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どうやら、俺だけ蚊帳の外らしい

「あの男の元へ連れて行け、と? 元々そのつもりで来たんでな。そうでなきゃわざわざ来るはずが無い」

「ならば早く私を連れて行きなさい。全く、気の利かない人達ですね。まぁ、所詮は傭兵ギルドなんてところに所属している男達です。勇者として人々を救う慈悲の為に、わざわざ傭兵ギルドなんて組織に所属して差し上げたアンリとは大違い! 何をしているんですか? 早く私をアンリの元へ連れて行きなさい、と命じてあげたでしょう? さっさとしなさい。聖女たる私をいつまで待たせるつもりですか? それとも、教会に何かしら悪意でもあるのでしょうか?」


((((((この……くそアマ!!))))))


 その場にいる人間、全員のコメカミに青筋が浮かぶ。

 

 この(フェリシー)の発言はもはや雑音と思った方が良いだろう。心の安定的な意味で。

 互いに顔を見合わせると、軽く頷き合ってから扉へと誘導する。もはや無言だ。話をする気も起きない。

 もっとも、それは相手も同様に会話を望んでいないようなので都合が良かった。むしろロラン達の顔すら見たくないようだ。思いっきり顔を背けている。


 そのまま全員で周囲を囲み、無言でフェリシーを特別室へ案内(・・)する。

 恐らく、本人はロラン達が自分の護衛だとでも思い込んでいるのだろう。実際は万が一にも暴走したり、逃げ出したりしない為の番人なのだが。

 本人は横柄な態度で何かとああしろ、こうしろと口うるさく喚いているが、それらは当然セヴランに却下されていた。


 扉を開けると、相変わらず何かを叫んでいるらしき(アンリ)の姿が見えるが、ロラン達の耳には一切、音は聞こえない。

 (アンリ)の姿を見た途端にロラン達を振り切り、フェリシーが部屋の中に駆け込む。

 そのまま何かを話し掛けていたが、魔道具が発動しているので当然その言葉がお互い通じるはずも無い。自分の声が相手にも自分にも聞こえない事に気付いて、フェリシーがキッとロラン達を振り返る。が、それを無視して手首を掴み、(アンリ)の入っている牢とは別の牢へ放り込む。

 若干手荒になったが、そこは勘弁して貰いたいものだ。本当なら意識を刈り取ってからぶち込みたい位だ。それをしなかっただけ、ロラン達は優しい方だろう。


 何はともあれ、これでロラン達の仕事は終わりだ。セヴランを振り返り頷いたのを見ると、相変わらず何かを叫んでいる様子の男と、そこに追加された女を無視して部屋を出る。扉を閉めて溜め息を一つ。


「……今度こそ、これで俺達の仕事は終わりで良いな?」

「いや、最後にある方と会って貰って、それで終了だ」

「……まだ、あんのかヨ」

「安心しろ。最後に会って貰いたいのはちゃんとした御仁だからな。もっとも、何故お前達を指名したのかはワシも知らんのだがな……」

「本当かねぇ?」


 うんざりした様子のロランとリュシアン、皮肉気に呟くサミュエル。アンリは薄笑いを浮かべたまま沈黙を保っている。怖い。

 そんなアンリから目を逸らしつつ、先程通ったばかりの道を戻る。どうやら、フェリシーの居た部屋に戻るようだ。誰もいない部屋に、今更何の用があるというのか。


「まぁ、そう言うな。会って損にはなるまい」

「……どんな方ですか?」

「尊敬すべき御仁だよ。あの自称治癒師とは比べ物にならない位、な」

「って事は教会関係者、か」

「…………」


 セヴランはその問いには無言で返していた。

 ロラン達は互いに顔を見合わせるがセヴランを問い詰める事はやめたらしい。どうせ、この後すぐに会うのだから。


「入れ」

「……まぁ、仕方ない……か」


 セヴランに言葉少なく促され、誰もいない筈の部屋に入る。ぐるりと部屋を見回すが、牢が一つと監視用のスペースのみのさっぱりとした部屋である。


「そういやぁ、あの女ぁ他の連中とは一緒じゃねぇんだなぁ?」

「うむ。色々とあってな。さて、と」


 訝しむロラン達をそのままに、監視用スペースのある場所に叩くと何らかの動作をする。

 すると、壁の一部が無くなり奥の部屋が顕になった。


「隠し部屋ぁ!? ちょ、気付かなかったぞ、おい!」

「当然だ。ココはその為の部屋だからな。他人の前では上手く繕う事が多い奴はいるからな。そういう奴はこの部屋の牢に入れて、この本当の(・・・)監視スペースから見るのが目的だ。あの女は戦闘力も無かったから好都合だったしな」

