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どうやら、視点を変えてみれば良かったらしい

「ふむ、なるほどなぁ……。確かに、その考え方ならばあの男の言動にも説明がつくか……」

「はい。ですので今話した内容は、ギルドマスターの方でお好きに使って下さって構いません。その代わり、私達が言い出したという事は言わないで頂きたいのです」

「うぅむ……あの男の言動を理解する上で、認識を変えるという点では、この情報は役に立ちそうだからな。お前達から出たという事を向こうに話さないというのも、まぁ、良いだろう。だが、真偽官がいる以上は隠し通せるか分からんぞ?」


 セヴランの懸念ももっともである。何しろ相手は『真偽を見抜く』事が出来るのだから。もしも『あなたが思い付いたのか?』と聞かれたら終わりである。例え『是』と答えたところで、真偽官の目には『嘘を吐いている』と分かるのだから。


「……そこは、ギルドマスターの方で何とか辻褄を合わせて貰えれば、と思います。それに、信用度としてもギルドマスターが思いついたと言った方が、相手方も納得いくでしょうから」

「ふむ……」


 セヴランは腕を組んで思案顔である。

 正直、アンリから説明された話には納得いく点もあり、それを前提とすれば何とか区切りもつくかもしれない。それは、短時間あの男と対面しただけで精神的に疲労し尽くしたセヴランにとって、天啓にすら等しかった。あるいは悪魔の(ささや)きかもしれないが。

 そう考えると、その後の決断は早かった。


「よし、その案に乗ろう。この件はワシが思い付いたものとして話しをしてみる。辻褄としては……先程ワシと共にセリア嬢の話を聞いた際の事を再確認していて、ワシが思い付いた、とでもしておくか。……だが、確実に隠し通せるものでは無い、という事だけは了承しておいてくれ」


 セヴランの言葉に、ロラン達は顔を見合わせると各々頷く。


「はい、それでお願い致します。面倒事を押し付けて申し訳ありませんが、よろしくお願いします」

「むぅ、そう改まって言われるとこの事を思い付きもしなかったこちらとしても微妙なトコロだな。まぁ、善処しよう」


 何とかセヴランとの密約も済んで一安心である。

 だが、これで終わった訳では無いので、ロラン達は再びあの部屋に戻らなければならなかった。

 結局、まだこの騒動から開放される事は無いのだ。

 それをセヴランから説明されて、これで開放されると思い込んでいたロラン達は全員肩を落とすのであった。合掌。



 * * * * * * * * * *



「審問官殿、話を中座して申し訳なかった。その上で少々お話ししたい事が出来たのだが……」


 部屋に戻ったセヴランとロラン達だが、戻った時点でも話は堂々巡りを続けていた。

 いっそ罪が確定しているのならば、さっさと処刑なり罰を与えるなりしてしまえば良いと思うブサだが、これにはちゃんとした理由があるらしい。

 この世界では輪廻転生という認識がなされている。善人ならば、生まれ直しても善人として生まれる、と信じられているのだ。逆に、罪を犯した者が罪を悔いる事無く死ぬと、来世でも罪人となると言われていた。さらにその場合、来世では前世の時より重い罪を犯す事が多いとも。

 故に罪人を裁く際には、徹底的に相手の心を折り、自分の罪を自覚させ、その事を心の底から悔いるようにしなければならない。

 そうしないと現時点での罪人は減るが、十数年後あるいは、数十年後に、より凶悪な犯罪者を生み出してしまうとされていた為だ。


 ちなみに、先日テオドールの護衛時に遭遇した盗賊達に対しても、本来は同様の処置が取られる事となっていた。

 ここで『本来は』と称したのも、衛兵に引き取られた時点で全員心はバッキバキにへし折れていたので。ちなみに、その後の尋問でも全員が大人しく自白したらしい。その際『何でも話すから早く俺達を牢に入れていくれ! 早くしないと、あの男に殺される……!!』と恐慌状態に陥っていたのは蛇足である。

