表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/152

どうやら、本日最後の仕事らしい

 まだまだ終わらんよ! 何度でもよみがえるさ!!

「さて、今日の騒動もやっとこれで終わりカ……」

「やけに長い一日だったぜぇ……腹減ったなぁ……」

「俺もだ。今日はもう、さっさと宿に行って飯食って寝たいぜ……」

「いいえ、その前に一度テオドールさんの所に顔を出さないといけませんよ。宿はその後ですね……」

「ぎにゃ~ん(その前にエステルちゃん達に会って行こうぜ~)」


 ロラン達は口々にぼやきながらこの後の宿の夕食に思いを馳せる。ブサだけは余計な事を考えていたが。もっとも、ロラン達はそんな事とは知らない為、宿に着いたらまずは酒だ、いや飯が先だと何とも賑やかだ。だから、テオドールが先だと言うのに。


 今回ロランが予約した『月猫亭』は王都に来た際に常宿にしている所だ。宿主とも親しくしている為、何かと融通が利くので重宝している。

 それに何より、食事が美味い。食事の量も多く、味も美味とあって言う事無しだ。ついでに言うなら酒も種類豊富に取り揃えてある。

 だが、ロラン達が特に気に入っているのは『月猫亭名物・鳥料理』であった。今回も町に入って宿を取った際に料理の予約を入れておいたらしく、その事を宣言したロランにサミュエルとリュシアンの二人は喝采を上げていた。

 それを聞いたブサの目も輝く。何しろ、最初に町に入ってから衛兵の詰め所に行くまでの間にアンリから月猫亭名物について聞いていたので、名物料理にともて期待していたからだ。

 もっとも、詰め所での用が済んだ後でテオドールとアンリの意地の張り合いに巻き込まれた挙句、テンションの上がったアンリによって意識を飛ばす羽目になったため、いくつか記憶の飛んでいるところもあるが。元々、人間としても記憶も抜け落ちているので今更である。


 そんな感じで盛り上がるロラン達と、彼らの様子を見つめるセヴランの纏う空気は天と地程にも違っていた。

 セヴランの方は、はっきり言って気まずそうに見える。

 うっかり、そんな雰囲気を漂わせるセヴランを視界に入れてしまったブサは勢い良く顔を逸らす。凄く、ロラン達(こちら)を、見ていた。

 明後日の方向をひたすら見つめるブサの様子に気付いたか、リュシアンがブサを見下ろし、次いでセヴランに真顔で視線を向ける。セヴランの頬が一瞬引き攣る。

 そんなリュシアンの様子に気付いたアンリが、次いでロランが……と次々にセヴランに視線を向けて行き、遂に全員の視線を集める事になった。この頃にはこっそりブサも混ざっている。1匹で見つめるのは怖くて嫌だが、集団ならば大丈夫である。この根性無しのヘタレめ。

 ロラン達の視線を一身に受けるセヴランは、顔全体を引き攣らせながら全身から冷や汗を流していた。


「……ギルド、マスター?」


 重く、低い声でロランが問い掛ける。とりあえず疑問系を取ってはいるが、明らかに脅しの意味が込められていた。副音声は『てめぇ、今日、これ以上俺らを働かせようってんなら……それなりの覚悟は出来てんだろうな……?』といったところか。ロラン達は、本気だ。


「……い、いや、その~……だな? えーっと「簡潔に、頼む」あ、はい。ゴホンッ! あー、ロラン達にはあの男の仲間達の移送を手t「断る」ちょっ、最後まで言わs「うっし、テオドールさんとこ行くかー」……最後まで、言わせてくれんか……な……」

 

 (アンリ)の仲間達の牢を移動させる手伝いを頼みたかったようだが、ロラン達はあんな地雷臭漂う女達の相手などごめんだった。いくら全員がそれぞれ異なった美少女、美女の集まりだとしても。

 故に、セヴランには最後まで言わせない。

 とは言えロラン達も鬼では無いので、自分達に出来る妥協点を提示する。


「さっき話したセリアっつー嬢ちゃんだけなら良いぜ」

「彼女はギルドに協力的になってくれたからな、わざわざ手伝って貰わなくとも問題無い。手伝って欲しいのは彼女以外の「断る」……だろうな……」


 全く妥協になっていなかった。


「では、依頼という形を取るから、頼まれてはくれんか?」

「……正直、本気で気が進まないんだがな」「そこは本気ですまん」


 そう言いながらセヴランがロラン達に頭を下げた。非情に気まずい。

 廊下に立っている見張りがチラリとロラン達に視線を投げかける。ロラン達の気まずさがさらに増した。

 頭を下げたままのギルドマスターの姿を見て、客観的に見たロラン達の光景を想像して、せめてもの抵抗として苦虫を口一杯に含んでから噛み潰したように、全力で『私、不機嫌です!』と顔に表しながらアンリに話し掛ける。


