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どうやら、騒動は重なるものらしい

 本日二話目の投稿です。こちらが本来本日投稿する予定だった話となります。

「さて、楽しい時間はこの辺でお開きにして……この後は楽しくないお仕事の時間だな」

「うげぇ……」「何で今言うんだヨ……」

「今言わないと、サミュエルは逃げようとしかねませんからね。リュシアンはともかく」

「何で俺を名指しなんだよぉ……」「日頃の行いって大事だナ」

「あん?」

「不満カ?」

「やんのか、ごるぁ!」

「仕事前にやる気は無えヨ」

「はいはい、その辺にしとけお前ら。テオドールさんが参加したそうに見てるぞ」


 大量にあった料理も全て無くなり、食後の茶を飲みながら談笑していた彼らだが、ロランがチラリと窓の外を見て発したセリフによって和やかな空気は一瞬にして消え失せた。

 やる気のなさそうな愚痴を漏らす二人を一睨みしてからアンリが苦言を呈する。特にサミュエルに対して。

 その事へサミュエルが不満を漏らすと、即座にリュシアンが混ぜっ返す。ピキッ、とサミュエルがこめかみに青筋が浮かばせてリュシアンに詰め寄るが、仕事前を理由にかわされる。それでもなお言い募ろうとしていたが、ロランの言葉に二人同時に動きを止めるとソ――っとテオドールの方を窺う。そこには目をキラキラと輝かせた笑顔で、手をワキワキさせながら混ざりたそうにウズウズしているテオドールが居た。


「続けるか?」「「やめとく(ク)」」


 賢明な判断である。二人の言葉に口を尖らせている大人気無いおっさんはスルーして、ロランは皿を抱え込んだまま眠りこけているブサを爪先で突きながら起こそうとする。

 だが、軽く突いた程度では起きる気配も無く、尻尾で思いっきりベシッ! と払われた。その事に軽く頬を引き攣らせると、容赦無く宣告する。


「アンリ、ブサを頼んだ。しっかり服の中に仕舞っとけよ。おら、お前らもじゃれてねえで行くぞ! それじゃテオドールさん、俺らはこの辺で……。今日は遠慮無くご馳走になります。ありがとうございました」

「うん、お仕事頑張るんだよ。それと、これはセヴランにお土産にして貰えるかな? どうやら、碌に食事も睡眠も取れていないようなんでね」


 そう言いながら手渡されたのは箱詰めの何かで、そこから漂って来る匂いは先程までたらふく食べていたスペシャル仕様のパイと同じものであった。

 サミュエルの目がキラリと光るが、脇腹に親指を突き込まれて軽く悶絶する。まだ食べる気なのか、この男。


「君達へのお土産はこっちだね。さっき注文した残りで悪いんだけど、良かったら」


 そう言いながら指し示したのは、テオドールが店員に頼んで持ち帰れるように箱詰めして貰っていたもので、自分達が途中から見向きもしなかった通常仕様のパイの箱であった。若干気まずいものを感じながらもありがたく受け取る。特製の箱に詰められたソレはまだかなりの熱さを保っていた。受け取ったサミュエルが、それ以上熱を逃がさないように慌てて仕舞う。恐らく、今日の夜食辺りになるのだろう。

 ロラン達がパイを受け取ったのを確認すると、そのままテオドールに促され個室から送り出された。最後にそれぞれが一礼してから部屋を出る。するとすかさず店員がテオドールの元へ訪れ、今回の会計の明細書を手渡した。

 店員の方が逆に戸惑い気味にしているソレに書かれている金額は、下手をしたら一家族が一月分暮らせそうな金額で、中を見たテオドールは心底楽しそうに笑うと店員に支払いをする。色々と迷惑を掛けた迷惑料も含めるとかなりの高額となったが、その事はロラン達には内緒である。

 テオドールにとっては、ロラン達に金を使うのもある意味出資の一つであった。



 * * * * * * * * * *



 テオドールと別れ、ロラン達がギルドに到着した時、そこはまるで戦場のような慌しさだった。


「物資の補給の出来ている班からすぐに出発だ! 遅れればそれだけ被害が広がるぞ、急げ!」

「馬車の手配は!? 途中で逃げ延びた村人を拾う可能性もある。多めに手配をしておけよ!」

「食料と薬もだ! 特に薬は必須だぞ! 可能な限り集めるんだ!」

「治癒師の方々はこちらへお願いします!」

「お、おい……こりゃ、何の騒ぎだ……?」

「さ、さぁ……? 本来なら私達もあちらに加わるべきでしょうが、まずはギルドマスターにお会いしましょう。その後の指示はギルドマスターから出るでしょうから……」

「……そうだな、まずはギルドマスターに会うのが先か」

「そう思います」

「……だな。おい! エステル!!」


 ギルドのホールには大勢の人間が集まっていた。その中にはブサの待望のケモ耳やエルフ、ドワーフといった他種族も混じっているが、騒然としたギルドの様子に気圧されたブサは全く気付いていなかった。むしろ、体を小さくして自らアンリの服の中に隠れようとする有様である。

