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どうやら、とんでも事実が発覚したらしい

「すみません、ブサ。魔法を解除するのを忘れてまして……状況が全く分からなかったでしょう? 本当にすみませんでした」

「あ~、忘れてたのは俺らも同じなんでな。あまりアンリを責めないでやってくれ」

「悪イ。俺も忘れてタ」

「俺もだなぁ」


 忘れていた事を素直に謝る、アンリを筆頭としたロラン達。


(てめぇら、揃いも揃って忘れてやがったのかよ! 道理で何時まで経っても魔法が解けねえ訳だわ!)


「ふしゃぁぁぁぁぁ!(この詫びは高く付くからなぁぁぁぁ!)」

「うっ……すみませんでした」

「お前らその辺にしておけ。お偉いさんの前だぞ」

「いえいえ、私の事はお気になさらず。仲がよろしいようで、大変結構ではありませんか」

「ふしゃぁぁぁぁっ!!(こんな奴らと仲良くなんぞなりたくねぇわぁぁぁぁっ!!)」

「「ブサっ!」」「このアホッ!?」「も、申し訳ありません……!」

「いえいえ、大丈夫ですよ。呪いが掛かっているわりには、意外と精神状態も悪くないようですね。安心しました」


 謝られた所で忘れられていた事実が消える筈も無く、忘れた事をねちっこく責めてたるブサ。恨みはしっかり覚えている派である。

 ブサが全身で怒りを顕にして、アンリが謝罪する、を数回繰り返したところでセヴランが止めに入った。苦笑しながら宥めるセヴランに、教会の枢機卿ヴィルジールがほのほのとした口調で感想を言う。反応がずれているように思うのは気のせいか。

 ヴィルジールに対しても怒り狂って威嚇するブサに、流石にそれはまずい! と3人がかりで押さえ付け、その間にアンリが謝罪する。特に気にした様子も無く、返答を返してきたが、その中にするっと爆弾発言を紛れ込ませていた。


(……はぁっ!?)


 驚愕の一言である。

 ブサもそうだが、ロラン達もブサの中身が異世界人である事、呪いを受けている人間である事を隠していたのだから。その為に、リュシアンの腕に締め付けられて身が出そうになりつつも、必死で声を出さないようにしていたのだから。それもこれも、猫の体を最大限有効活用してエステルや、レアといった美人とキャッキャウフフするためなのだ! 煩悩塗れである。

 その為に必死に……必死に! 耐えて来たというにも関わらず何故平然としているのか。見知らぬ人物は呪いを受けている事を知っているばかりか、この場にいる誰も驚きもしない。

 ブサのみがわたわたと焦っていると、それに気付いたアンリが話し掛ける。


「あ、そういえば……ブサはさっきの会話は聞いていなかったんでしたか」

「ぎなっ?(何の事だよ?)」

「あ~、ブサ。とりあえず、猊下(げいか)は呪いに関して()ご存知だから大丈夫だ」

「ぐにゃ?(はぁ?)」

「貴殿には改めて自己紹介しましょうか。私の名前はヴィルジールと申します。教会においては、枢機卿の地位に付かせて頂いておりますね」


(はぁ……そう言われてもな。『すうききょう』ってな聞いた事あるような気はするけど、何だっけな? 宗教関係は知らねぇんだよなぁ……)


「まぁ、特に気にしなくても大丈夫ですよ。それと、もし、君が呪いを解きたいと言うのであれば教会へどうぞ。動物化の呪いは稀ですが、解呪の魔道具はありますので。ただ……君の掛かっている呪いですが、少々気になる事が。どうも、あのアンリという青年の魔力質と非常に似通った魔力を感じるのですが……。似通っていると言うより、同じと言い換えても良い程に」

「「「「「は?」」」」」

「いえね、私は魔力質を視認出来る能力を持ってまして。まぁ、そのおかげで枢機卿になれたようなものなのですが……。それで見てみると、君に纏わり付いている呪いの魔力質が、あの青年のものに似ているんですよ。ひょっとして、お知り合いだったりしますか? あるいは双子であったり、とか」


 知り合いも何も、全く知らない。と、いうよりも覚えていない。だが、少なくとも自分に兄弟がいたという事は無い……筈だ。

 それに、突然魔力質がどうのと言われてもさっぱりである。


「猊下、少々質問させて頂いてもよろしいでしょうか?」

「はい、構いませんよ。あと、口調は楽にして頂いて結構ですよ? 枢機卿と言っても末端ですし」

「私の口調は元々こうですので、どうかこのままでお願い致します。ですが、お気遣い頂きありがとうございます。……それで、質問というのはブサの呪いの件なのですが」

「はい」

「猊下は、あの男がブサの呪いに関与している可能性があるとお考えでしょうか?」

「そうですね……はっきりした事は言えませんが、可能性としては、あると申しておきましょう。見たところ、あの青年は(いびつ)すぎますね。能力も、精神も」


(……つまり、俺を猫に変えたのはあの男って事か?)