「……アンリ、どう思う?」

「だから、何故そこで私に振るんですか、と……まぁ、いつもの事ですね。ギルドマスター、ちなみに依頼の報酬には何を?」

「……お前達が通常護衛を受けるのと同額を「手持ちには困っていません」……だよなぁ。逆に聞くが、何が希望だ? 出来るだけ希望に沿うようにするが」

「そうですねぇ……」


 彼女達の牢の移動はギルドからの指名依頼という形を取るらしい。その上で、依頼の報酬としてこちらの希望に沿ってくれるようだ。つまりは、それだけ切羽詰っているという事か。それは、あの男の仲間達が、揃いも揃って厄介者という事を指していた。

 類は友を呼び過ぎである。もう少し、手加減してくれても良いんですよ?


 そして、よくよく耳を澄ましてみると何処かからか、ギイギイと喚きたてる甲高い女の声が聞こえてくる。というか、耳を澄まさなくても聞こえる。今まで気付かなかったのは、あの(アンリ)の喚き声で耳が麻痺していたかららしい。

 一度気付いてしまったら無視するのは不可能だった。とても、うるさい。ブサは耳を両前足で押さえていた。無駄な足掻きだったが。


「……あ〜、出来りゃぁ、気付きたく無かったなぁ……」

「凄え耳障リ。ギルドマスター、これ、どいつの鳴き声ですカ?」

「……自称、治癒師の女だ。ちなみに、お前達に頼みたかったのもこの女になる」


 セヴランの言葉に全員の顔が一斉に歪んだ。

 先程の見張りがぎょっと目を剥いて、思わず剣を抜き掛けた程である。その後、慌てて表情を取り繕っていたが。

 ちなみに、ロラン達がギルドを出た後にセヴランがその事について問い質したら『ギルドマスターが殺されるかと思った程の凶悪な面相をしていたので』と答えたという。もちろん怒られた。なおかつこの事件が終わるまでは牢のある階層の見張りは彼に決定した瞬間である。当然、拒否権は無かった。


 それはさておき、セヴランの言葉は流石に無視出来なかった。もちろん、許されるなら全力で無視をしていたいところだが。


「あるいは、盗賊ギルドの脱走奴隷のどちらかだが……どっちが良い?」

「……どっちも地獄じゃねえですか……」


 頭を押さえたままロランが呟く。


「すまん」


 それに対する返答はたった三文字しか無いものの、万感の込められた一言だった。


「まぁ、仕方ないですね……。ギルドにとって厄介な方を俺らが受け持ちますよ。それで良いですかね?」

「……感謝する。流石に今回の件ではあちこちに人員が出払っていてな。教会との繋ぎも取る必要があるし、盗賊ギルドも同じ事をせねばならないし……後始末に、謝罪にと、しばらくはワシの睡眠時間は無いものと覚悟してるさ」


 今度はセヴランが頭を押さえたまま呟く。

 今後のセヴランの苦労を考えると、流石に無下には出来ない。

 共にギルドの理念を遵守する者として、ギルドから出た罪人に甘い顔は見せられない。と、格好良さそうな事を言ってみたが実の所。


「まぁ、ギルドに恩を売っておけば後々有利になりますからね」

「それを言うなよ、せっかく黙ってたのに……」

「お前もナ」「てめぇもなぁ」

「お前ら……」


 色々と台無しである。


「ぎなっ(どうせなら今の内にぼったくってやりゃ良いのに)」

 上げて、落とす。

 まだだ、まだ終わらんよ!!


 勘違いお嬢次話登場。全力で逃げろ!



~若干補足:魔道具について~


 今話登場の魔道具ですが、部屋全体が魔道具となっています。故に特別牢。


 魔法使い殺し的な魔力阻害や、身体能力強化系術式妨害、音遮断など凶悪犯の拘束に特化した便利機能がモリモリです。ドラゴンが襲ってきても大丈夫、なレベルで頑丈です。

 ので、衛兵詰め所に設置してある牢では不十分と判断された際には、ギルドの特別牢を貸し出す事もあったりします。有料で。


製作者:ドワーフ集団 流石ドワーフ。略して、さすどわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