 ラノベ主人公ならば『イベント発生、ひゃっはー!』と飛び込んで行きそうなものだが、へたれなおっさんであるブサには決して出来ない真似であった。そもそも、今はただの猫なので。


 周囲の様子に聞き耳を立てて状況を把握しようと努めながらもまずはギルドマスターに会うのが先決と思い切り、視界に入った受付嬢のエステルに声を張り上げる。

 呼ばれたエステルはキョロキョロと視線を巡らせ、ロラン達を発見するとバタバタと慌てながらロラン達に駆け寄る。


「ロランさんっ! 実は「エステル、悪いがまずはギルドマスターに会わせてくれ」……っ、そうでしたね。でも、もしそちらの用事が早めに終わったら是非力を貸して頂きたく……」

「……悪いが確約は出来ない。可能なら、と言わせては貰うが」

「はい、それは分かっています。……あ、すみません! ギルドマスターは奥でお待ちです。ご案内したいのですが、すみません」

「あぁ、エステルも倒れないようにしてくれよ? じゃぁな」

「はい、お気遣いありがとうございます。……あぁ、その箱はこちらへお願いします! 中身と個数を確認次第、順次分配しますので!」


 奥へ通じる扉を閉めると、途端にホールの喧騒が遠ざかる。サミュエルとリュシアンも背後の騒ぎが気になるようだが、すでに仕事として請け負ってしまっている以上はそれを放り出す訳にもいかない。もしもあちらを優先した方が良いのであれば、ギルドマスターの方から何か言って来るだろうと話し、二人の意識をこちらに戻す。

 何度か通った道なので迷う事も無く、すぐにセヴランの部屋に辿り着いた。扉を叩くとすぐに中から声が聞こえる。


「おぅ! ロラン達か!? 開いてるから勝手に入って来てくれ!」

「失礼します」


 中から(いら)えが聞こえてすぐに扉を開ける。勝手に入れと言うのだからすぐに開けたところで咎められる事は無いだろう。

 そして中に入ったロラン達が見たものは、大量の書類に埋もれるセヴランと殺気だった様子の美貌の枢機卿だった。

 思わず入って来た扉から出て見なかった事にしたいがそういう訳にも行かず、顔を引き攣らせながらもセヴランの反応を待つ。

 しばらくして書類のけりが着いたのか、疲れ切った様子のセヴランが口を開く。


「待たせてすまんかったな。入って来た時驚いただろう」

「……それはどっちの事に、ですかね?」

「ギルドに入って来た時の騒動だ。ん、あぁ、それと言葉遣いは改めなくて構わん。ここにいるのはワシらだけだしな」

「はぁ……」

「まずは今後の事を話そうか。その後で、今起こっている事についても説明しよう」


 書類から顔を上げると、目の下にはっきりとしたクマを浮かばせた状態のセヴランが苦笑いをする。

 チラリとロランが机の上を見やると、そこには数本の回復薬の入っていたであろうビンが空の状態で転がっており、回復薬を飲んでなお今の状態なのだという事を察する。

 溜め息を吐きながら話すセヴランを気遣ったか、途中からヴィルジール枢機卿が言葉を引き継ぐ。


「今後については私の方からお話しましょう。これは昨日お願いした通り、この後の尋問において私の護衛をお願いします。尋問の場にはギルド、教会、国のそれぞれの担当の者がおりますので不快に思う事もあるかもしれませんが、我慢して頂けると助かります。それと、これは知りたく無い情報でしょうけど、あの青年と元治癒師見習いについては相変わらずの様子です。弓使い、魔法使い、闘士の三人はある程度の自身の状況を把握しているようですが……いえ、弓使いの少女については拘束された時点で協力的だったんでしたね」

「うむ、セリアという少女についてはある程度の減刑を願い出るつもりだ」

「報告書にもその記述はありますし、私からも一筆したためておきましょう。少しは力になれる筈です。あなた達もこの後の流れについては異論はありませんか?」

 この後14時投稿の三話目分は、お詫びとして急遽書き上げたものとなります。

 閑話的な内容となっておりますので、本編からちょっと離れてしまいますがご容赦下さい。


 ここまで読んで頂きありがとうございました。

 三話目もよろしくお願い致します。

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