どうやら、ハーレム男との再々会らしい
「ハァ〜〜……行きたくねぇ」
「サミュエル、諦めロ」
「そんなの、俺ら全員同じ気持ちに決まってんだろうが。誰が好き好んで、あんな奴らと関わりたいと思うんだよ」
「愚痴っても仕方ありませんよ。テオドールさんも言ってたように、用が早く済むのを祈りましょう」
テオドールの店を出てギルドへとさっき来た道を戻るが、ロラン達の足取りは重い。店へ向かう時のスピードが嘘のようだ。
時々、行きの時にすれ違った人と行き違うが、皆ギョッとしたように足を止めたり、ロラン達を大きく避けて歩いている。変な連中には関わりたくないと思うのは街の住人達も同じだった。世の中は世知辛い。
「ぎなー(ハーレム男なんぞ死ねば良い)」
痛めつけられた事を根に持ってか、ブサのコメントは辛辣だった。いや、単なる僻みである。
ちなみに彼は、この年に至るまで女性と付き合った事は無かった。なので、もしも人間に戻れたならばこの世界なら本当に魔法が使えるようになっているかどうか、試してみても良いかもしれない。
地球で言われている冗談が、異世界で証明されるかもしれない、格好の機会だった。
* * * * * * * * * *
「あ〜ぁ、遂に来ちまったなぁ……」
ギルドに入るなり、大きな溜め息と共にそんな言葉を漏らすサミュエル。いきなり失礼な男だ。
ギルドを出る前とかなり入れ替わっているが、先程も居合わせた男達がサミュエルの言葉に不快そうにしている者達に、ロラン達が巻き込まれた騒動の内容を説明していた。親切な男達だ。いや、彼らはただの野次馬だった。仕事の相談をするでも無く、ただ駄弁っているのがその証である。
仕事しろ。
受付嬢達の視線は冷ややかだった。
男達の内の一人は、そんな受付嬢達の視線を受けてフルフルと体を震わせていた。その表情は恍惚としている。変態だ。仲間達はそんな変態に決して視線を向けようとはしない。彼のソレはいつもの事なので。
ちなみに、彼はとある職員に貢いでいる一人だった。もちろん、貢ぎ物が売り飛ばされているのは承知の上で、だ。
彼は良く訓練された変態だった。色々と手遅れである。
ギルドの中にそんな変態がいるとは知るはずも無く、——知っていても関わろうとはしなかっただろうが——ロラン達は慣れたように受付に近付くが、混み合っていたので大人しく列に並ぶ。もちろん横入りはしない。ロラン達は常識人なので。全く人は見た目によらないものである。
「ロランさん! 話は伺っておりますので、どうぞこのまま中にお進み下さい!」
ザワザワと騒つくホール内を、女性の声が響く。ロラン達も良く知る、エステルの声だ。
ちなみに、エステルの声が聞こえた途端にブサが暴れ始めたのはお約束である。もっとも、そうなるだろうと予想していたリュシアンにギッチリと首根っこを掴まれていたが。エステル達の元へ走り寄ろうと必死だ。
だが、リュシアンもまた、ブサを離すまいと必死である。いっそ簀巻きにするべきか、と思考が危険な方向に飛びかけるが必死に耐える。『簀巻きにした方が楽だよ』悪魔が囁く。……乗るべきか、否、今それをするには目立ちすぎる。それは悪手だ。
結局はリュシアンは首根っこを掴んだまま、サミュエルの手も借りる事を選んだ。無難な手である。
なお、今度は油断しない。また机に齧り付かれるのはごめんなので。
「悪いな、先に行かせて貰うぜ」
一応並んでいる男達に一言掛けると、ロラン達を知ってる者達は快く、知らない者達は不満そうにしながらも渋々と先へ促す。
なお、不満そうにしている者達には先程の騒動を知る者達が丁寧に説明していた。親切な男達と思いきや、ニヤニヤとニヤついている顔は面白がっているのが明白である。
こうして、王都でもハーレムパーティー達の所業は知れ渡っていくのであった。外から来た者達の中にはチラリと聞いた事がある者もいたので、それも合わせて男達の話は盛り上がっていた。
情報収集はギルド員として当然だ。否、単なる下世話な好奇心である。
男達にとってハーレム男は憎むべき敵であった。
