表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/152

どうやら、軽く締められるらしい

 元祖、壁ドン!


 元の意味ってこっちでしたよね?

 パンパン!


「そろそろ話しがしたいんですが?」

「それもそうだな。このまま時間を潰すでも良いが、流石にちょっとな」

「っつぅ……。そうは言ってもよぉ、時間的にも中途半端だぜぇ? どうすんだぁ?」

「そういや、ブサが食堂で何か言いたがってたカ?」


(あん? 俺が? ……何だっけ?)


 軽く記憶の飛んでいるブサである。それが激辛料理から来ているものなのか、それともイザベルショックによるものか、理由はどちらにせよまずは思い出すところから始めなければなるまい。



 * * * * * * * * * * *



 十数分程軽くわちゃわちゃと騒いだ後、今後の予定を確認する。

 なお、相談中に騒ぎ出したサミュエルとブサの大声に、隣室からドンッ! と壁を叩かれる事になったのはお約束である。

 ちなみに隣の部屋には直後フランシスが怒鳴り込みに行ったようだ。不憫すぎる。そして、やはりどうやって聞き付けるのか。盗聴器でも仕掛けてあるだろうか。

 壁ドンの原因となったのはロラン達であったので、慌てて謝りに行くという場面もあった。その甲斐あって、隣室の客がフランシスにぼこぼこにされる事は無かったし、ロラン達が騒いでいたのも許して貰う事が出来たのだが。


「……ハァ、それじゃ今日の予定としては、この後テオドールさんのところに顔を出すって事で良いんだな?」

「……ゼェ、ガフッ! ぶにゃぅ(そうだっつってんだろ)」


 息を切らせる程騒いだのか。それは壁ドンもされるだろう。ブサに至ってはむせている位だ。

 それにしても、余程話し合いが荒れたのかすでに文字表はボロボロである。話し合いの最中に文字表の末路を察したアンリはすでに二枚目の文字表を作り上げており、現在三枚目の予備を作成中である。その横には四枚目となるであろう、何も書かれていない紙の束が置かれていた。何枚書く気なのか。


「けどよぉ? テオドールさんの店行ってどうすんだぁ? 買い出しは今は特に無ぇぞ?」

「ぎなっ!(だから言ってんだろうが!)」


 ちなみに言ってはいない。文字表を指し示しはしたが。

 ぎなぎなと鳴いたところで話は通じぬと悟り文字表を使おうとキョロキョロとテーブルの上を見回す。だから、先程の文字表はボロボロになったというに。しかも犯人は自分である。

 ブサが文字表を探しているのに気付いたアンリがスッ、と新しい文字表を差し出す。

 それを爪先で引っ掛けて自分の前に手繰り寄せるとダシダシと表を叩き始める。……この分では二枚目がボロボロになるのもそう遅くない未来の事だろう。アンリが予備を作るのも納得だ。


 ドヤァ……


 自身の慧眼に自画自賛しているのか、アンリがさり気無くドヤ顔を披露していた。だが、それは誰に気付かれる事無く、そのまま話が進んでいく。

 ……少し、寂しい。

 心なしか先程よりもペン先の動きが鈍い。


『おれの くすり』


「だぁかぁらぁ、まだ出来てる訳無ぇって言ってんだろうがよぉ! 昨日の今日だぜぇ? 早くても数日は掛かるに決まってんだろうがぁ!!」

「サミュエル、その辺にしとけ。また隣室に迷惑が掛かるぞ」

「……ちっ!」


 見事な舌打ち。

 自身も薬を調合する事があるが故に、そんなに早く出来る筈も無いと知っているサミュエルにとっては、ブサの自分本位な考え方は非常にイラつくものであった。

 もっとも、商売としてやっていればそんな事はしょっちゅうだが。明らかに無理な納期とか。その上で催促してきたりとか。

 もっとも、ブサからしても人に戻れる可能性がある、という事で少しでも早く欲しいと思うのも分からなくはないのだが。その辺りは生産者と消費者の考え方の違いだろう。


「ブサ、お前もだ。ちったぁ周りの迷惑も考えろ。人間だって自称するならな」

「フンッ!」


(てめぇらに俺の気持ちが分かって堪るか! せっかく異世界に来たってのに、猫の体じゃ何も出来ねぇじゃねぇかよ! くっそ、人間だったら絶対チート能力があった筈なのに……そうしたら、こんな奴らぼっこぼこにして女の子にキャーキャー言われて……!)