「そのお陰で私は本来の彼女の姿を見る事が出来た、という訳ですね。セヴラン殿、感謝します」

「……誰ダ?」「ばっ!? このアホッ!!」

「構いません。ここには私達しかいないのですから、無理にへりくだる必要もないでしょう。一応自己紹介を。私は教会の枢機卿の一人でして、ヴィルジールと申します。……枢機卿とは言っても若輩者ですので、あまりお気になさらず」


((((いや、無理だろ))))


 いきなり教会のお偉いさんのご登場である。

 流石のロラン達もいっぱいいっぱいだった。ギルド員としてのランクはそれなりと自負しているが、流石に教会の枢機卿と直接話しをした事などは無かったので。


 ちなみに、ブサはこの時点で全く理解不能だった。何しろ、先程の魔法がまだ解除されていないので。何かしゃべってるなー? とは思っても、何を話しているかはさっぱりである。そのため、態度としては堂々としていた。


「いや……その、俺……いやっ、私達はギルド所属の者です。この度、その……騒動に巻き込まれまして、その件でギルドマスターから依頼を受けた次第です」

「様子は見ていたので承知していますよ。この度は教会の者が申し訳ない事をしました。深く謝罪します」


 しどろもどろながら何とか取り繕うロランに、深く頷きながらヴィルジールが謝罪する。とは言っても、頭を下げた訳ではないが。もちろん、それに対して文句も無い。むしろ頭なんて下げられたら全力でこちらが土下座する所存である。枢機卿怖い。


「いやいや! 俺、いやっ、私達はあのおんっ、治癒師から直接被害を受けた訳では無いので……」

「そう言って頂けると助かります。もっとも、彼女は治癒師ではありませんが。今となっては、治癒師見習いですら無い存在です。教会からの処分は決定していますので。……それにしても『勇者』に『聖女』とは、大きく出たものですね」

「ワシもそれを聞いたのは、さっきが始めてでしたからな。ロラン達の顔を見ても怯まないのは大した胆力だが、ギルドに対する発言は……」

「……そちらについても深く謝罪を。彼女の言葉が教会の総意と思わないで頂けると助かります。むしろギルドには助けられているのですから」

「その点については疑っておりませんとも。アレは例外です。……それにしても、次々と問題が出て来ますな。……この件については、あんな男をギルド員として認めていたこちらの方が責任は大きいでしょう。ギルドマスターとして、深く謝罪を致します」

「謝罪を受け入れます。それと……そちらの猫が、そうですか。なるほど……」

「「「「なっ!?」」」」


 突然ブサに焦点を当てられ焦るロラン達。教会にばれているとなると、これまで必死に隠して来ていたのが台無しである。焦るロラン達と同様セヴランも焦っていた。どうやら、セヴランがばらした訳では無いらしい。

 当の本()は全く会話が聞こえていないため、ロラン達が焦っているのは分かるものの、何を焦っているのかはさっぱりだった。


(いい加減、魔法解いてくんねぇかなぁ……さっぱり聞こえねぇ)


 焦るロラン達を見ながら、ボーっとそんな事を考えていた。のん気か。


「あぁ、警戒させてしまったようで申し訳ありません。()に危害を加える積もりはありませんし、もちろんあなた方にも。ただ、今回の件で被害を受けた見習いから、気になる事を聞いたものですから」

「気になる事? いや、それより、その見習いの方は無事だったのですか? 一応、ギルドで集めた情報では無事らしい事は分かっているのですが。それに、危害を加える事を命じたのは件の男だと」

教会(うち)には腕の良い治癒師は大勢いますので。すでに傷跡すら残っていませんよ。襲撃示唆もあの男の独断でしょう。むしろ、ケガを乗り越えたお陰で新たな技能も目覚めたらしく」

「ご無事で何よりです。しかし、新たな技能、ですか?」

「はい、希少な技能ですよ。『霊視』です」

「……それは貴重な能力を。()の事を知ったのはそれで、ですかな?」

「はい。ところで、彼には今呪いとは別の魔法が掛かっているようですが……そちらは害のある魔法ではないのでしょうか?」

「「「「「あ」」」」」


 ブサに音声遮断の魔法を掛けていたのを、綺麗さっぱり忘れていた。お陰で、ブサは今までの会話を全く理解していない。


(……話が聞こえないってのはヒマだよなぁ……何時になったら魔法解けるんだろうなぁ……)


 アンリが解除しない限り、音声遮断が解ける事は無い。当然ブサはそんな事は知る筈も無いので、ボーッと魔法が解けるのをひたすら待っていた。


(まだかなぁ……)

 自称聖女、無事隔離完了。

 残りのメンバーの移動はギルドの人達が頑張ります。


 なお、ロラン達に任せたのは教会のお偉いさんのご指名が来てしまった為。「猫を連れたパーティー」と言われたらロラン達しかいなかった。ただし、今後はモフモフ連れが増える可能性もあったり、なかったり。


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