 ヴィルジールの言葉を理解し、ブサの心にじわじわと怒りが込み上げてくる。元々、あの男はいけ好かなかったが――美少女ハーレム野郎は(すべか)らく敵である――今なら怒りを飛び越えて、殺意すら湧いてきそうだ。返り討ちにされるのが関の山だが。


「詳しくは調べてみないと何とも言えないので、早まるような事はしないで頂けると助かります。私自身が直接しっかりとあの青年を見る必要がありそうですね」

ギルド(こちら)としてはそう言って頂けると助かりますが……よろしいのでしょうか?」

「必要な事であれば。私個人としては、あの青年が頻繁に口にしていた『神に選ばれた』という言葉が気になるのですよ。神託を受ける人間は長い歴史の中でも度々現れますが、自身に正当性を主張したいが為の出任せが多いのが実情なのです。恐らくは彼もその類、だとは思うのですが……」

「違う、と?」

「考えたくない事ですが、異界の神が関わっている可能性があります」

「ぎな? ぐにゃ?(『いかいのかみ』? 『異界の神』か?)

「……なかなか、癖になりそうな声ですね」


 ……ぶちゃ猫好き同盟に一名追加されるかもしれない。

 いや、そんな事はどうでも良い。それよりも今はヴィルジールの発した『異界の神』の方が重要であった。

 セヴランからも問われ、異界の神について説明を始める。


 そもそも、ギルドという存在は異界の神に招かれた『異世界人』が創設したものなのだそうだ。この事は一般の者が知る事は無く、教会の枢機卿以上の者やギルドの総帥、国の上層部が知るのみだと言う。


 今回、セヴランやロラン達も知ってしまった事ではあるが、ブサという異世界人と直接関わり、その事実を知る事が必要だとヴィルジールが判断した為である。ちなみにセヴランが知らなかったのは何故かと言うと、セヴランはあくまでも『王都ギルドマスター』であり、さらに上の存在である『ギルド総帥』が別にいるからであった。現在、総帥は今回の騒動を治める為に教会と国のお偉いさんとを行ったり来たりの真っ最中である。

 本来なら、王都ギルドマスターであれば十分知らされても良いはずだったのだが。それにはきっと、ギルド総帥の考えがあるのだろう。多分、きっと。忘れていた、とか、そんな単純な答えでは無い、はずだ。

 

 話を戻して、異界の神によってこの世界に送られた者は大概が強力な力を持つと言う。それというのも、送り込まれた当人が強力な力を望んだからであり、神がそれを与えたからなのだと。

 ただし、そうしてこの世界にやって来た異世界人の中には、善き事をなした者もいれば、悪しき事をなした者もいる。

 善き事の中にはギルドの創設といった事から、食・衛生環境を整えたり、農業や魔道具の技術を高めたりといった事が含まれる。

 逆に悪しき事の中には与えられた力を暴力や、自身の願望・欲望を満足させる為のみに力を(ふる)い世の中に混乱を(もたら)したり、戦争の引き金になった事もあったと言う。


(内政チートに、武力チートって感じか。後の方はつまり、『悪()ち』って奴だな。……っつか、俺は神に会った訳でも無いし、何の力も無ぇんだが。それに比べてあのハーレム野郎……!)


 相変わらずの嫉妬心である。ハーレム滅ぶべし。


「猊下、質問をよろしいでしょうか?」

「どうぞ。私に答えられる内容でしたら」

「感謝致します。……異界の神が何故、異世界人に力を与えるのでしょうか。そして何故、わざわざこの世界に送り込んで来るのでしょうか?」


 この世界に異世界人を送り込むのは、この世界の神では無い(・・)。この世界の神が、世界の変化や進化を望むならともかく、異界の神がわざわざこの世界に異世界人を送り込んでくる理由が分からなかった。

 新たな人物は美中年です。

 さて、ブサとハーレム男のつながりは? 答えはまだ後の方で。

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