれ以上は関わり合いになりたくない(おとこ)は、耳をそばだててみる事にした。


 ピクピクッ


「おい! 早く衛兵呼んで来た方が良いんじゃないのか!? あいつら、絶対ヤバイ奴らだろ!」

「あん? あぁ、あいつらなら大丈夫だよ。顔面凶器な連中だけどな。」

「大丈夫って……もし、何かあったら……!」


「お、おい。あいつらまさか盗賊の一味とかじゃねぇだろうな!?」

「おれ、ちょっと衛兵呼んで来る!!」


「うわ、あの男達また帰って来たのね。いい加減、何処か他の町を拠点にすれば良いのに……」

「何であんたってあの人ら目の敵にしてるわけ? 顔は怖いけど、割りとまともな人達よ?」

「だって気持ち悪いじゃない! ゴツゴツしてるわ傷だらけだわ、もう、全部気持ち悪いの!!」

「……つまり見た目が嫌って事よね。その割りにあんたの付き合う男って顔は良いけど全員クズよね」

「何よ、文句でもあるって言うの!?」


「まま、あのおじちゃんたちすごく大きいね?」

「シッ! 見ちゃいけませんっ!! 食べられちゃうわよ!?」


(食わねえよ)


 思わず心の中で突っ込みを入れる(おとこ)だった。

 そして、門前のざわつきの原因は全て自分達一行であった事を知る。


(原因こいつらか。衛兵呼ばれてるっぽいけど大丈夫なのか? 俺まで巻き添えはゴメンだ)


 食事も貰って、此処まで連れて来て貰っているというのに、全くもって薄情な(おとこ)である。そして、さり気なく自分を騒ぎの原因から外している。

 まぁ、現時点ではその通りなのだが。


(しかし、あの女の言う事はムカつくな。男は顔が良くないと価値が無いとでも言いたいのか? その割りには自分の男はクズしかいないみたいだがな。ハッ! ざまあみろ!!)


 ……何か、過去にあったのだろうか。ヤケに暗黒面を背負っている気がする。このまま闇落ちしないか、非常に不安である。

 入れませんでした。まだ門前です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