どうやら、ハーレム男は罪を認める気は無いらしい
しばらくハーレムパーティーのターン!
まずは男から。
「よう、やっと来たな」
疲れ切った様子でセヴランがロラン達に話し掛ける。
怒鳴り続ける男は、こちらを見る事もしない。どうやら、ロラン達が入って来た事に気付いてすらいないようだ。
「遅くなりまして申し訳ありません」
ロラン達としては出来る限り早くに戻って来たつもりなのだが、それを表に出す事無くセヴランに謝罪する。
「いや、すまん。責めたつもりは無い。だが、あの男の話をずっと聴き続けるのも辛くてなぁ……」
深々と溜め息を吐きながら弱音を吐くセヴラン。さっき会ったばかりなのに急に老け込んで見えた。本人に言ったらどうなるかは当然分かり切った事なので、誰も口に出す事は無いが。
「……ひょっとして、ずっとあの調子なんですか」
未だに喚き続ける男を見ながらロランが問う。
現在男に詰問しているのは見知らぬ男達だが、彼らもまた、ウンザリしているように見える。
「ギルドマスター、彼らは?」
「国の審問官達だ。流石にあの男の件はギルドだけでは裁けないのでな。急ぎ上に報告し、来て貰ったのだ。教会の枢機卿も別室に来ている」
ロラン達が考えていた以上に大事である。
ここまでするとは意外だったのか、全員目を見開いていた。イマイチ理解していないブサを除いて。
「……そこまでですか」
「うむ。ワシもギルドにはあまり国を立ち入らせたく無いのだがな。それだけ、あの男の件が重大だという事だ」
ロラン達に詳しくは告げないものの、この件ではかなり色々と言われたようだ。ウンザリとした顔をしている。
「ギルドマスター、あの男は何なんだぁ?」
サミュエルが差したのは、セヴランが審問官と言った男達の一人だ。
顔を出している他の男達とは違って、顔をヴェールのような物で隠している。サミュエルは男と言ったが、見た目から判断するのは難しい。身長的には男に思えるが、全く肌を見せないその外見は異様の一言である。
「あの者は真偽官だ」
「あいつがか……!」
ロラン達は驚いているようだが、ブサにはさっぱりだ。審問官も真偽官も初耳である。
「あぁ、ブサは彼らの事は分かりませんよね。彼らは国に直接仕えている方達で、特に真偽官は国全体でも十数人しかいない特殊な技能を持っています。審問官というのは訴えのあった件について、国が詳しく調べる必要があると判断した際に派遣されてくる人の事です」
(特殊な技能?)
クリッと首を傾げるブサ。鳴き声は出さない。
ギルドに戻って来る前にアンリから注意されていたため。なるべく男の注意を引かないようにした方が良いと判断したからだった。
何しろ、ブサは見た目は猫だが実際は人間だし、その上異世界の住人なのだから。この場に国の審問官達がいるならなおさらである。
魔道具も制約も取り払える男ならブサの呪いを解く事が出来るかもしれない。
だが、それをすると対価としてあの男に何を要求されるか分からないし、ブサの事が国にもバレる事になる。ブサは研究のための検体になるのはゴメンだし、ロラン達も多少なりとブサに愛着があったので。アンリ以外は分かりにくいが。
そもそも、あの自己中心的な男がロラン達の頼みを聞くとは思えない。
「あぁ、あの男か女か分からねえ、全身隠してる奴がいるだろう。あれはその能力の特性上、誰に狙われるか分からないって理由であんな格好をしているんだろうな。今見えている身長も、実際の身長かは分からねえしな」
「真偽官の能力というのは、相手の会話の真偽を見抜く事が出来ます。それだけではありません。テオドールさんの所でも話したと思いますが、相手の情報を見る事が出来るんです。真偽官から見たら、王の影武者だろうと簡単に見抜けるんですよ」
「んで、審問官っつうのは……どう言や良いかな。ザックリ言うなら、国の調査官ってところか?」
ブサの疑問を受けて、ロランとアンリが交互に説明する。それによると審問官は警察官、真偽官は裁判官といったところだろうか。
ちなみに、衛兵よりも審問官の方が立場は遥かに上である。審問官が警視正、衛兵が巡査官のようなものだ。
なお、真偽官の言葉は絶対である。
彼らは真偽官となる際に決して嘘を付かぬように、魔道具を用いない方法で制約を掛けられる。これは奴隷契約よりも余程キツイものだ。それを無視して嘘を付いたりすれば、制約のペナルティとして死よりも辛い制裁を受ける。ちなみに制約で死ぬ事は無い。真偽官の能力は貴重なので。
それ故に、真偽官の下す判断は万人から信用されているのだ。王の言葉よりも正しい、と言われる事もある程に。
そんな感じで背後の騒動を気にもせず、相変わらずノンビリとブサとロラン達は話していた。真面目なシーンが色々と台無しだ。
