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どうやら、類が友を呼んだ結果らしい

 毒電波ゆんゆん警報発令中です。

「……それで、この部屋にいるのが件の自称、治癒師だ。分かってるとは思うが、色々とやばい性格なんでな。まともに話しが通じると思うなよ」

「……ギルドマスター、やる気の無くなるような事言わないで下さいよ。ただでさえ、やりたくねえ気満々なのに。もう、帰っても良いですか?」

「ワシが悪かった。頼むから帰らんでくれ。頼むから」


 二度言った。相当追い詰められているようで目が血走っている。怖い。

 セヴランのそんな様子を見てしまい、顔を引き攣らせながら目線を逸らす。回り込まれた。必死すぎる。

 一度瞑目してから息を吐き、覚悟を決めて扉の前に立つ。

 ここに立っている時点で騒音が酷い。むしろ立つ前から酷い。あの(アンリ)と良い勝負だ。ただし、ブサにとっては高音な分、こちらの方が辛いように見える。


(うぉぉぉぉ!! 頭が! 頭がぁぁぁぁ!!)


 演技などでは無く本気で苦しんでいる様子に気付いたアンリが、扉を開けようとしていたロランを間一髪止める。


「ロラン、待って下さい。扉を開ける前に……」

「ん? あぁ、お前にコレ(・・)はきつかったか。すまんがアンリ、頼む」

「はい。ブサ、これから貴方に音声遮断の魔法を掛けます。もっとも、これは私はあまり得意では無い術式なので、先程の魔道具程の効果はありません。が、相当楽にはなるはずです。ただし、この魔法は拒絶されると掛かりが鈍くなってしまいますので、なるべく受け入れるようにして下さい。……それというのもですね。この魔法は掛けられる側にかなりの不快感が伴います。まぁ、私の腕が未熟なせいですが……。ただし、魔法を掛け終われば不快感はなくなります。それでも良ければ魔法を掛けますが……どうしますか?」

「にぎゃっ!(何でも良いから早くやってくれ!)」


 アンリの言う『音声遮断』という、この場において何とも最適な魔法に一も二もなく飛び付く。高速で動く張り子のトラのような動きで首を上下に振り、早よやれ! と言わんばかりだ。


 それを確認してから、アンリが魔法を掛け始める。

 瞑目して少し経つ事数秒、アンリの目が開き、指先でブサの額に触れる。と、途端に全身を不快感が駆け抜けて行った。

 確かにアンリの言った通りである。これは、かなり不快だ。

 どう説明したら良いのか。ガラスを尖った金属で引っ掻いたのを聞いてしまった時のような、あるいは、うっかり地面に落ちていた他人の汚物を踏んでしまった事に気付いた時のような。はたまた、二日酔いを起こした朝の気分のような……何とも言えない不快感であった。背筋がゾワゾワする。

 反射で背中の毛と尻尾の毛が膨らむが、少しするとゾワゾワ感も無くなり、耳から入って来ていた騒音がかなり軽減された。通常の話し声位だろう。これなら我慢出来る。


(おぉ……思っていた以上に違うんだな)


 両方の不快感から開放されて尻尾を一振り。


「どうやら上手く掛かったみたいですね。大丈夫ですか?」

「ぎなー(おぉ、あんがとな)」


(うん、想定外に快適になったわ。苦手だっつーから、もっと効果が無いものと思ってたが……)


 感謝の念も込めて尻尾をユラユラ、顔は背けているが。ブサにしては珍しい。ツンデレである。

 案の定、それを見たアンリは嬉しそうだ。分かりやすい程に満面の笑顔である。もっとも、面の凶悪さは一切薄れていないのだが。


 しかし効果が高いのもそのはず、アンリは優秀な魔法使いである。本人は苦手とは言っていたものの、そこら辺の魔法使いとは段違いに効果が高い。

 その辺の魔法使いならばそもそも魔法を発動すら出来ず、出来たとしても効果はかなり低い。

 トンネル内の掘削工事が、路上の掘削工事に変わる程度だろうか。アンリの場合ならおっさんの日曜大工程度の騒音になる。例えが微妙すぎだ。

 

「それは良かった。さて、ロラン。お待たせしました。もう良いですよ」

「あぁ、まぁ、そりゃ良かった。けどよぉ、アンリ……」

「何ですか?」

「いい加減、ブサから手を離せ」


 アンリは魔法を使う際にブサの額に触れていたのだが、魔法を掛け終わってもその手を離さないままに、小刻みに手を動かしながらモフモフと毛の感触を楽しんでいた。

 感謝の念もあって、珍しく我慢していたブサも限界である。


(さっさと離しやがれっ!)