ハーレム男を肴に盛り上がる男達を見て、たまたまギルドに居合わせていたとあるパーティーの女性ギルド員が呟く。
「だからモテないのよね」
男達は一斉にその場に崩れ落ちた。言ってはいけない一言だった。
話に加わっていなかった男達は内心で胸を撫で下ろす。一緒に盛り上がってはいなかったものの、心の中では彼らと同じだったので。
それを表に出しているか、出していないかの違いが分かれ道であった。
実際に彼らはリア充だ。中には、ちょくちょく貢ぎ物を貰っては服や食事が豪華になる、件の女性職員と付き合っている者すらいた。
本当に、貢いでいる男は報われない男である。ひょっとしたら、その状況すらも彼にとっては快感に変わってしまうのかも知れないが。
今も、他の男達と共に崩れ落ちながらも頬を紅潮させ、恍惚としながら涙を流していた。とんでもない変態である。
* * * * * * * * * *
「ロラン様方、ギルドマスターがお待ちです。どうぞ、此方へ」
奥の扉を入ってすぐ、先程ギルドマスター室にいた秘書風の男が立っていた。
ロラン達に一礼すると、先に立って案内をし始める。先程とは別の場所に連れて行かれるようだ。
「さっきとは別の場所なんだな」
「はい、件の男は警戒のため、特別牢に入れたままにしております。余程の事が無ければギルド員が立ち入る事はありませんが、今回は特殊な事情があるため、そちらに皆様もご案内させて頂きます」
丁寧な態度でロラン達を案内しつつも、ハキハキと説明する。流石はギルドマスター付きの秘書だ。有能な男である。
特殊な事情と言われ、ロラン達は首を傾げていたが、この場で彼に尋ねる事はしない。どうせ、セヴランから説明があるだろうし、必要が無ければそもそも案内されないのだから。
案内を受ける前にチラリとブサを見下ろすが、秘書の男にそのまま促されたのでブサも共で構わないと判断する。
ちなみに、各ギルドの秘書にはギルドマスターと同性の者が配置される。
これは過去にギルドマスターと秘書が恋愛関係になり、ギルドの機密事項を漏らしてしまった事があるからだ。それ以降、ギルドマスターと秘書は同性である事が義務付けられている。
万が一、同性でも恋愛に発展してしまったらどうするのか。その場合は即、去勢である。むごい。そもそも、恋愛に発展させなければ良いのだが。
当然、この秘書はギルドマスターに恋慕してなどいない。むしろ愛妻家だ。リア充め。
ブサが知ったら歯噛みする事だろう。ブサにとっては、リア充もハーレムも敵である。だからモテn(以下略)。
(何か、今凄えイラっとした)
気のせいではない。
「此方です。お連れの方もご一緒に、このまま中へお入り下さい。私は立ち入りを許されておりませんので、此処で失礼させて頂きます」
ロラン達の案内を終えて、秘書の男は一礼する。彼の仕事は此処までだ。
当然、盗み聞きや覗き見などはしない。ギルドで働く者の基本である。
特に、秘書である彼が無駄に好奇心を発揮させる事は無い。そんな事をすれば仕事を失うし、信用も失くす。そうなれば最愛の妻からも離婚を持ちかけられるかもしれない。
それにどうせ、情報の共有が必要と判断された内容は後程セヴランから直々に話されるだろうから。
それはさておき、まずはこちらの件を片付けねばならない。
ロラン達が秘書の男に促されて扉を開けると、途端に騒音に襲われる事となった。驚いたブサの毛が爆発する。
(うるっせえぇぇ!!)
「だから! オレは神に選ばれた人間なんだって言ってんだろうが!!」
ロラン達全員があまりの騒音に耳をキーンとさせながらも、その部屋に入って一番最初に理解出来たのはそんなセリフだった。意味が分からない。
こっそり変態が生息中。
実際、苦痛が快感に変わるならば普段の生活もだいぶ変わるんでしょうねぇ。この花粉症の苦しみも苦痛に変わるのだろうか。
私の場合は杉、ヒノキ、ブタクサ、キク、イネと、オールシーズン網羅しています。杉が一番辛い。
ちなみにこれ ↑ を友人に話したら二度見されました。無言で。
別にこの位普通でしょ?(目玉ぐるぐる)