なお、ずっと男の妄言に付き合わされていたセヴランは、見るからにホッとした様子である。
だが、いつまでもノンビリしている事も出来ず、再びセヴランが審問官から呼ばれる事となった。それと同時に、男はロラン達の存在にも気付いたようである。
「てめぇっ!! てめぇらがオレを陥れやがったんだな!」
ロラン達に気付くなり、勘違いの罵声を浴びせかける。
相変わらず、自分の都合の良いようにしか考えない男だ。明らかに冤罪であった。
「オレは神に選ばれた人間なんだ! そのオレが、犯罪者になるなんて有り得ない! それなら、てめぇらがオレを陥れたに決まってんだろうがっ!!」
男の罵声に、対峙していた審問官達の視線が一斉にこちらに向く。
すると、セヴランが真偽官と称した人物が一瞬、何かに驚いたように身動ぎをした。だが、それはほんの一瞬の事で、今はもう、何事も無かったかのように悠然と立っている。
そのほんの僅かな反応に、審問官や男は気付かなかったようだが、真正面に審問官達を見る事になったロラン達は気付いていた。
彼らに気取られない程度に体勢を整えるロラン達に審問官が話し掛ける。
「……と、この男は言っていますが、あなた方の回答もお聞かせ願えますか? あぁ、口調を改める必要はありません。話しやすい口調でどうぞ」
自分達に気を遣う事は無いと言いつつも、ロラン達には気遣う様子を見せている。
だが、審問官の淡々とした口調にブサの背筋を寒気が走る。
(何だ? あの男……何だか気味が悪いな……)
「ハァ……全くもって見当違いだな。そいつとは今日、門前で会ったばかりだし、王都以外でも散々罪を犯しているんだろう? それを、どうやって俺らが陥れるって言えるんだ。それ以前に、陥れる理由が無い」
ロランの言葉に、審問官が真偽官を見やると、真偽官は一つ頷く。ロラン達の言葉に嘘は無いと判断したようだ。それを見て、審問官は再び男に向き直る。
「……と、いうのが彼らの証言ですがあなたの意見は変わりませんか?」
「んな訳無えだろ! あいつらが嘘を吐いているに決まってる! オレを誰だと思っていやがる!!」
「推定犯罪者ですが」
「ふざけんなぁっ!!」
男と審問官の対話に、ゴフッとロラン達が吹き出しかける。淡々とした口調故に、破壊力は抜群だった。
特にツボに嵌まってしまったリュシアンには辛い事だった。まさかこの状況で笑い出す訳にもいかない。
うっかりすると笑い出しそうになるのを、体全体に力を入れて必死に堪えていた。両腕にブサを抱えている事も思わず忘れて。
徐々に締め付けてくる両腕に、ブサは悲鳴を上げそうになる。だが、部屋に入る前の約束がそれをさせない。
ちなみに、ブサとロラン達の間で交わされた約束は『部屋に入ったら許可無く声を出さない』というもので、破った場合には罰が与えられる。罰の内容は『二度とエステル達に近付けさせない』というものだったので、ブサには効果覿面である。
『ブサの事情を全部バラす』というのも候補に上がったが、万が一を考えてそちらは却下となったようだった。
そして話は戻る。今の審問官と男の問答だが、こちらに関しては真偽官は首を横に振っていた。その事実は無いという事だ。
審問官達の目が厳しくなる。
「さて、一体どういう事でしょうか。あなたは先程から自らの非を一切認めようとしておりませんが、真偽官の判断ではあなた自身に非があると出ております。今回、そちらの方達に来て頂いた件についても、です。これらに関しては、どうお考えのでしょうか? それとも、まだ自分に非は無いと仰いますか?」
「当たり前だろう! さっきから何度も言ってんだろうが!!」
この時点で審問官達は男が罪人であると確定している。素直に罪を認めれば若干の恩赦はあっただろうが、頑なに罪を認めようとしない以上もう、どうしようも無い。
ギルド員として登録してからハーレムパーティーを作り上げ、これまで好き勝手に動いていた男は完全に詰んでいた。
〜補足〜
この話の中では
道具の情報を調べるのは『鑑別』
人間の情報を調べるのは『鑑定』
としております。
無生物か、生物の違いで分かれます。なので『鑑定』された場合、ブサの情報は丸わかりです。異世界から来たというのも。
相手の嘘を見抜く、というのも能力の応用編です。ちなみに、国が抱えている『鑑定』能力の持ち主は数人いますが、真偽官として現在いるのは一人だけです。後継者育成中。
なんでそんな凄い人が来たかというのは……お分かりですよね?
ハーレムざまぁまでのカウントダウン開始。
なお、明日は猫又主の公開日なので、こちらのお話はお休みとなります。次話は3月19日の公開です。よろしくお願いします。