 安心しろ、そんな事実は一生あり得ない。

 そもそも何故チート能力がある、と思い込んでいるのか。そんなものは無いと考えた方が長生き出来そうだが。

 実際にチート能力持ちのどこぞの転生者は……まぁ、午後になれば嫌でも会う事になるのだろうが。


 パーティーリーダーとして双方を窘めたロランは、サミュエルはともかく、ブサの態度に額に青筋を浮かべていた。


「おい、アンリ」

「はい? 何でしょうか?」

「とりあえず、テオドールさんとこ行くから、コイツはお前に任せる。逃げないように服の中にでも仕舞っとけ」「喜んで!!!」


 どこの飲み屋だ。

 しかも行動が早すぎる。返事をした直後にはブサを抱きかかえて撫でくりまわしていた。そのまま流れるような動きで胸元を開き、その中にブサを収める。開いた胸元から逃げられないように、首元までボタンを閉めてしまえば完璧だ。

 もう、ブサは、逃げられない。


 しばらくそこで反省すると良い。


(は……?)


「ざまぁ」


 すっきりしたようなサミュエルの顔である。


 一応、これでもロラン達はブサに配慮している。

 もしもブサが猫では無く人間であったならば、面倒事はごめんだとばかりにギルドに報告、そのまま国へと報告が上がりブサの身柄は国に保護、管理される事となるだろう。

 この事はブサが元人間と分かった後に話をしているのだが、忘れているのか、それとも本気にしていないのか。ブサの態度が段々と調子に乗ってきているので、そろそろ思いっきり締めねばならない。昨日のアンリのように。

 恐らくは午後の様子を見ていれば、ロラン達が言っていた事が嘘では無いと分かる筈だが。


「んじゃ、行くか」

「「おー」」「はい」

「ぎにゃぁぁぁぁぁ!!!(俺をここから出せぇぇぇぇぇ!!)」

「だめですよ、騒いだら迷惑でしょう?」


 ギュッ


 アンリの腕が動き、胸元に押し付けられる。


(ひぃぃぃぃぃ!? 筋肉が、筋肉がぁぁぁぁ!! 迫ってくる……っ! 顔に、男の胸板が……っ!? むさくるしい臭いがぁぁぁぁ……)


 若干トラウマを発症させているようだが、色々と自業自得である。



 * * * * * * * * * *



「おや、ロラン君。ギルドの用事はもう終わった……訳では無いだろう? 何か欲しい物でもあるのかい?」

「あ~、すんませんテオドールさん。こいつが騒ぐもんで」

「アンリ君が?」


 こいつ、と言いながらロランが指し示したのはアンリである。正確には、その腹部の膨らみだが。当然、ブサの姿はテオドールからは見えない。

 ブサがいるのは気配で察しているのでわざとである。


 自分も同じ事をした事があるというのに、嫉妬か。


「あ~……分かって言ってますよね?」

「まぁね」

「勘弁して下さいよ……。まぁ、()が今どういう感じがどうしても聞きたがって、ですね。サミュエルがまだ出来てないとは言ったんですが」

「ふぅむ、消費者は作る側の苦労は気にしないからねぇ。私だって、商人は安く買った品物を高く売るだけだって、いちゃもんを付けられた事もあるからね。移送賃とか、移動中の護衛とか、そういう経費には意識が向かないようだよ」

「そいつ、勇者っすかねぇ?」

「いや、普通の客だったよ?」


 よくもまぁ、この男にいちゃもんを付ける気になる猛者もいたものだ。サミュエルが茶々を入れるのも分かる。思わず全力で同意しかけた。


「まぁ、時間があるなら中に入りなさい。お茶でも入れよう」

「使用人に、仕事、させてやって下さい、ね?」

「う、うむ。善処しよう」


 その返事は全く当てにならない類のものである。目を合わせないのがその証拠だ。

 実際に、ブサ的考えの人はゴロゴロいます。

 自分が欲しいのだから、すぐに用意出来て当たり前的な。


 修理の依頼で1~2週間掛かるって言ったにも関わらず、翌日「もう出来てますよね?」って店に来たりとか。

 来るな、帰れ(´・ω・`)


 あと、修理代掛かる事に文句言ってきた客もいました。

「自分がどこそこでお願いした時はタダでやってくれた!」とか。なら、そっち行って下さい。

「お店なくなっちゃったのよ!」

 知らんがな(´・ω・`)


「2個お願いしたらタダになる?」なんでやねん。


「待ってたら出来るんでしょ?」出来ません。

「じゃぁ1時間位後に来るね」1週間後に来て下さい。


「おまけの粗品とかないの?」そういう店じゃないんで。


「これ古いから新しいのと交換して! 下取りすればタダでしょ!?」意味わからん。


 などなど。実話です。怖い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