 もちろん衛兵に引き渡した以上、あの男達を殺す気はテオドールにはさらさら無かったのだが。


 蹂躙中に徹底的に心をへし折っていたのは、上記の理由があったからのようだ。

 ……八つ当たりが主な原因であったように思えてならないが、それはきっと考えてはいけない事なのだろう。


 ……そうこうしている内に、どうやらセヴランの説明も済んだようである。審問官も、流石にそれには思い至らなかったようで驚いていた。

 なお、この件でセヴランの株が上がり、有益な意見を出したとして国から報奨金が出て物凄く焦る事になるのだが、それはまだ先の事であった。


 話を戻そう。


 セヴランの話を聞いて、審問官達は(アンリ)に真偽官の技能について改めて説明をし始める。

 初めは胡乱げに聞いていたのだが途中からは理解し始めたらしく、自分が罪人として疑われているのは事実なのだと自覚し始めたようだ。疑うも何も、事実なのだが。

 真偽を見抜く能力はラノベでもテンプレ的な能力の一つだ。なので、男も知っていて当然だったのだが、本気で自分を物語の主人公、あるいは神に選ばれた英雄のような者と思い込んでいたので、審問官達の言葉を全く信じようとしなかったのだ。

 同時に真偽官が制約のために嘘を吐けないというのも知らされる。


「ふ、ふざけるな! 俺が罪人だと!? ……じゃあ、オレの仲間達にも聞いてみろよ! ココ(・・)で! 俺の目の前で! みんなが証明してくれるさ、オレは犯罪なんかしていない!!」


 それは男の苦し紛れの言葉だったが、その言葉が後に自分をさらなる絶望に落とす事になるとは、思ってもいない男だった。


「もちろん、あなたの仲間にも別室で話を聞いている最中です。そちらが終わり次第、此方に連れて来るように致しましょう。もっとも、今日中は流石に無理ですね。罪人のあなた達と違って、罪を犯していない私達や、情報提供などをお願いしている彼らには休息を必要としますので」


 ……審問官達も相当にイラついていたらしい。その言葉には男への皮肉が至る所に散りばめられていた。

 審問官の『罪人のあなた達と違って』と言う言葉に顔を歪めていたが、不承不承(ふしょうぶしょう)ながらも審問官達の言葉に頷くのであった。

 男もいい加減怒鳴り続けて疲れてもいたので。


「……休んでいる間に俺の仲間達を拷問にでもかける気じゃねぇだろうな?」


 それは明らかに余計な一言であった。

 その言葉を聞いて、審問官達のコメカミに血管が浮かび上がる。

 審問官と言えど、常に冷静でいられる訳では無い。全く怒りを感じない訳では無いのだ。彼らも人間なので。


「それでは、あなたの仲間の方達もあなたから良く見える牢にお入れ致しましょう。そうすれば、あなたも彼女達の無事が分かって安心出来るでしょうし、私達がそんな事をしないという証明にもなりますよね? もっとも、あなたの場合は特別牢に入れられているので、必然的に彼女達も特別牢に入れる事となりますが。もっとも、入って頂く部屋はそれぞれ別部屋となります。それと、姿は見えますが会話は出来ないような処置を取らせて頂きます」

「ふざけんな! オレ達に牢で一晩明かせって言うのか!? しかも、仲間達と話しもさせて貰えないってのか!」

「罪人には当然の処置です。ギルドで起こした騒動については現行犯が確定していますので。何しろついさっきの事ですから、ギルドの職員や居合わせた方達が証言して下さいましたよ? あなたが一般人に武器を振るった事、それとあなたの仲間の一人がギルド内で武器を他人に向けていた事も。それに会話に関しても、あなたがこちらの自白の強要を心配するのと同様に、私達もあなた方が証言を口裏合わせしないよう心配なんですよ。そちらの要望には配慮したのです。こちらにも同様の事があって当然でしょう?」

「ぐぅ……っ!!」


 流石にギルドでの件については言い逃れは出来ないようだ。

 男自身がエステルにやり込められたばかりなのは記憶に新しかったので。もっとも、エステルは正論しか言っていなかったが。

 ギルドで騒動を起こした事は、流石の男も自覚していた。反省するかどうかは別の話である。


 審問官の懸念についても。そちらに関しても納得するかは別の話だったが。

 この世界の常識だけで考えようとすると、アンリの行動は意味不明でしかありません。もっとも、現代の常識からも物凄い勢いでぶっ飛んでますが。

 

 それと、自分の要望を通そうとするならば、相手の要望も受け入れる事が必要となります。


 この男の場合は 自分=特別な存在 と思い込んでる所もあって、全ての事が自分の思い通りに回ると勘違い街道驀進中でした。しっぺ返しはでかいです。

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