「いたっ!」

「自業自得だ、アホ」

「うぅ……」


 ブサに引っ掻かれたが、完全に自業自得である。

 気のせいかもしれないが、引っ掻かれた場所を見て若干ニヤついているように見える。気持ち悪い。……気のせいにしておこう。


「んじゃ、開けるぜ。ブサ、てめぇは入ったら声を出すなよ」

「ぶにゃ(了解)」


 ロランが部屋の扉を開く。ノブを回す瞬間に一瞬だけ動きが止まったが、すぐに覚悟を決めて、一気にドアを開いた。

 ら、その瞬間、ロラン達の全身を勢い良く風が吹き抜けたような気がした。

 だが、この部屋に窓は無い。ならば今の風は一体何だったのか、と言うと……自称治癒師の怒声であった。監視の為に部屋にいたギルド職員は顔面蒼白で目が死んでいる。それだけでなく、若干白目を剥きかけていた。そこまでか。


「待たせたな。お前達は下がって構わん。後はワシらが引き継ぐからな。あぁ、どうせだ。他の奴らを見張っている者達に、全員を特別室に移動させるよう伝えてくれ。移動中、絶対に気を抜くな、ともな」

「……はい……承知、いた、しました……」


 声が儚い。返す言葉も途切れ途切れで、かなり消耗しているようである。

 だが、意識はしっかりあるようだ。セヴランの指示を受けるとロラン達が入って来た扉から外へ出て行く。……扉が閉まる瞬間、彼らが崩れ落ちた。大丈夫なのか。気になって耳を澄ますと、這いずりながら移動するような音が聞こえてきた。

 彼らが崩れ落ちる瞬間を見てしまったサミュエルとリュシアンは顔を引き攣らせていた。

 何しろ、彼らがそう(・・)なった原因が、現在目の前にいるので。という事は、次は自分達の番か。


「聖女たる(わたくし)に何と言う無礼な事を! アンリ共々、早く私を解放しなさい!」

「「「「「……は(ハ)(ぁ)?」」」」」


 突然の『聖女』発言にセヴランとロラン達のアゴが落ちる。初耳である。

 そもそも『聖女』なんて者はこの世には存在しない。自称聖女は度々現れるが、大抵は詐欺師であったり、井の中の蛙であったりして刑に処されるか、現実を知って引き篭もるのがほとんどだ。

 死後、多大なる功績を残した治癒師に称号として与えられた事はあるが。少なくとも、その人物が生存中に『聖女』と崇められた事は無かった。当の治癒師が自らソレを言い出した事も。

 この時点でこの女がアレだというのは分かりきった事である。


「(ギルドマスター、アレまじか?)」

「(どうやら本人はそう言い張っているらしい。ちなみに教会はその事実は無いとの事だ)」

「(って事は、あれカ。自称治癒師の上に自称聖女ってカ?)」

「(どう見ても頭イッてんじゃねぇ? 関わりたくねぇ女だよなぁ……)」

「(今更過ぎますよ。諦めましょう)」


 本人を目の前にしてコソコソと話し合うロラン達もロラン達だ。

 現にロラン達の行動を目にして治癒師の女は怒りに顔を歪めていた。


「私を前にその態度は何ですか!? 私を誰だと思っているのですか!」

「犯罪者だろ? しかも重犯罪者(・・・・)だ」

「ふざけた事を!! 私は聖女なのですよ。私は全ての者から崇められ、敬われるべき存在です。私は慈悲深い聖女ですからね、あなたの無知故の勘違いも無礼も許して差し上げましょう。さぁ、早く私をアンリの元へ連れて行きなさい。そして、私とアンリを速やかに解放なさい」

「(……ロラン、本気で相手をするナ。あのバカの所へ連れて行けってんなら丁度良イ。さっさと連れて行って終わりにしようゼ)」

「(それもそうだな。確かに好都合だ)」


 ロランとリュシアンがこっそり打ち合わせを終えると自称治癒師の女、フェリシーに向き直る。

 自分の意見が聞き入れられると確信しているのか、不機嫌そうな顔をしながらも、横柄な態度でロラン達を促していた。


 いちいち行動がイラつく女だ。顔を引き攣らせながら、コメカミに青筋を浮かべるしかないロラン達だった。

 類は友を呼ぶ、の回です。果たしてどちらが類なのか。


 フェリシーはあれです。お話の妄想に浸って戻って来れなくなっちゃった的な人。

 ちなみにアンリの外見は THE 美青年 。(見た目だけなら)


 少年時代は茶髪でしたが、年が経つに連れて金髪へと変化。いわゆる王子様プリンス的イメージの金髪碧眼イメージ。ただし、中身はお察し。

 口調はアレです。実際にいたら黒歴史間違い無しなオレ様系。素で「このオレ様に勝てるとでも思ってんのか!?」とか言っちゃう人。


 勘違い男+勘違い女+α=大惨事。




 ちなみに作者は「この私『が』勝てるとでも思うんですか!?」と言いながら全力で逃げたい系。でも逃げられずにぷちっとやられる系ですかね。

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